宅建試験の法令制限解説:「建築確認」について解説します。法令制限から8問、そのうち建築基準法から2問ほど出題されますが、2問(8肢)のうち1肢は建築確認から出題される可能性が高いと思ってください。時間がなくて高さ規制や建蔽率・容積率などを捨てたとしても、この建築確認は確実に押さえておいてください。以前は丸々1問で出題されていましたが、最近は肢の一つに格下げ気味です。
- 建築確認の宅建解説
違法な建築物が建てられ、それを後から是正させるのは面倒です。建築物が建築基準法に適合しているか事前にチェックするシステム、それが「建築確認」です。
■建築確認を必要とする建築物
建築基準法に適合しているか事前にチェックするといっても限界があります。全ての建築物のチェックをしていたら人も時間も足りません。そこで、建築行為の種類、建築が行われる場所、建築物の種類と規模などから、事前にチェックを受けなければならない建築物が定められています。
まず、「建築」には次の4種類があることを頭に入れておいてください。
・新築 → 新しく建築物を建てること
・増築 → 既に存在する建築物に建て加えること
・改築 → 建築物の全部または一部を建て直すこと(用途等が著しく異ならない)
・移転 → 同一敷地内で建築物を解体せずに別の位置に移すこと
では、建築確認を必要とする建築物を見ていきましょう。
1.用途に供する床面積の合計が200㎡を超える特殊建築物
2.階数3以上or延べ面積500㎡超or高さ13m超or軒の高さ9m超の木造建築物
3.階数2以上or延べ面積200㎡超の木造以外の建築物
この3つは区域を問わず全国で、新築・改築・増築・移転を問わず建築確認が必要となり、また、大規模修繕・模様替えでも建築確認が必要となります。更に、特殊建築物は用途変更でも建築確認が必要となるということも覚えておいてください(ただし、劇場→映画館、ホテル→旅館など、類似の用途変更は含まれない)。特殊建築物とは学校や病院、ホテル、劇場、百貨店、コンビニ、倉庫、自動車車庫などなどをいいますが、「事務所」は特殊建築物ではないという点にも注意してください。
ここの覚え方として昔から様々な語呂合わせが存在しますが、結局は事例をこなして慣れるのが一番かと思います。絶対役立つ法令制限や過去問で練習しておいてください。語呂合わせよりも確実な力が身につくはずです。
これらの3つ以外の建築物については、「都市計画区域」および「準都市計画区域」または「都道府県知事が関係市町村の意見を聴いて指定する区域」内において、新築・増築・改築・移転する場合(=建築の場合のみ)に建築確認が必要となります( ※ )。
※増築・改築・移転に係る部分の床面積10㎡以内なら建築確認不要(特殊建築物と大規模建築物も同様。ただし、防火地域および準防火地域では10㎡以内でも建築確認が必要) ここは少しややこしいのでしっかり整理しておいてください特殊建築物 用途に供する部分の床面積の合計が200㎡超 映画館・劇場・集会場・
病院・ホテル・旅館・共同住宅・
学校・寄宿舎・体育館・
百貨店・コンビニ・バー・
倉庫・自動車修理工場などなど…木造の
大規模建築物階数3以上
延べ面積500㎡超
高さ13m超
軒の高さ9m超左記のいずれかに該当する場合 木造以外(鉄骨造等)の
大規模建築物階数2以上
延べ面積200㎡超左記のいずれかに該当する場合
新築 増改築移転 大規模修繕
大規模模様替え用途変更 特殊建築物 必要 △ 必要 必要 大規模建築物 必要 △ 必要 × 都市計画区域・準都市計画区域内の一般建築物 必要 △ × ×
■建築確認の手続き
建築主は、建築物の建築等をしようとする場合、工事着手前に建築計画が規定に適合するものである旨の建築確認を受け、確認済証の交付を受けなければなりません。流れとしては次のようになります。
1.建築主が建築計画を作成し、建築主事または指定確認検査機関に建築確認の申請をする
↓
2.建築主事または指定確認検査機関による建築確認、確認済証の交付
↓ 建築主事は7日以内(上記1~3の大規模建築物は35日以内)
3.建築主による工事の施工(建築工事届提出後)、特定工程の終了
↓ 4日以内
4.建築主事または指定確認検査機関による中間審査、中間審査合格証の交付
↓ 4日以内
5.建築主による工事完了申請
↓ 4日以内に到達(完了検査申請書)
6.建築主事または指定確認検査機関による完了検査、検査済証の交付
↓ 7日以内
7.建築主による使用、管理
確認内容は建築基準法令に適合しているかどうかだけでなく、都市計画法や宅地造成等規制法など多岐に渡ります。
以下、宅建本試験で出題可能性のあるポイントです。建築主事または指定確認検査機関と打つのは面倒ですので、「建築主事または指定確認検査機関」=「建築主事等」とさせていただきます。
また令和6年法改正により、建築主事を置いた都道府県または市町村は、大規模建築物以外の建築物の確認等の事務をつかさどらせるために建築副主事を置くことができるようになりました。以下、大規模建築物以外の建築物については、建築主事=建築副主事も含まれます。
・建築確認の申請者は建築主で、建築主事、指定確認検査機関のどちらに申請してもよい
・建築確認申請のために、周辺住民等の同意は不要である
・建築主事等は、一般建築物については7日以内、大規模建築物については35日以内に審査をし(指定確認検査機関はこの期間制限なし)、規定に適合することを確認した場合は確認済証を交付しなければならない
・建築主事等が確認をする場合、原則として消防長(消防本部がない市町村は市町村長)または消防署長の同意を得なければならない(同意を得るのは建築主でない点に注意)
・建築主が建築物を建築しようとする場合、建築主事を経由して建築工事届を都道府県知事に提出しなければならない(建築確認が不要な場合でもこの届出は必要)
・指定確認検査機関が確認済証を交付したときは、確認審査報告書を作成し、一定の書類を添えて特定行政庁に提出しなければならない
・建築確認が必要な工事を行う施工者は、工事現場の見やすい場所に、建築主・設計者・工事施工者・工事現場管理者の氏名または名称、建築確認があった旨を表示しなければならない
・建築主は、建築確認を受けて着工した工事が完了した場合、その旨を工事完了の日から原則として4日以内に到達するよう建築主事等に申請して完了検査を受けなければならない
・建築主事等は、完了検査申請書を受理した場合、その日から7日以内に検査をし、建築物およびその敷地が規定に適合しているときは、検査済証を交付しなければならない
・一般建築物は、完了検査申請書を提出すれば使用を開始することができる(使用開始後に検査を受け手直しを命じられることあり)
・大規模建築物は、原則として検査済証の交付を受けた後でなければ使用することができない(例外1:特定行政庁または建築主事が仮使用を承認したとき、 例外2:完了検査申請書が受理された日から7日を経過したとき)
・建築主は、建築確認が得られなかったことに不服がある場合、①建築審査会に審査請求をすることができ、建築審査会の裁決に不服がある場合には、②国土交通大臣に再審査請求をすることができる(裁判所に直接訴えも可)建築物の種類 使用開始できる時期 例外 特殊建築物 検査済証の交付後 仮使用の認定後完了
検査申請から7日経過後大規模建築物 同上 同上 上記以外の建築物 完了検査申請書を提出すればOK 例外なし
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