宅建業務に関する義務・制限 2 重要度 ★★★★☆


では、宅建業者の業務に関する義務や制限について前ページの続きをお話いたします。

今回お話する7つの制限は、以前にお伝えしました「クーリング・オフ」と併せ、
「宅建業者自ら売主となる場合の8つの制限」「自ら売主規制」などと言われています。


文字通りこれら8つの制限は、
宅建業者自身が売主となる場合にのみ適用されます。
そして更に、
買主が宅建業者でない場合にのみ適用されます。

つまり、「売主が宅建業者で買主が宅建業者でない場合」に適用されるというわけです。

これは大前提ですので必ず覚えておいてください。買主が宅建業者である場合はこれら
の規定は適用されませんので引っかけ問題には注意してください。


では、クーリング・オフ以外の残り7つを順番に見て行きます。

簡単な宅建業法の中では少し複雑で手間取るところですので、頑張りましょう!



手付金等の保全措置


「手付金等」とは、
契約締結日以後、当該宅地または建物の引渡し前に支払われる、
代金の全部または一部として授受される金銭および手付金・内金・中間金等をもって
授受される金銭で、代金に充当されるものを言います。

簡単に、引渡し前に支払っておく契約金みたいなものというイメージでよいでしょう。

宅建業者は、
保全措置を講じた後でなければ買主から手付金等を受領してはなりません。
宅建業者が保全措置を講じない場合は、買主は手付金等を支払う必要はありません。


その宅建業者が行う保全措置の方法ですが、次の3パターンがあります。

未完成物件の場合→1.
銀行等による保証 2.保険事業者による保険保証
完成物件の場合→上記1.2に加え、3.
指定保管機関による保管

この3つだけですので、軽く頭に入れておいてください。


また、ここで重要なのは宅建業者の保全措置が不要となるケースです。

下記の2つはすごく重要ですので必ず覚えておいてください。

1.売買物件につき買主に
所有権移転登記がなされたか、買主が所有権の登記をした場合

2.受領しようとする手付金等の額が、
  未完成物件の場合→
代金額の5%以下であり、かつ1,000万円以下である場合
  完成物件の場合→
代金額の10%以下であり、かつ1,000万円以下である場合



手付額の制限

手付といえば「
解約手付」をイメージしてください。

解約手付とは民法でも学習しましたが、契約に際して買主がある程度のお金を払い、買主
はそれを放棄し、売主はその倍額を返すことにより契約を解除できるという約束ですね。

民法では解約手付の額について制限がありません。

しかし買主保護の見地から、宅建業法では以下の制限があります。
次の文章は短いですがとても重要です。


まず、宅建業者は
代金の10分の2を超える額の手付を受領することができません。
10分の2を超える部分については
無効です。

買主に不利な特約も無効です。

また、保全措置ともしっかり区別しておいてください。宅建業者が2割までしか受領できないのは
手付金についてだけで、中間金や内金についてはいくら受領しても構いません



瑕疵担保特約の制限

まず民法における瑕疵担保責任の原則として、売買の目的物に「隠れたる瑕疵」があった
場合、
売主は落ち度がなくても責任を負う(無過失責任)としています。そして善意無過失
の買主は、損害賠償請求や(目的不達成の場合は)契約解除ができるわけです。
なお、売主への責任追及期間は、
買主が瑕疵を知ったときから1年以内とされています。

宅建業法では、この民法の規定を最低基準としています

つまり、この民法の規定よりも買主に有利な特約は自由で、買主に不利な特約は無効と
なります。買主が瑕疵の存在を知ったときときから3年とする特約は有効ですが、半年
とする特約は無効というわけです。

しかし1つ例外といいますか、覚えておいてほしいことがあります。

「瑕疵担保責任の期間を、
引渡しから2年とする」

この特約は有効となります。

買主がいつ瑕疵に気付くかは分かりません。知ったときから1年よりは長い気もしますし、
もしかしたら2年後に気付くかもしれません。しかし「引渡しから2年」は有効なんですね。
なぜか「契約締結から2年」などは無効です。これは覚えておいてください。



自己所有に属しない物件の契約締結の制限

まず、自己所有に属しないとは、1.
他人物 2.未完成物件 を意味します。

宅建業者は、自ら売主として自己所有に属しない物件の売買契約を締結してはなりません。
これに違反すると監督処分として
業務停止処分が待っています(罰則はありません)。

しかしそれぞれに1つずつ例外があります。
この例外を覚えておいてください。

他人物の場合→
将来、宅建業者のものになることが確実な場合
未完成物件の場合→
手付金等の保全措置を講じた場合

宅建業者のものになることが確実な場合とは、宅建業者が物件を取得する契約(
予約
を締結した場合などです。また未完成物件の場合、そもそも保全措置が不要となるケー
スでは、保全措置を講じることなく契約を締結することができます。



損害賠償額の予定等の制限

ここからの以下3つはあまり重要ではありません。
重要事項だけを箇条書きにしておきますので頭の片隅に入れておいてください。

宅建業者自ら売主となる売買契約において債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害
賠償額の予定または違約金を定める場合、その額は
合算して代金額の10分の2
超えてはなりません(10分の2を超える部分は
無効)。



割賦販売契約解除等の制限

割賦販売とは、宅建業者への支払いを引渡後1年以上の期間に2回以上に分割して支払う
ことを定めた売買契約を言います。

宅建業者自ら売主となる割賦販売契約において割賦金の支払いがない場合、宅建業者は、
30日以上の期間を定めて書面により支払いを催告し、この期間内に支払いがないときで
なければ、契約の解除や残りの割賦金を請求することができません。



所有権留保等の禁止

所有権留保とは、買主が代金の一定額以上を支払わないうちは、売主が所有権を買主に
移転させない制約を言います。宅建業法では、この所有権留保による売買契約を禁止し、
売主は引渡しまでに登記の移転等をしなければならないとしています。

しかし例外が1つあります(本当はまだありますがこれだけでいいでしょう)。

「宅建業者が受領した額が
代金額の10分の3以下である場合」

この場合は宅建業者があまりにかわいそうなので引き渡しの必要はありません。

また、宅建業者は代金額の10分の3を超える支払いを受け、物件の引渡しも終了した場合、
担保目的で当該宅地建物を譲り受けてはなりません。これは少し重要です。




[ 平成9年 問39 ]
 宅地建物取引業者Aは、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建築工事完了前の分譲住宅の売買契約(代金5,000万円、手付金 200万円、中間金200万円)を締結した。この場合に、宅地建物取引業法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

1.Aは、手付金を受け取る時点では、宅地建物取引業法第41条に規定する手付金等の保全措置(以下この問において「保全措置」という。)を講じる必要はない。

2.売買契約で手付金が解約手付であることを定めておかなかった場合でも、Aが契約の履行に着手していなければ、Bは、手付を放棄して契約の解除をすることができる。

3.売買契約で「手付放棄による契約の解除は、契約締結後30日以内に限る」旨の特約をしていた場合でも、契約締結から45日経過後にAが契約の履行に着手していなければ、Bは、手付を放棄して契約の解除をすることができる。

4.契約締結時の2月後で分譲住宅の引渡し及び登記前に、Aが中間金を受け取る場合で、中間金を受け取る時点では当該分譲住宅の建築工事が完了していたとき、Aは、手付金及び中間金について保全措置を講じる必要はない。



1 正
:手付金が200万円(代金額の5%以下で1,000万円以下)なので保全措置不要
2 正:宅建業者自ら売主となる場合、手付=解約手付とされる
3 正:買主に不利な特約は無効となるため解除可
4 誤:手付金と中間金を併せると400万円となり保全措置必要(1は「手付金を受け取る時点」)


[ 平成9年 問41 ]
 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、宅地建物取引業者でないBと建物の売買契約を締結した場合の瑕疵担保責任(以下この問において単に「担保責任」という)に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、建物の引渡しの日は、契約締結の日の1月後とする。

1.「Aが担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から2年間とし、Bは、その期間内に、契約を解除することはできないが、損害賠償を請求することができる」旨の特約は無効である。

2.「建物に隠れた瑕疵があった場合でも、その瑕疵がAの責めに帰すものでないとき、Aは担保責任を負わない」旨の特約は有効である。

3.「Aが担保責任を負う期間は契約締結の日から2年間とし、Bは、その期間内に瑕疵修補請求権も行使できる」旨の特約は有効である。

4.「Aが担保責任を負う期間は建物の引渡しの日から1年間とする」旨の特約は無効であり、Aは、引渡しの日から2年間担保責任を負う。



1 正
:「Bはその期間内に契約を解除することはできない」という部分が民法の規定よりも不利
2 誤:Aに帰責性がないときは責任を負わないというのは民法の規定よりも不利
3 誤:建物引渡しが契約締結1ヶ月後であり、=引渡しから1年11ヶ月の特約とも言える
4 誤:特約が無効となると、民法の規定により買主が瑕疵を知ったときから1年間責任を負う


[ 平成9年 問45 ]
 宅地建物取引業者Aが、自ら売主として、B所有の宅地(造成工事完了後)をCに売却しようとしている。この場合、宅地建物取引業法の規定によれば、次の記述のうち誤っているものはどれか。

1.Cが宅地建物取引業者である場合で、B所有の当該宅地はBがDから売買により取得したものであるが、BがDにまだその売買代金を完済していないとき、Aは、Cと売買契約を締結できる。

2.Cが宅地建物取引業者でない場合で、AがBから当該宅地を取得する契約の予約を締結しているときは、Aが予約完結権を行使するまでの間であっても、Aは、Cと売買契約を締結できる。

3.Cが宅地建物取引業者である場合で、AがBと「代替地の提供があれば、Bは、Aに当該宅地を譲渡する」旨の契約を締結しているとき、Aは、Cと売買契約を締結できる。

4.Cが宅地建物取引業者でない場合で、AがCから受け取る手付金について宅地建物取引業法第41条の2の規定による手付金等の保全措置を講じたときは、AB間の宅地の譲渡に関する契約の有無にかかわらず、Aは、Cと売買契約を締結できる。



1 正
:自ら売主となる制限は、宅建業者間取引には適用されない
2 正:宅建業者が物件を取得することは確実なので契約可
3 正:本来は停止条件付の契約は予約から除外されるが、宅建業者間には適用されず契約可
4 誤:これは未完成物件の場合の例外で、他人物売買の場合は保全措置を講じても契約不可


[ 平成8年 問46 ]
 宅地建物取引業者Aが自ら売主として、宅地建物取引業者でない買主Bと宅地 (価格5,000万円) の売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法及び民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.売買契約の締結に際し、AがBから1,500万円の金銭を手付として受領した場合で、その後、Bが手付を放棄して契約を解除したときには、Aは、受領した金銭を一切返還する必要はない。

2.売買契約が「宅地の引渡しまでに代金の一部として1,000万円支払う」条件の割賦販売であった場合で、Bが1,000万円を支払い、Aが宅地を引き渡すときは、Aは、登記その他引渡し以外の売主の義務も履行しなければならない。

3.「債務不履行による契約解除に伴う損害賠償の予定額を500万円とする」旨の特約をした場合でも、Aの実際に被った損害の額が予定額を超えることを証明できるときは、Aは、1,000万円を限度として、500万円を超える額の損害賠償を請求することができる。

4.「債務不履行による契約解除に伴う損害賠償の予定額と違約金の額をそれぞれ1,000万円とする」旨の特約をした場合でも、損害賠償と違約金を合計した額は、1,000万円となる。



1 誤
:代金額の10分の2を超えている部分の500万円は無効なので返還する
2 誤:宅建業者が受け取った額は10分の3に満たないので、所有権留保が認められる
3 誤:特約は10分の2を超えていないため有効だが、予定額を超える損害賠償請求は不可
4 正:損害賠償額の予定や違約金の定めは、合算して代金額の10分の2以下とする



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