宅建業法で定める報酬計算

宅建業法解説:宅建業者が受け取ることができる「報酬額」の計算方法について解説していきます。令和元年10月の消費税の増税に伴って、税率だけでなく計算式自体に大きな変更があります。より詳しい解説はこちら:報酬限度額の完全解説

報酬計算の基本の宅建解説

宅建業者は、それぞれが自由に報酬額を定めることはできません。宅建業者が受領できる報酬限度額というものが定められており、宅建業者はその限度額を超えて報酬を受け取ることができないのです。不動産知識の少ない一般消費者がだまされないよう保護するためですね。

また、宅建業者は、報酬とは別に取引に要した経費を依頼者に請求することもできません。報酬の中から必要経費を賄います。しかしここで1つ例外を覚えておいてください。特別な広告費など、依頼者からの依頼があった場合は、その経費は報酬とは別に受領することができます。

では、宅建業者が受け取ることができる報酬額について見ていきましょう。売買・交換の媒介・代理と、貸借の媒介・代理では計算方法が異なります。また、1つの宅建業者しか登場しないパターンと複数の宅建業者が関わる場合にも注意が必要です。

まずは宅建業者が1人しか登場しない基本の形をお話いたしますので、こちらをしっかりとマスターしておいてください。そして次ページで複数業者が関与する場合、および例題を使ってより完璧にマスターしていただきます。


売買交換の媒介代理の報酬額の計算

宅建業者が課税事業者である場合と免税事業者である場合で計算式が異なります。

宅建業者が課税事業者(消費税を納める義務がある事業者)である場合

代金額 200万円以下部分=5.5%
代金額 200万円超400万円以下部分=4.4%
代金額 400万円超部分=3.3%

宅建業者が免税事業者(消費税を納める義務が免除される事業者)である場合

代金額 200万円以下部分=5.2%
代金額 200万円超400万円以下部分=4.16%
代金額 400万円超部分=3.12%

これが基本となります。本試験では「消費税の課税業者である…」「消費税の免税業者である…」と出題されますので、凡ミスに注意してください。部分ごとに報酬が異なり、代金額500万円で課税事業者の場合は200×5.5%+200×4.4%+100×3.3%となります。400万円以下部分は「200×5.5%+200×4.4%」と一定なので、時短計算も可能となりますね。

代金額が200万円以下の場合は代金額の5.5%
200万超~400万であれば、代金額の4.4%+22,000円(免税事業者は4.16%+20,800円)
400万超であれば、代金額の3.3%+66,000円(免税事業者は3.12%+62,400円)

また、後から消費税を加えても同じとなります。
200万超~400万であれば、(代金額の4%+20,000円)×1.1(免税事業者は×1.04)
400万超であれば、(代金額の3%+60,000円)×1.1(免税事業者は×1.04)

計算式はもちろん、ここでは以下の3つも覚えておいてください。

1.買主と売主の双方から売買の媒介依頼を受けた場合、宅建業者が受領できる報酬の額は、それぞれ一方から受領できる報酬額の限度内で、その合計額以内(交換も同じ)
2.交換の媒介では、宅地や建物に価額差がある場合、いずれか高い方を基準とする
3.売買または交換の代理の場合、依頼者から受領できる報酬額は上記計算式の2倍以内

より細かい練習は次回にするといたしまして、軽く練習しておきましょう(課税事業者)。

『 5,000万円の土地の売買を媒介した場合 』

5,000万円×3.3%+66,000円=171万6,000円

買主と売主の双方から依頼を受けていた場合は、それぞれ一方から171万6,000円を超えない範囲で、合計343万2,000円まで報酬を受領できます。

『 3,000万円の土地と2,000万円の土地の交換を媒介した場合 』

価額差がある場合は高い方を基準とするので、3,000万円が基準となります。

3,000万円×3.3%+66,000円=105万6,000円

売買の媒介と同じく当事者双方から交換の依頼を受けた場合は、一方から105万6,000円を超えない範囲内で合計211万2,000円まで報酬を受領できます。

『 5,000万円の土地の売買(交換)を代理した場合 』

(5,000万円×3.3%+66,000円)×2=343万2,000円

基本的に「双方代理」は禁止されています。よって依頼者の一方から通常の倍額の報酬を受領することができます。しかし本人の同意があれば双方代理も許されます。その場合は双方から報酬を受領できますが、合計額が一方からのみ依頼を受けた場合の限度額を超えてはなりません。

また、一方からは代理を、他方からは媒介を依頼された場合はどうなるのか?この場合、宅建業者は双方から報酬を受領することになりますが、その合計額は一方のみから代理の依頼を受けた場合の限度額を超えてはなりません。また媒介の依頼をした者からは、媒介の依頼者の一方から受け取ることのできる限度額も超えてはなりません。少し細かい知識ですが、一応頭の片隅に入れておいてください。


貸借の媒介代理の報酬額の計算

・貸借の媒介の依頼者双方から受領できる報酬限度額

課税事業者:合計して借賃の1ヶ月分の1.1倍以内

『賃貸借の媒介を受け、1ヶ月の賃料10万円の賃貸借契約を成立させた場合』⇒一方または双方より、11万円を超えない限りどのような割合で受領してもよい。ちなみに免税事業者の場合は1.04倍以内となります。

ここで注意していただきたいのは、貸借の対象が「居住用建物」である場合です。この場合、依頼者の一方から受領できる報酬額は、依頼者の承諾を得ている場合を除いて借賃の1ヶ月分の半分(=消費税を入れ0.55倍以内)という制限があります。つまり上記の賃貸借が居住用建物だった場合、依頼者の一方から受領できる報酬額は5万5,000円以内で、合計して11万円以内となります(貸主が承諾していれば、貸主88,000円、借主22,000円ということも可能です)。ちなみに免税事業者の場合は0.52倍以内となりますね。

・貸借の代理の依頼者から受領できる報酬限度額

課税事業者:借賃の1ヶ月分の1.1倍以内
免税事業者:借賃の1ヶ月分の1.04倍以内

双方代理の場合でも、双方から受け取る報酬の合計額が借賃の1.1倍(or1.04倍)を超えてはなりません。

・権利金の授受がある場合

居住用建物以外」の貸借で権利金等の授受がある場合、権利金等の額を売買代金とみなして報酬計算をし、その額と1ヶ月分の1.1倍の借賃とを比較して高い方を報酬限度額とすることができます。権利金等とは、権利設定の対価として支払われる金銭で返還されないものをいいます。

『貸主と借主の双方から賃貸借の媒介依頼を受け、1ヶ月の賃料100万円、権利金2,000万円(権利設定の対価で後日返還されないもの)の賃貸借契約を成立させた場合』
⇒ 110万円 or 145万2,000円(※)⇒ 145万2,000円が報酬限度額

(※)居住用建物以外なので権利金の額を売買代金とみなして算定することができ、2,000万円×3.3%+66,000円=72万6,000円。これを依頼者双方から受領でき、合計145万2,000円。

居住用建物以外で権利設定の対価として支払われる後日返還されない権利金等がある場合みなし計算ができる。必ず正確に覚えておきましょう。居住用なのにみなし計算ができるかのような問題、よく読むと後日返還される権利金であったりと、細かいひっかけに注意してください。
  貸借の媒介 貸借の代理
居住用建物 原則:0.5ヶ月分ずつ
例外:依頼者の承諾あるときは合わせて1ヶ月分
合わせて1ヶ月分
居住用建物以外 原則:合わせて1ヶ月分
例外:権利金の額を売買代金とみなして計算可
原則:合わせて1ヶ月分
例外:権利金の額を売買代金とみなして計算可


では、次ページでより細かい報酬計算と練習問題をお送りいたします。まずはこの基本を確実にマスターしておいてください!


かんたん宅建業法一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< >>> 次のページ >>>
自ら売主制限 報酬計算の応用

【宅建試験問題 昭和55年ー問38】宅建業者が受け取ることができる報酬に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.代理や媒介の報酬の額に関する規定は、宅建業者間の取引には適用されない。
2.宅地の使用貸借の媒介には、報酬の額に関する規定は適用されない。
3.不当に高額の報酬を受領することは禁止されているが、要求するだけでは宅建業法違反にはならない。
4.宅建業者は、その事務所ごとに、公衆の見やすい場所に、国土交通大臣が定めた報酬の額を掲示しなければならない。
1 誤:宅建業者間であっても、国土交通大臣によって定められた報酬額を超えて受け取ることはできない
2 誤:宅地建物の賃貸借だけでなく、使用貸借も報酬制限が適用される
3 誤:不当に高額な報酬を「要求」すること自体が宅建業法に違反する
4 正:宅建業者は、事務所ごとの公衆の見やすい場所に報酬額を掲示しなければならない(注:案内所には不要)