宅建業法解説:「クーリング・オフ」とは、買主に与えられた「契約を解除する」権利です。クーリング・オフができるケースや方法、その効果などの出題ポイントを順番に解説していきます。より詳しい解説はこちら:クーリング・オフの完全解説
- クーリング・オフの宅建解説
民法の原則として、一度締結された契約を一方的に解除することはできません。しかしこの原則を貫くと、買主にとって非常に酷な場面が発生することがあります。例えば、非常に口の達者な営業マンに早口でまくしたてられ、気づいたら契約していた、など、業者と消費者の間には知識等に格差があり、平等の条件で納得して契約していないケースが多々あります。
そこでその解決策として、消費者を守るために民法よりも優先する特別法でクーリング・オフという権利を定めました。クーリング・オフ( Cooling-off )=頭を冷やして考えなおす、という意味です。
しかし、全ての契約がクーリング・オフできるわけではありません。まず、宅建業者自らが売主となって、宅建業者ではない者に宅地や建物を販売する場合に限られる、という大前提はしっかり頭の中に入れておいてください。
■クーリング・オフができる場所
宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、事務所等以外の場所で買受けの申込みをした者は、契約の解除を行うことができます。つまりここでは、「事務所等」とはどのような場所なのかを覚えておいてください。以下、クーリング・オフができなくなる事務所等の場所です。
1.事務所
2.専任の宅建士の設置義務がある(実際にいたかどうかは関係ない)、
→継続的に業務を行うことができる事務所以外の施設
→土地に定着した一団の宅地建物の分譲を行う際の案内所(モデルルーム等)
→土地に定着した宅地建物の売買契約に関する説明をした後、展示会その他これに類する催しを実施する場所
3.他の宅建業者に媒介や代理を依頼した場合、その宅建業者の上記1または2の場所
4.買主から申し出た場合の、買主の自宅や勤務先
買主自らが事務所に出向いたり、自宅に呼んで契約の申込みをしたのなら、購入の意思が安定しているということですね。ちなみに契約の申込みを事務所で行い、事務所等以外で契約締結した買主も、クーリング・オフの適用要件から外れてしまいます。
逆に、事務所等以外で買受けの申込みを行い、事務所で契約締結をした買主は、クーリング・オフが可能となります。最初の申込みをどこで行ったかで判断するわけです。尚、宅建業者は、契約申込みを行わない案内所など事務所等以外の場所に掲げる標識には、クーリング・オフができる旨を記載する必要があります。
■クーリング・オフができる時期
買主が宅建業者より「クーリング・オフができる旨およびその方法」を書面で告げられた日から8日以内。
8日間を経過したときは、買主の購入意思が固まったと考え、クーリング・オフはできなくなります。宅建業者が告知をしてこない場合、いつまでもクーリング・オフが可能となります(下記の引渡し+代金全額の支払いによりクーリング・オフはできなくなります)。
■クーリング・オフの履行
宅地建物の引渡しを受け、かつ、代金の全額を支払った場合、クーリング・オフはできなくなります。「かつ」ですので、引渡しを受けただけではまだクーリング・オフは可能です。
また「引渡し」ですので、移転登記を受けただけではまだクーリング・オフは可能です。更に「代金全額」ですので、代金の一部を支払ったに過ぎない場合はまだクーリング・オフは可能です。ここはひっかけ問題の宝庫ですね。
■クーリング・オフの方法
クーリング・オフは、必ず書面によって行います。そしてその効力は書面を発したときに生じます。
相手方に届くまでもなく、ポストに入れてしまえば申込みの撤回や契約解除の効果が発生します。意思表示の効力は相手方に到達したときに発生するという到達主義に対する例外ですので、これは必ず覚えておいてください。
■クーリング・オフの効果
クーリング・オフがなされた場合、宅建業者は、受け取っていた手付金その他の金銭をすみやかに買主に返還しなければなりません。また、撤回や解除に伴う損害賠償や違約金の支払いを請求することもできません。
最後に一つ、これも覚えておいてください。宅建業者は、買主のクーリング・オフの権利を奪うことはできず、クーリング・オフの規定に反する買主に不利な特約は無効となります(事務所以外の場所で契約をしても解除不可、など)。逆に、クーリング・オフができる期間を書面で告げられてから10日とするなど、買主に有利な特約は有効となります。クーリング・オフとは、あくまでも買主のために与えられた特別な権利ということです。
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