供託所の説明やインスペクション制度

宅建業法解説:供託所等に関する説明守秘義務インスペクション制度など、宅建業者の業務に関する義務や禁止事項、制限についてお話いたします。2ページに渡って重要事項を一気に見ていきます。覚えることは多いですが、とても簡単ですので確実にマスターしておいてください。より詳しい解説はこちら:業務上の規制の完全解説

業務に関する義務と制限の宅建解説

業務処理の原則

宅建業者は、取引関係者に対して信義を旨とし(約束を守り)、誠実にその業務を行わなければなりません(=信義誠実の原則


供託所等に関する説明

宅建業者が契約の相手方に対して説明する事項として、以前にお伝えした重要事項の説明の他に「供託所等に関する説明」があります。

しかし、重要事項の説明は宅建士が行うのに対し、供託所等に関する説明は宅建士が行う必要はなく、宅建業者自ら(=従業者)で構いません。ここは要チェックです。

説明時期:契約が成立するまで
説明場所:制限なし
説明の相手方:契約の両当事者(売主・買主・貸主・借主・交換の両当事者)
説明方法:口頭でもよい

説明の相手方と説明方法が35条と異なりますので区別しておいてください。尚、35条と同じく、相手方が宅建業者の場合は説明は不要となります。供託所等に関する説明の内容は以下の通りです。

・宅建業者が保証協会に加入していない場合
→ 営業保証金の供託所とその所在地

・宅建業者が保証協会に加入している場合
→ 社員である旨、 保証協会の名称・住所・事務所の所在地、弁済業務保証金の供託所とその所在地(+保証協会が弁済業務を開始していない場合は営業保証金の供託所とその所在地)


守秘義務

宅建業者やその従業者は、正当な理由なく、業務上知りえた秘密を他に漏らしてはなりません。「正当な理由なく」ですので、本人の承諾がある場合や裁判所の証人となった場合など、それなりの理由があれば秘密を漏らすことも可能です。「いかなる理由があっても漏らしてはならない」と出題されたら誤りですので注意してください。また、宅建業者が宅建業をやめた後、従業者が退職した後も秘密を漏らしてはなりません


業務上の禁止事項

以下の6つ(特に1~4)は重要ですので、必ず覚えておいてください。

1.宅建業者は、その業務に関してなすべき宅地・建物の登記や引渡し、取引にかかる対価の支払いを不当に遅延する行為をしてはならない。

2.宅建業者は、取引関係者に大きな不利益をもたらす恐れのある重要な事項について、故意に事実を告げず、または不実のことを告げてはならない

3.宅建業者は、不当に高額の報酬を要求してはならない(実際に受け取ったかどうかは関係ない)。

4.宅建業者は、手付について信用の供与をすることにより、契約の締結を誘引してはならない(手付金を分割払いにする、立て替える、支払い期日を延期するなど)。単なる減額は信用の供与ではないので注意。

宅建合格!手付金の信用供与
5.宅建業者は、契約の締結の誘引をするに際し、利益が生じることが確実であると誤解させる「断定的判断」を提供してはならない。

6.宅建業者は、契約の締結の誘引をするに際し、「威迫行為」をしてはならない。


既存住宅の建物状況調査(インスペクション制度)

平成30年度法改正により、既存(中古)住宅について、インスペクション制度が導入されました。インスペクションとは、住宅診断のことです。中古住宅が対象となり、店舗、工場、商業ビルなどは含まれません。

調査対象となるのは、「建物の構造耐力上主要な部分」と「雨水の侵入を防止する部分」の2つです。調査実施者は、「既存住宅状況調査技術者」となります。宅建業者が実施すると出題されたら誤りですので注意してください。尚、既存住宅状況調査技術者とは、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士をいいます。

35条書面、37条書面、媒介契約書面への記載に関する注意点は、それぞれの該当ページに記載してあります(下の過去問もご参照ください)。


では次ページで残り半分、手付金等の制限についてより詳しくお話していきます!まずは当ページの制限を確実に覚えておいてください。


かんたん宅建業法一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< >>> 次のページ >>>
クーリング・オフ 自ら売主制限
【宅建試験問題 昭和59年ー問50】宅建業法に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.宅建業者の使用人その他の従業者は、正当な理由がある場合でなければ、宅建業の業務を補助したことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
2.宅建業者は、その業務に関し知り得た重要な事項について、故意に不実のことを告げてはならないが、その事実を告げないことは差し支えない。
3.宅建業者は、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密であっても、場合によっては、取引の関係者に対してその事実を告げなければならないことがある。
4.宅建業者は、宅建業を営まなくなった後であっても、その業務上取り扱ったことについて知り得た秘密を他に漏らしてはならない。
1 正:宅建業者の使用人その他の従業者にも守秘義務は適用される(宅建業に従事しなくなった後も同様)
2 誤:事実とは違う不実のことを告げるだけでなく、故意に告知しないことも宅建業法違反となる
3 正:裁判での証言や取引相手の利害に係ることなど、正当理由があれば秘密を漏らすことも可能
4 正:宅建業を営まなくなった後も守秘義務は適用される
【宅建試験問題 平成11年ー問42】宅建業者Aが,宅地の所有者Bの依頼を受けてBC間の宅地の売買の媒介を行おうとし,又は行った場合に関する次の記述のうち,宅建業法第47条(業務に関する禁止事項)の規定に違反しないものはどれか。

1.宅建業者Aは,Bとの媒介契約の締結に当たり不当に高額の報酬を要求したが,BC間の売買契約が成立した後に実際にAがBから受領した報酬額は,国土交通大臣が定めた報酬額の限度内であった。
2.宅建業者Aは,Cに対し手付を貸し付けるという条件で,BC間の売買契約の締結を誘引したが,Cは,その契約の締結に応じなかった。
3.宅建業者Aは,当該宅地に対抗力のある借地権を有する第三者が存在することを知っていたが,当該借地権は登記されていなかったので,Cに対して告げることなく,BC間の売買契約を締結させた。
4.宅建業者Aは,B及びCに対し,手付金について当初Bが提示した金額より減額するという条件でBC間の売買契約の締結を誘引し,その契約を締結させた。
1 違反する:要求をするだけで宅建業法違反となり、実際にいくら受け取ったかは関係ない
2 違反する:手付について信用の供与をすることにより契約を誘引するだけで宅建業法違反
3 違反する:対抗力のある借地権を有する第三者がいることは「重要な事項」にあたる
4 違反しない:手付金額を減額することは信用の供与にあたらない
【宅建試験問題 平成30年ー問27】宅建業者Aは、Bが所有し、居住している甲住宅の売却の媒介を、また、宅建業者Cは、Dから既存住宅の購入の媒介を依頼され、それぞれ媒介契約を締結した。その後、B及びDは、それぞれA及びCの媒介により、甲住宅の売買契約(以下この問において「本件契約」という。)を締結した。この場合における次の記述のうち、宅建業法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、この問において「建物状況調査」とは、宅建業法第34条の2第1項第4号に規定する調査をいうものとする。

1.宅建業者Aは、甲住宅の売却の依頼を受けた媒介業者として、本件契約が成立するまでの間に、Dに対し、建物状況調査を実施する者のあっせんの有無について確認しなければならない。
2.宅建業者A及び宅建業者Cは、本件契約が成立するまでの間に、Dに対し、甲住宅について、設計図書、点検記録その他の建物の建築及び維持保全の状況に関する書類で国土交通省令で定めるものの保存の状況及びそれぞれの書類に記載されている内容について説明しなければならない。
3.宅建業者CがDとの間で媒介契約を締結する2年前に、甲住宅は既に建物状況調査を受けていた。この場合において、宅建業者A及びCは、本件契約が成立するまでの間に、Dに対し、建物状況調査を実施している旨及びその結果の概要について説明しなければならない。
4.宅建業者A及び宅建業者Cは、Dが宅建業者である場合であっても、宅建業法第37条に基づき交付すべき書面において、甲住宅の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項があるときにその記載を省略することはできない。
1 誤:宅建業者Aは売主Bから、宅建業者Cは買主Dから、それぞれ媒介依頼を受けているため、それぞれ媒介契約書を作成し、媒介契約締結後に遅滞なく交付する
2 誤:保存状況を説明すればよく、書類の記載内容まで説明する必要はない
3 誤:重要事項説明が必要な建物状況調査は、実施後1年以内のものに限られる
4 正:37条書面記載事項には「建物の構造耐力上主要な部分等の状況について当事者の双方が確認した事項」が含まれ、相手方が宅建業者であっても記載の省略不可