【8種規制】保全措置や手付解除

宅建業法の完全解説:宅建業者が自ら売主となる際の「8種規制」と呼ばれる保全措置や手付解除などについて解説します。

8種規制の完全解説

宅建業者間では適用されない8種規制」についての完全解説をお送りします。宅建業者が売主となり、宅建業者以外が買主となる場合に適用される制限です。

売主も買主も宅建業者である場合、単なる媒介で売主が宅建業者でない場合は適用されませんので、単純なひっかけ問題にご注意ください。

とても重要で毎年出題される「クーリング・オフ」も8種規制の1つですが、既にお伝え済みですので、出題されたりされなかったりの残り7つについてまとめて見ていきます!(と言いますか、この中のどれかまたは複合問題で丸々1問以上の出題があると思ってください)


手付金等の保全措置

「手付金等」とは、契約締結日以後、当該宅地または建物の引渡し前に支払われる、代金の全部または一部として授受される金銭および手付金・内金・中間金等をもって授受される金銭で、代金に充当されるものを言います。代金に充当される手付金=手付金に充当される申込証拠金等も手付金に含まれます。

宅建業者は、保全措置を講じた後でなければ買主から手付金等を受領してはなりません。宅建業者が保全措置を講じない場合は、買主は手付金等を支払う必要はありません。その宅建業者が行う保全措置の方法ですが、次の3パターンがあります。

未完成物件の場合 → 1.銀行等による保証 2.保険事業者による保険保証
完成物件の場合 → 上記1.2に加え、3.指定保管機関による保管

保証契約は引渡しまでの期間を担保する必要があり、保証契約による保全措置を講じた場合、宅建業者は連帯保証書を買主に交付しなければなりません。知人による連帯保証などは保全措置とはなりませんので注意。指定保管期間による保管が完成物件にのみ適用されるということは、そこそこ出題されます。

また、宅建業者の保全措置が不要となるケースも頻出事項です。2つ目の数字はすごく重要ですので必ず覚えておいてください。「以下」なので、5%、10%、1,000万円ちょうどは保全措置が不要となります。

1.売買物件につき買主に所有権移転登記がなされたか、買主が所有権の登記をした場合

2.受領しようとする手付金等の額が、
未完成物件の場合 → 代金額の5%以下であり、かつ1,000万円以下である場合
完成物件の場合 → 代金額の10%以下であり、かつ1,000万円以下である場合

手付金+中間金等を受領する場合に、手付金の受領時に5%や10%以下であっても、中間金受領時に5%や10%を超えていれば、中間金と手付金を合わせて保全措置を行う必要があります。もちろん、中間金の受領が引渡し前でも移転登記後であれば保全措置は不要です。

また、建物の場合は本体価額ではなく税込価格を基準とし、手付金の額が本体価額(税抜価格)の5%や10%を超えていても、売買代金(税込価格)の5%や10%以下で1,000万円以下であれば、保全措置は不要となります(完成住宅で本体価額1,000万円→税込価格1,080万円なので、108万円以下の手付金を受領するには保全措置不要)。


手付額の制限

手付といえば「解約手付」をイメージしてください。解約手付とは民法でも学習しましたが、契約に際して買主がある程度のお金を払い、買主はそれを放棄し、売主はその倍額を返すことにより契約を解除できるという約束ですね。手付解除は「相手方が履行に着手するまで」可能ですが、宅建業者による手付金の保全措置は履行の着手に含まれないという点には注意しておいてください(=宅建業法上の当然の義務)。

民法では解約手付の額について制限がありませんが、買主保護の見地から、宅建業法では以下の制限があります。次の文章は短いですがとても重要です。

宅建業者は代金額の10分の2を超える額の手付を受領することができない

2割ちょうどまでは受領でき、2割を超える部分について無効となります。契約自体が無効というひっかけ問題に注意してください。宅建業者が2割までしか受領できないのは手付金についてだけで、中間金や内金についてはいくら受領しても構いません。また、買主に不利な特約は無効となります。「売主から解除するには手付金の3倍を償還する」など、買主に有利な特約は有効となりますので注意。

上記保全措置との複合問題が少しややこしく、例えば代金額4,000万円の完成物件で手付金1,000万円を受領することは、1,000万円以下ですが代金額の10%を超えていますので、保全措置を講ずれば受領することができる…と思いきや、代金額の2割(800万円)を超えていますので、そもそも保全措置以前に受領することができない問題となります。

1,000万円以下でも10%を超えていたら保全措置必要10%以下でも1,000万円を超えていたら保全措置必要となりますが、代金額の2割を超えていたらそもそも受領できない更によく見たら所有権移転登記が済んでいた(=保全措置不要)など、ここはややこしいので、混乱しないよう冷静に対処してください。


瑕疵担保特約の制限  改正民法により大きく変わります

まず民法における瑕疵担保責任の原則として、売買の目的物に「隠れたる瑕疵」があった場合、売主は落ち度がなくても責任を負う(無過失責任)としています。そして善意無過失の買主は、損害賠償請求や(目的不達成の場合は)契約解除ができ、売主への責任追及期間は、買主が瑕疵を知ったときから1年以内とされています。

宅建業法では、この民法の規定を最低基準としています。つまり、この民法の規定よりも買主に有利な特約は自由ですが、買主に不利な特約は無効となります。買主が瑕疵の存在を知ったときときから3年とする特約は有効ですが、半年とする特約は無効というわけです。

しかし1つ例外があり、「瑕疵担保責任の期間を、引渡しから2年とする」この特約は有効となります。買主がいつ瑕疵に気付くかは分かりません。知ったときから1年よりは長い気もしますし、もしかしたら2年後に気付くかもしれません。しかし「引渡しから2年」は有効となります。「契約締結から2年」などは無効です。頻出事項なので、これは確実に覚えておいてください。

宅建業者間であれば、「瑕疵担保責任は一切負わない」とする特約も有効です。


自己所有に属しない物件の契約締結の制限(他人物売買)

まず、自己所有に属しないとは、1.他人物 2.未完成物件 を意味します。宅建業者は、自ら売主として自己所有に属しない物件の売買契約を締結してはなりません。これに違反すると監督処分として業務停止処分が待っています(罰則はありません)。しかしそれぞれに1つずつ例外があります。この例外を覚えておいてください。

他人物の場合 → 契約や法令により、将来、宅建業者のものになることが確実な場合
未完成物件の場合 → 手付金等の保全措置を講じた場合

宅建業者のものになることが確実な場合とは、宅建業者が物件を取得する契約を締結した場合などです。契約さえしていれば、物件の引渡しまで済ませる必要はありません。契約には予約も含まれ、予約さえしていれば予約完結権が行使されている必要はありません。停止条件付の売買契約は対象外なので注意(もちろん条件が成就すれば売買可能)。

また未完成物件の場合、そもそも保全措置が不要となるケースでは、保全措置を講じることなく契約を締結することができます。

宅建業者間であれば、売買契約や予約契約なしで他人物売買も有効です。


損害賠償額の予定等の制限

ここからの3つは少し重要度が下がります。

宅建業者自ら売主となる売買契約において債務不履行を理由とする契約解除に伴う損害賠償額の予定または違約金を定める場合、その額は合算して代金額の10分の2を超えてはなりません10分の2を超える部分は無効)。

損害賠償額の予定を定めていた場合、実際の損害額が予定額より少ないとしても、予定額で精算されます。実際の損害額が予定額より多かったとしても、超過部分を請求することはできません。

宅建業者間であれば、3割でも8割でも請求することができます。また、損害賠償額の予定を定めていなければ、買主が宅建業者でなくても、2割を超えて損害分の全額について請求することができますので注意してください。


割賦販売契約解除等の制限

割賦販売とは、宅建業者への支払いを引渡後1年以上の期間に2回以上に分割して支払うことを定めた売買契約を言います。下の所有権留保の説明と被りますが、宅建業者は、自ら売主として宅建業者でない者と割賦販売の契約を締結した場合、代金額の10分の3を超える金銭を受領するまでに、登記その他売主の義務を履行しなければなりません(=10分の3に達するまでは、登記その他売主の義務を履行する必要がない)。

宅建業者自ら売主となる割賦販売契約において割賦金の支払いがない場合、宅建業者は、30日以上の期間を定めて書面により支払いを催告し、この期間内に支払いがないときでなければ、契約の解除や残りの割賦金を請求することができません。


所有権留保等の禁止

所有権留保とは、買主が代金の一定額以上を支払わないうちは、売主が所有権を買主に移転させない制約を言います。宅建業法では、この所有権留保による売買契約を禁止し、売主は引渡しまでに登記の移転等をしなければならないとしています。

しかし例外が1つあります(本当はまだありますがこれだけでいいでしょう)。「宅建業者が受領した額が代金額の10分の3以下である場合」は、宅建業者があまりに可哀想なので引き渡しをする必要がありません。また、宅建業者は代金額の10分の3を超える支払いを受け、物件の引渡しも終了した場合、担保目的で当該宅地建物を譲り受けることができなくなります


最新の宅建本試験問題(言い回しなど、出題傾向をチェックしておきましょう)

・Aは、Bとの間で、Aが所有する建物を代金2,000万円で売却する売買契約(以下「本件契約」という)を締結した。この場合における次の記述のうち、宅地建物取引業法の規定に違反しないものはどれか(2018-29

1.A及びBがともに宅建業者である場合において、当事者の債務の不履行を理由とする契約の解除があったときの損害賠償の額を600万円とする特約を定めた。
2.Aは宅建業者であるが、Bは宅建業者ではない場合において、Aは、本件契約の締結に際して、500万円の手付を受領した。
3.Aは宅建業者であるが、Bは宅建業者ではない場合において、本件契約の目的物である建物の瑕疵を担保すべき責任に関し、契約の解除又は損害賠償の請求は目的物の引渡しの日から1年以内にしなければならないものとする旨の特約を定めた。

1番は宅建業者間取引なので、その時点で宅建業法違反ではないと分かり、売買代金の2割を超える損害賠償額の予定も可能となります。2番と3番は宅建業者が売主で宅建業以外が買主なので、売買代金の2割を超える手付金を受領することはできず、買主に不利となる瑕疵担保責任の特約は認められません。簡単ですね!


・宅建業者である売主は、宅建業者ではない買主との間で、戸建住宅の売買契約(所有権の登記は当該住宅の引渡し時に行うものとする)を締結した。この場合における宅建業法第41条又は第41条の2の規定に基づく手付金等の保全措置(以下この問において「保全措置」という)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか(2018-38

1.当該住宅が建築工事の完了後で、売買代金が3,000万円であった場合、売主である宅建業者は、買主から手付金200万円を受領した後、当該住宅を引き渡す前に中間金300万円を受領するためには、手付金200万円と合わせて保全措置を講じた後でなければ、その中間金を受領することができない。
2.当該住宅が建築工事の完了前で、売買代金が2,500万円であった場合、売主である宅建業者は、当該住宅を引き渡す前に買主から保全措置を講じないで手付金150万円を受領することができる。
3.当該住宅が建築工事の完了前で、売主である宅建業者が買主から保全措置が必要となる額の手付金を受領する場合、事前に国土交通大臣が指定する指定保管機関と手付金等寄託契約を締結し、かつ、当該契約を証する書面を買主に交付した後でなければ、買主からその手付金を受領することができない。
4.当該住宅が建築工事の完了前で、売主である宅建業者が買主から保全措置が必要となる額の手付金等を受領する場合において、銀行との間で締結する保証委託契約に基づく保証契約は、建築工事の完了までの間を保証期間とするものでなければならない。

1:3,000万×10%=300万円以下の手付金なら保全措置は不要です。よって、手付金200万円を受領時には保全措置は不要で、中間金300万円を受領する前に、合計した「500万円」について保全措置が必要となります。
2:2,500万×5%=125万円以下の手付金なら保全措置は不要です。本肢は150万円を受領しようとしているので、保全措置が必要となります。
3:指定保管機関による保管を保全措置として利用できるのは、完成物件に限られます
4:保証契約は、引渡しまでの期間を担保するものでなければなりません。


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