2023年(令和5年)の宅建改正情報

令和5年の宅建士法改正情報

令和5年(2023年)の宅建試験で出題される最新の法改正情報をお送りします。

★は重要度で、最高で★5つです。


権利関係の法改正

1.共有

・別段の合意がある場合を除き、他の共有者に対し、自己の持分を超える使用の対価を償還する義務を負うとする使用対価の償還義務、善良な管理者の注意をもって共有物の使用をしなければならないとする善管注意義務がそれぞれ条文化されました。判例の条文化ですが、条文化されたことで出題可能性が上がったと言えます。(★★★

・管理行為は持分価格の過半数で決しますが、「共有物を使用する共有者があるときも、同様とする」という条文が加えられました。共有物を使用中の共有者がいても、持分の価格の過半数によって利用方法を変更することができるということですね。ただし利用方法の変更により共有物を使用する共有者に特別の影響を及ぼすべきときは、その共有者の承諾を得る必要があります。(★★★

・変更行為は共有者全員の同意により行われますが、形状または効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)は、共有者の持分の価格に従い、その過半数で決することができるとされました。(★★★★

・共有者は第三者を管理者と定めることができ、管理者の選任は管理行為に含まれ、管理者は管理行為(軽微変更を含む)をすることができる管理者が共有物に変更を加えることは、共有者全員の同意が必要となります。(★★★★

・共有物分割請求がなされた場合、裁判所は、1次的に、共有物の現物を分割する方法現物分割)、または共有者に債務を負担させて他の共有者の持分の全部または一部を取得させる方法(賠償分割)によって分割を命じ、2次的に、現物分割または賠償分割をすることができないとき、または分割によってその価格を著しく減少させるおそれがあるときは競売を命じる(競売分割)と条文化されました。(★★)


2.相隣関係

・土地所有者は、境界またはその付近において障壁や建物を築造修繕するため必要な範囲内で隣地の使用を請求することができるとされていましたが、「1境界またはその付近における障壁や建物その他の工作物の築造、収去または修繕、2境界標の調査または境界に関する測量、3越境した枝の切取りのため必要な範囲内で、隣地を使用することができる」とされました。(★★)

請求ではなく、あらかじめ目的・日時・場所・方法を隣地所有者及び隣地使用者に通知することで使用することができます。あらかじめ通知することが困難な場合、使用を開始した後に遅滞なく通知すれば足ります。尚、隣人の承諾がなければ住家に立ち入ることができない点は従前から変わっていません。

・隣地の竹木の枝が境界線を越えてきたときは、隣人にその枝を切除するよう請求することができますが、この原則に加えて、1竹木所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木所有者が相当の期間内に切除しないとき、2竹木所有者を知ることができず、またはその所在を知ることができないとき、3急迫の事情があるときは自ら切除することができるようになりました。尚、隣地の竹木の根が境界線を越えてきたときは、自ら切除できる点は従前から変わっていません。(★★)

・土地所有者は、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用しなければ電気、ガス、水道水の供給その他これらに類する継続的給付を受けることができないときは、継続的給付を受けるため必要な範囲内で、他の土地に設備を設置し、または他人が所有する設備を使用することができます。(★★★

新設規定ですね。とりあえず上記の条文通りに近い出題可能性が高いと思いますが、もう少し深追いするならば、1設備の設置または使用の場所及び方法は損害が最も少ないものを選ぶ、2あらかじめの通知が必要、3損害が生じたら償金を支払う、4利益を受ける割合に応じて、その設置、改築、修繕、維持に要する費用を負担する・・この辺まで押さえておけばバッチリでしょう。


3.不動産管理制度★★★★新設

旧法下での財産管理制度から、土地建物の管理にピンポイントで特化した「所有者不明土地(建物)管理制度」「管理不全土地(建物)管理制度」という2つの制度が新設されました。宅建試験でビシバシ出題されそうな熱い新設規定です。

分かりやすい民法解説内で専用の新ページを作成しましたので、そちらをご参照ください。
→ 不動産管理制度


4.借地借家法★★★★★

書面で行う必要があった一般定期借地契約、取壊し予定の建物の賃貸借契約、定期建物賃貸借契約について、電磁的記録による交付が可能となりました。

元々公正証書が必要だった事業用定期借地契約は従来通り公正証書が必要となりますので注意してください。

また定期建物賃貸借契約を行う上で事前に交付する説明書面も、相手方(建物賃借人)の承諾を得れば電子交付が可能となります。

この3つの文章はどれも超重要です。
面倒な借地借家法で、今年は美味しくこの3つから1~2肢が出題される可能性が高いです。


5.不動産登記法

・買戻し特約に関する登記について、登記権利者は、契約日から10年を経過したとき単独で当該登記の抹消を申請することができるようになりました(★★)

・遺贈による所有権移転登記は登記権利者及び登記義務者が共同して行うとされていましたが、相続人に対する遺贈に限り、登記権利者の単独申請が可能となりました(★★)


宅建業法の法改正

1.不動産取引の電子化

昨年、一足早く弁済の受取証書や集会議事録で電磁的記録による交付や押印不要といった改正がありましたが、「デジタル社会」の形成を目的としたデジタル改革関連法整備の一環として、宅建業法も正式に改正されました。

宅建業法上必要とされていた以下の押印が不要となりました(★★★★★
重要事項説明書(35条書面)への宅建士の押印
宅地建物の売買・交換・賃貸契約締結後の交付書面(37条書面)への宅建士の押印

以下の書面交付につき、電磁的記録による交付が可能となりました(★★★★★
重要事項説明書(35条書面)
売買・交換・賃貸契約締結時の交付書面(37条書面)
媒介契約締結時の交付書面
レインズ登録時の交付書面

宅建士の記名押印が必要だった35条書面・37条書面に押印が不要となりました(記名は必要)。媒介契約書面は変わらず宅建業者の記名+押印が必要ですので注意してください。35条書面・37条書面・媒介(代理)契約書面・レインズ登録時の交付書面は、交付相手(取引の相手方や依頼者など)の承諾を得て電子交付も可能となっています。

この・6個は、ものすっっごく重要ですね。絶対に確実に覚えておいてください。

重要すぎるので例題を見ておきましょう。

【例題】35条書面及び37条書面には宅地建物取引士が記名をすれば押印は不要であり、当事者の承諾があれば電磁的記録による交付も可能だが、その交付を省略することはできない。

→ 正解は「正しい」ですね。35条書面・37条書面に押印は不要となり、当事者の承諾があれば電子交付も可能ですが、交付を省略することはできません。

【例題】宅建業者Aが、Bの所有する宅地の売却に係る媒介の依頼を受け、Bと一般媒介契約を締結した場合、Aは、遅滞なく宅建業法第34条の2第1項に規定する書面を作成し、宅地建物取引士をして記名押印させ、Bに交付しなければならない。

→ 正解は「誤り」ですね。35条書面と37条書面は押印不要になったけど媒介契約書面は押印必要なまま!騙されないぜ~!正しい肢だぜ~!とはなりません。媒介契約書面への記名押印は宅建業者(従業者)のもので足ります。重要ポイントの他にさり気ないひっかけポイントがある・・宅建試験(特に宅建業法)はこういった問題の連続ですね。

知識としては頭に入っているはずなのに見落としてしまう・・重要知識だけがブツ切りで掲載された市販教材で勉強していると陥りやすいトラップです。

もう一つ今回の法改正に関連したひっかけポイントを紹介しておくと、従来通り「クーリング・オフの通知は書面が必要」という点を押さえておいてください。レインズ登録時の交付書面が電子交付可能になった点とごっちゃにならないように注意です。この辺も市販教材のみで勉強していると敢えて指摘されないところと言えるでしょう。


2.住宅瑕疵担保履行法★★★★

宅建業法内の問45で出題される住宅瑕疵担保履行法でも電子化が行われています。

自ら売主となり新築住宅を販売した宅建業者は「供託」または「保険」の資力確保措置を講ずる義務がありますが、それぞれに必要な「供託所の所在地等を記載した書面」「保険証券またはこれに代わる書面」について電子交付が可能となっています。

尚、供託所の説明書面を電子交付する場合は買主や発注者の承諾が必要となる点にも注意しておいてください。


法令制限の法改正

1.容積率(★)

住宅や老人ホーム等に設ける機械室その他これに類する建築物の部分(給湯設備その他の国土交通省令で定める建築設備を設置するためのものであって、市街地の環境を害するおそれがないものとして国土交通省令で定める基準に適合するもの)で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めるものは、延べ面積に算入しない。

新設規定ですが、機械室ですか…渋いですね。頭の片隅に。


2.単体規定(★★)

住宅の居室には採光のための窓その他の開口部を設け、採光に有効な部分の面積に対して一定割合以上のものとしなければなりませんが、原則「1/7以上」は変わらず、照明設備の設置等の措置が講じられているときは、「10分の1以上」までの範囲内とすることができるようになりました。

ここまで出題される可能性は低いと思いますが、窓の面積を1/7未満とすることができる要件は、50ルクス以上の照明器具の設置となります。


3.重要土地等調査法(★★)新設

重要施設(防衛関係施設等)の周囲おおむね1,000mの区域内及び国境離島等の区域内の区域で、その区域内にある土地及び建物が機能阻害行為(重要施設や国境離島等の機能を阻害する行為)の用に供されることを特に防止する必要があるものを、注視区域として指定する。

また、重要施設や国境離島等の機能が特に重要、またはその機能を阻害することが容易で、他の重要施設や国境離島等によるその機能の代替が困難である場合は、注視区域を特別注視区域として指定する。

注視区域・特別注視区域内の土地等を利用して機能阻害行為が行われることを防止するため、それらの土地等の利用状況を調査することとし、特別注視区域内にある土地等に関する所有権等の移転または設定をする契約を締結する場合、契約当事者は届出が必要となります。

届出対象=特別注視区域内にある土地等で、その面積(建物は各階の床面積の合計)が200㎡以上。ここだけ少し重要です。所有権またはその取得を目的とする権利が対象となり、地上権や抵当権などの移転や設定、相続等については届出の対象とならない点は事後届出・事前届出と同様です。


税の他の法改正

1.不当景表法

たくさん改正されました…。旧規定と新規定の比較を一気に見ていきます。簡単なのでパパッと覚えてしまいましょう。「 」内が変更部分です。

旧)物件が公園、庭園、旧跡その他の施設から直線距離で300m以内に所在している場合は、これらの施設の名称を用いることができる。
新)物件が公園、庭園、旧跡その他の施設「または海(海岸)、湖沼若しくは河川の岸もしくは堤防から直線距離で300m以内に所在している場合は、これらの名称を用いることができる。(★★)

旧)物件が面していれば、その街道その他の道路の名称(坂名を含む)を用いることができる。
新)物件から「直線距離で50m以内に所在」する街道その他の道路であれば、その名称(坂名を含む)を用いることができる。(★★★

旧)道路距離または所要時間を表示するときは、起点及び着点を明示して表示しなければならない。
新)道路距離または所要時間を表示するときは、起点及び着点を明示して表示しなければならず、「物件の起点は、物件の区画のうち駅その他施設に最も近い地点(マンション及びアパートにあっては建物の出入口)とし、駅その他の施設の着点は、その施設の出入口(施設の利用時間内において常時利用できるものに限る)とする」。(★★★

旧)眺望もしくは景観を示す写真、絵図またはコンピュータグラフィックスによる表示であって、事実に相違する表示または実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示をしてはならない。
新)眺望もしくは景観を示す写真、「動画」、絵図またはコンピュータグラフィックスによる表示であって、事実に相違する表示または実際のものよりも優良であると誤認されるおそれのある表示をしてはならない。(★★)

旧)公共交通機関の新設の路線については、現に利用できるものと併せて表示する場合に限り、路線の新設に係る国土交通大臣の許可処分または公共交通機関との間に成立している協定の内容を明示して表示することができる。
新)公共交通機関の新設の路線については、路線の新設に係る国土交通大臣の許可処分または公共交通機関との間に成立している協定の内容を明示して表示することができる。「現に利用できるものと併せて表示する場合に限り」が削除されました)(★★★

旧)土地が擁壁によって覆われない崖の上または崖の下にあるときは、その旨を明示しなければならない。
新)土地が擁壁によって覆われない崖の上または崖の下にあるときは、その旨を明示しなければならないが、「当該土地に建物を建築(再建築)するに当たり、制限が加えられているときは、その内容も明示しなければならない」。(★★★

旧)建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、その旨を表示し、これらの部分の面積がおおむね10%以上である場合は、併せてその面積を明示しなければならない。
新)建築基準法第42条第2項の規定により道路とみなされる部分(セットバックを要する部分)を含む土地については、その旨を表示し、「セットバックを要する部分の面積」がおおむね10%以上である場合は、併せてその面積を明示しなければならない。(★★)

旧)道路法第18条第1項の規定により道路区域が決定され、または都市計画法第20条第1項の告示が行われた都市計画道路等の区域に係る土地についてはその旨を明示しなければならない。
新)道路法第18条第1項の規定により道路区域が決定され、または都市計画法第20条第1項の告示が行われた「都市計画施設」の区域に係る土地についてはその旨を明示しなければならない。(★)

旧)住宅価格について、全ての住戸の価格を示すことが困難であるときは、新築分譲住宅及び新築分譲マンションの価格については、1戸当たりの最低価格、最高価格及び最多価格帯並びにその価格帯に属する住宅または住戸の戸数を表示しなければならず、販売戸数が10戸未満であるときは、最多価格帯の表示を省略することができる。
新)住宅価格は、全ての住戸の価格を表示「しなければならない」が、新築分譲住宅、新築分譲マンション及び「一棟リノベーションマンション」の価格については、「パンフレット等の媒体を除き」1戸当たりの最低価格、最高価格及び最多価格帯並びにその価格帯に属する住宅又は住戸の戸数「のみで表示することができ」、販売戸数が10戸未満であるときは、最多価格帯の表示を省略することができる。(★★★

旧)住宅ローンについては、1金融機関の名称もしくは商号または都市銀行、地方銀行、信用金庫等の種類、2提携ローンまたは紹介ローンの別、3融資限度額、4借入金の利率及び利息を徴する方式または返済例を明示して表示しなければならない。
新)住宅ローンについては、1金融機関の名称もしくは商号または都市銀行、地方銀行、信用金庫等の種類、2借入金の利率及び利息を徴する方式または返済例を明示して表示しなければならない。(旧規定の2番3番が削除されました)(★★)


2.税法

電磁的記録で作成された文書には印紙税が課されないという点を覚えておきましょう。(★★★★

他には特に重要な改正はありませんが、少し怪しい新設特例がありますので出題されそうと思ったら後ほど追記しておきます。


以上、令和5年度最新法改正情報をお送りしました。例年ですと例題も多めに掲載しているのですが、今年は法改正が多く「インプリ模擬試験」にたくさん盛り込んでしまいましたので、商品ご購入者様との差別化のためここでの例題は最小限となっています。すみません・・。

ラクに得点を稼ぐことができますので★3以上は確実に押さえておいてください(★4以上は絶対!)


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