捨て科目候補?不動産鑑定評価基準

宅建試験の税その他解説:「不動産鑑定評価基準」。以前お話した「地価公示法」とどちらかが出題されます。問題文が宅建試験で最も長文かもしれません。単純知識で出題パターンも決まっていますので、長文に惑わされず要点を掴んでおけば大丈夫ですが、本試験直前に合格レベルまで達していない場合は捨て科目とすることも賢明です。できるだけ噛み砕いた文章にしたいのですが、条文通りに出題されますので、ほぼ条文そのままの文章で見ていきます。

不動産鑑定評価基準の宅建解説

不動産鑑定評価基準とは

不動産鑑定評価基準とは不動産鑑定士が不動産の鑑定評価を行う際の基準で(そのままですが)、鑑定評価の基準として活用されるものをいいます。


不動産鑑定評価の流れ

1.対象不動産の確定:鑑定評価をする対象不動産の物的確定

2.権利態様の確定:どのような権利を評価するのか権利の確定

3.価格時点、価格または賃料の種類の確定:いつの価格を評価するのか

4.地域分析と個別分析:どのような地域か、どのような画地か

5.最有効使用の原則:どのような使用方法が最も使用価値があるのか

6.鑑定評価方式の適用:該当案件に即して適切に適用する


対象不動産の確定

不動産の種別として、「地域の種別」「土地の種別」があります。

地域の種別:宅地地域、農地地域、林地地域等
土地の種別:宅地、農地、林地、見込地、移行地等

ここで注意して欲しいのは、土地の種別は必ずしもその土地の現況と一致するものではないということです。現に耕作の用に供されている土地(見た目は農地)だとしても、その土地の属する用途的地域の種別が宅地地域であれば、鑑定評価上は宅地となります。


権利態様の確定

更地、底地、建付地、借地権、区分地上権等、どのような権利を評価するのか。


不動産の価格形成要因

「不動産の効用」「相対的稀少性」「不動産に対する有効需要」の三者に影響を与える要因を価格形成要因といい、一般的要因・地域要因・個別的要因に分けられます。不動産の鑑定評価を行うに当たってはこれらを明確に把握し、十分に分析する必要があります。

1.一般的要因

一般経済社会における不動産のあり方およびその価格の水準に影響を与える要因をいい、自然的要因、社会的要因、経済的要因、行政的要因に大別されます。

2.地域要因

一般的要因の相関結合によって規模、構成の内容、機能等にわたる各地域の特性を形成し、その地域に属する不動産の価格の形成に全般的な影響を与える要因をいいます。

3.個別的要因

不動産に個別性を生じさせ、その価格を個別的に形成する要因をいい、土地・建物等の区分に応じて分析する必要があります。


価格の種類

長文でややこしいですが、ほぼこのままの文章で出題されます。誤っている文章はキーワードをちょこっと変えてきますので赤字に注目してください。

1.正常価格:売り急ぎや買い急ぎがない、市場に公開されているなどの普通の取引

市場性を有する不動産について、現実の社会経済情勢下で合理的と考えられる条件を満たす市場で形成されるであろう市場価格を表示する適正な価格をいいます。

2.限定価格:借地権者による底地の併合や、隣接不動産の併合を目的とする売買など

市場性を有する不動産について、不動産と取得する他の不動産との併合または不動産の一部を取得する際の分割等に基づき正常価格と同一の市場概念下において形成されるであろう市場価格と乖離することにより市場が相対的に限定される場合における取得部分の当該市場限定に基づく市場価値を適正に表示する価格をいいます。

3.特定価格:民事再生法に基づき早期売却を前提とした価格を求める場合など

市場性を有する不動産について、法令等による社会的要請を背景とする評価目的下で正常価格の前提となる諸条件を満たさない場合における不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。

4.特殊価格:宗教建築物について、その保存に主眼を置き鑑定評価を行う場合など

市場性を有しない不動産(文化財等)について、その利用現況等を前提とした不動産の経済価値を適正に表示する価格をいいます。

  正常価格 限定価格 特定価格 特殊価格
市場性 あり あり あり なし
キーワード 合理性 限定 社会的要請 利用現況
一般不動産売買 隣地取得 証券化不動産 重要文化財


地域分析・個別分析

出題可能性は低いですが、一応見ておきましょう。

1.地域分析

近隣地域

対象不動産の属する用途的地域であって、より大きな規模と内容を持つ地域である都市や農村等の内部にあり、居住、商業活動、工業生産活動等、人の生活と活動に関して、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域をいいます。

類似地域

近隣地域の地域特性と類似する特製を有する地域をいいます。

同一需給圏

一般に対象不動産と代替関係が成立して、その価格の形成について相互に影響を及ぼすような関係にある他の不動産の存する圏域をいいます。

2.個別分析

対象不動産の個別的要因を分析し、その最有効使用を判定する。個々の不動産の最有効使用は、一般に近隣地域の地域特性の制約下にあるので、個別分析にあたっては、特に近隣地域に存する不動産の標準的使用との相互関係を明らかにし、判定することが必要となります。


最有効使用の原則

不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に富む使用(=最有効使用)を前提として把握されています。最有効使用とは、現実の社会情勢下で、客観的に見て良識と通常の使用能力を持つ人による合法的な最高最善の使用方法に基づくものとなります。(上記「個別分析」も参照)


不動産鑑定評価の方式

不動産鑑定評価の方式には、原価方式・比較方式・収益方式の3方式があります。不動産の再調達原価に着目する原価法、不動産の取引事例に着目する取引事例比較法、不動産から生み出される収益に着目する収益還元法です。

鑑定評価方式の適用にあたっては、地域分析および個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を適切に反映した複数の鑑定評価の手法を適用すべきとされています(複数の鑑定評価の手法を適用することが困難な場合、その考え方をできるだけ参酌するように努める)。

宅建試験における不動産鑑定評価で一番アツいのはここです。

1.原価法

再調達原価 → 減価修正 → 積算価格

価格時点における対象不動産の再調達原価を求め、この再調達原価について減価修正(耐用年数に基づく方法と観察減価法があり、これらを併用する)を行って対象不動産の試算価格(積算価格)を求める手法。対象不動産が現に存するものでないときは、価格時点における再調達原価を適切に求めることができる場合に限り適用することができます。

出題ポイント:最近造成された造成地や埋立地等の再調達原価を求めることができれば、土地についても適用することができる(土地について原価法を適用する場合、公共施設の整備等による環境の変化が価格水準に影響を与えているときは、地域要因の変化の程度に応じた増加額を熟成度として加算することができる)。

再調達原価-減価修正=積算価格

2.取引事例比較法

事例を収集して選択 → 事情補正と時点修正 → 比準価格

多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらにかかる取引価格に必要に応じて事情補正および時点修正を行い、かつ地域要因の比較および個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考慮し、これによって対象不動産の試算価格(比準価格)を求める手法。取引事例は、原則として近隣地域または同一需給圏内の類似地域に存する不動産にかかるもののうちから選択します(やむを得ない場合には近隣地域の周辺の地域に係るものから、対象不動産の最有効使用が標準的使用と異なる場合には同一需給圏内の代替競争不動産に係るものから選択可能)。

事情補正=取引事例が特殊な事情を含み取引価格に影響している場合、適切な補正を行って鑑定評価を実施する
時点修正=取引時点と価格時点が異なり価格水準に変動が生じた場合、価格時点の価格に修正する

出題ポイント:取引事例は特殊な事情がないことが必要だが、事情補正をすることで用いることができ、古い事例でも時点修正をすることで用いることができる。投機的取引として認められる事例は採用してはならない。

取引事例×事情補正×時点修正×地域要因×個別的要因=比準価格

3.収益還元法

将来期待される純収益 → 収益価格

対象不動産が将来生み出すであろう期待される純収益の現在価値の総和を求めることにより対象不動産の試算価格(収益価格)を求める手法。直接還元法とDCF法があり、賃貸用不動産または賃貸以外の事業用不動産の価格を求める際に特に有効となります。また、市場における土地の取引価格の上昇が著しい場合も収益還元法が活用されるべきと考えられます。

直接還元法=一定期間の純収益を還元利回りによって還元する
DCF法 =連続する複数期間に発生する純利益及び復帰価格を現在価値に割引き、それぞれを合計する(不動産の証券化に係る鑑定評価で純収益の見通し等について説明が求められる場合には、原則としてDCF法を適用する)

出題ポイント:学校や公園等の公共公益の不動産または文化財等の指定を受けた建造物など、一般的に市場性を有しない不動産以外のものには全て適用すべきとされる(自用の不動産でも賃貸を想定することにより適用される)。

一定期間の純収益÷還元利回り=収益価格(直接還元法)
毎期の純収益+物件の復帰価格 → 現在価値=収益価格(DCF法)


以上、何を言っているのか分からない箇所も多々あるかと思いますが、過去の宅建本試験問題もこういった感じです。税その他では所得税に次いで難しいですかね・・?

他にも細かい知識が多いのですが、あまり深入りせず消去法で対処してください。出題はパターン化されていますので、過去問に何度か目を通し、時間が許す限りマスターしておいてください!


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贈与税 土地
【宅建試験問題 平成7年ー問33】不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.不動産の価格は、その不動産の効用が最高度に発揮される可能性に最も富む使用を前提として把握される価格を標準として形成されるが、これを最有効使用の原則という。
2.不動産の性格により一般的に取引の対象とならない不動産又は依頼目的及び条件により一般的な市場性を考慮することが適当でない不動産の経済価値を適正に表示した価格を限定価格という。
3.対象不動産の属する地域であって、居住、商業活動等人の生活と活動とに関し、ある特定の用途に供されることを中心として地域的にまとまりを示している地域を同一需給圏という。
4.取引事例等にかかる取引の時点が不動産の鑑定評価を行う時点と異なり、その間に価格水準に変動があると認められる場合に、当該取引事例等の価格を鑑定評価を行う時点の価格に修正することを事情補正という。
1 正:現実の使用方法は当該不動産が十分な効用を発揮していない場合があることに留意する
2 誤:特定価格の記述
3 誤:近隣地域の記述
4 誤:時点修正の記述(覚える必要なし)
【宅建試験問題 平成11年ー問29】不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.不動産の価格を求める鑑定評価の手法は、不動産の再調達原価に着目する原価法、不動産の取引事例に着目する取引事例比較法及び不動産から生み出される収益に着目する収益還元法に大別される。
2.原価法における再調達原価とは、対象不動産を価格時点において再調達することを想定した場合において必要とされる適正な原価の総額をいうので、積算価格を求めるには、再調達原価について減価修正を行う必要がある。
3.取引事例比較法における取引事例は、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域に存する不動産に係るものでなければならないが、必要やむを得ない場合には、近隣地域の周辺の地域に係るものからも選択できる。
4.収益還元法は、対象不動産が将来生み出すであろうと期待される収益の現在価値の総和を求める手法であるので、直接還元法における対象不動産の収益価格は、総費用を控除する前の総収益を還元利回りで還元して求められる。
1 正:鑑定評価にあたっては、原則として案件に応じてこれらの三手法を併用すべきこととされている
2 正:建設資材、工法等の変遷により、対象不動産の再調達原価を求めることが困難な場合には、対象不動産と同等の有用性を持つものに置き換えて求めた原価を再調達原価とみなす
3 正:1取引事情が正常なものと認められるものであることまたは正常なものに補正することができるものであること、2時点修正をすることが可能なものであること、3地域要因の比較及び個別的要因の比較が可能なものであることも必要
4 誤:総費用を控除した後の純収益を還元利回りで還元して求められる
【宅建試験問題 平成13年ー問29】不動産の鑑定評価に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.不動産の価格を求める鑑定評価の手法は、原価法、取引事例比較法及び収益還元法に大別されるが、鑑定評価に当たっては、案件に即してこれらの三手法のいずれか1つを適用することが原則である。
2.取引事例比較法とは、まず多数の取引事例を収集して適切な事例の選択を行い、これらに係る取引価格に必要に応じて事情補正及び時点修正を行い、かつ、地域要因の比較及び個別的要因の比較を行って求められた価格を比較考量し、これによって対象不動産の試算価格を求める手法である。
3.収益還元法は、学校、公園等公共又は公益の目的に供されている不動産も含めすべての不動産に適用すべきものであり、自用の住宅地といえども賃貸を想定することにより適用されるものである。
4.賃料の鑑定評価において、支払賃料とは賃料の種類の如何を問わず貸主に支払われる賃料の算定の期間に対応する適正なすべての経済的対価をいい、純賃料及び不動産の賃貸借等を継続するために通常必要とされる諸経費等から成り立つものである。
1 誤:原則として地域分析および個別分析により把握した対象不動産に係る市場の特性等を 適切に反映した複数の不動産鑑定評価の手法を適用すべき
2 正:その通り
3 誤:学校や公園など公共または公益の目的に供される不動産以外のものに適用される
4 誤:実質賃料の記述(覚える必要なし)