建築基準法の道路制限(接道義務)

宅建試験の法令制限解説:建築基準法の2回目「道路に関する制限」をお送りします。まるまる1問ではなく、肢の1つとして出題されることも多くなっています。覚えることは少なく、とても簡単ですので確実にマスターしておいてください。出題された場合は法令制限の得点源となります。

道路制限の宅建解説

接道義務

都市計画区域および準都市計画区域内の敷地は、建築基準法上の道路に2m以上接していなければなりません。これを接道義務(せつどうぎむ)といいます。

もし建築物が建っている土地が道路に接していなければ不便ですよね?日常の通行に支障があるのはもちろん、火事や地震のときに避難が遅れてしまいます。しかし、その敷地の周囲に広い空地を有する建築物など、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認め、建築審査会の同意を得て許可した敷地については接道義務に従わなくてよいという例外があります。

令和元年の法改正で、「敷地が幅員4m以上の道(道路に該当するものを除き、避難及び通行の安全上必要な国土交通大臣省令で定める基準に適合するもの)に2m以上接する建築物のうち、利用者が少数(延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅)であるものとして用途及び規制に関し国土交通省令で定める基準に適合するもので、特定行政庁が交通上、安全上、防火上、衛生上支障がないと認めるもの」についても、接道義務は適用されなくなりましたので注意です。こちらは建築審査会の同意からの許可が要件とされていません(← 珍しい例外なので必ず覚える!)。
周囲に広い空地を有する建築物で交通上、安全上、防火上、衛生上支障がない 許可 建築審査会の同意必要
幅員4m以上の道に2m以上接する延べ面積200㎡以内の一戸建て住宅で… 認定 建築審査会の同意不要

また逆に、映画館など不特定多数の者が集まる特殊建築物や階数が3以上の建築物、延べ面積が1,000㎡を越える建築物については、地方公共団体の条例によって、更に厳しい制限を付加することができます緩和は不可)。

更にこちらも令和元年の法改正で、付加できるものとして「袋路状道路にのみ接する建築物(一戸建て住宅を除く)で、延べ面積が150㎡を超えるもの」が加わりましたので、これは押さえておきましょう。

この例外と付加することができるという2つは必ず覚えておいてください。
宅建合格!接道義務

建築基準法の道路とは

建築基準法上の道路とは、幅員4m以上(地下除く)の道路法による道路等をいいます。また、都市計画区域および準都市計画区域内で、特定行政庁、その地方の気候や風土の特殊性、土地の状況により必要があると認め、都道府県都市計画審議会の議を経て指定する区域内においては、接道義務の対象となる道路の幅員は6m以上となります。

しかし実際には、幅が4m(6m)未満の道など日本中に存在します。そこで、現に建築物が立ち並んでいる道で、特定行政庁の指定があったものは、幅員が4m未満であっても道路とみなされます(幅員1.8m未満の道では、特定行政庁はあらかじめ建築審査会の同意も得る必要あり)。これを2項道路(みなし道路)といいます。

2項道路の場合、道路の中心線から水平距離2mずつ両側に後退した線が道路の境界線とみなされ、この境界線より内側には建築物を建築してはなりません(中心線から2m未満で、一方が崖や川等である場合は川等から4mの線が境界線)。

また、幅員が6mと指定された区域の場合は、道路の中心線から水平距離3mずつ両側に後退した線が道路境界線となります。

最後に、一定の「私道」も道路に含まれるということも覚えておいてください。私道の変更や廃止が接道義務に抵触する場合は、特定行政庁はその変更や廃止を禁止または制限できる、ということは重要です(=抵触しなければ私道に特に制限はない)。逆に、自動車専用道路や一定の特定高架道路等は、接道義務の対象となる道路には含まれないということも覚えておいてください。


道路内の建築制限

そもそも道路とは、日常の通行、緊急時の非難のために設置されているものです。よってそれらを妨げる障害物が道路上にあることは許されません。つまり、道路内または道路に突き出して、次のものを建築、築造してはいけません。

1.建築物
2.敷地を造成するための擁壁(ようへき)

この2つは常識的に分かりますが、ここで重要なのは例外です。次の3つは例外として、道路内または道路に突き出して建築、築造することができます。

1.地盤面下に設ける建築物(地下商店街や地下駐車場)
2.公益上必要な建築物で、特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの(公衆便所や巡査派出所)
3.公共用歩廊、その他の建築物で、特定行政庁が安全上、防火上、衛生上、他の建築物の利便を妨げ、周囲の環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの(公共用歩廊 → 商店街のアーケード、その他の建築物 → 上空の渡り廊下)

1の地盤面下は特定行政庁の許可不要です。許可を要するというひっかけ問題がよく出題されます。


壁面線による建築制限

上記「道路内の建築制限」によって道路内の空間は確保されますが、道路の境界線と建築物の間にも一定の空間があったほうが、より快適な環境となりますね。そこで特定行政庁は、街区内における建築物の位置を整え、その環境の向上を図るために必要があると認めるときは、建築審査会の同意を得て、壁面線の位置を指定することができます

宅建合格!壁面線
環境向上のために定める、外壁などを道路境界から後退させる位置を示す線を壁面線といいます。壁面線が指定されると、建築物の外壁や柱、高さ2mを超える門または塀は、原則として壁面線を越えて建築してはならなくなります(=建築物は、壁面線より内側に建築しなければならない)。


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用途制限 建蔽率
【宅建試験問題 平成6年ー問22】建築物の敷地又は建築物と道路の関係に関する次の記述のうち、建築基準法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.建築物の敷地は、原則として幅員4m以上の道路に接しなければならないが、この幅員については、地方の特殊性等により加重されることはない。
2.建築物は、地下に設けるものであっても、道路に突き出して建築してはならない。
3.私道の所有者が私道を廃止し、又は変更する場合、その私道に接する敷地に与える影響のいかんによっては、特定行政庁から、その廃止又は変更を禁止し、又は制限されることがある。
4.建築基準法の規定が適用された際現に建築物が立ち並んでいる幅員4m未満の道で、特定行政庁が指定したものについては、同法の規定が適用された際の道路の境界線が、その道路の境界線とみなされる。
1 誤:特定行政庁が必要と認め都道府県都市計画審議会の議から指定で6m
2 誤:地下は通行の妨げとならないので、道路に突き出して建築可(特定行政庁の許可も不要)
3 正:私道の変更または廃止によって、その道路に接する敷地が接道義務に抵触することとなる場合、特定行政庁は、その私道の変更または廃止を禁止し、または制限することができる
4 誤:2項道路については道路の中心線から水平距離2mの線が境界線とみなされる
【宅建試験問題 平成12年ー問24】建築基準法に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(改題)

1.道路法による道路は、すべて建築基準法上の道路に該当する。
2.建築物の敷地は、必ず幅員4m以上の道路に2m以上接しなければならない。
3.地方公共団体は、土地の状況等により必要な場合は,建築物の敷地と道路との関係について建築基準法に規定された制限を、条例で緩和することができる。
4.公衆便所、巡査派出所その他これらに類する公益上必要な一定の建築物で特定行政庁が通行上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものは、道路に突き出して建築することができる。
1 誤:道路法による道路のうち幅員4m(6m)以上のものが建築基準法上の道路
2 誤:建築物の敷地の周囲に広い空地を有する建築物その他の国土交通省令で定める基準に適合する建築物で、特定行政庁が交通上、安全上、防火上及び衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したものについては例外となる
3 誤:付加はできるが緩和は不可
4 正:地盤面下に設ける建築物は同意や許可不要な点と比較