宅建試験の法令制限解説:建築基準法の3回目「建蔽率」について解説します。少々難しめで勉強優先度はそれほど高くありませんが、宅建試験でもそこそこ出題されますので、可能な限りマスターしておいてください。建蔽率のみで丸々1問の可能性は低く容積率などと複合問題で出題されますので、計算問題を理解して、要点もできるだけ押さえておいてください。尚、平成30年の法改正により「建ぺい率」が「建蔽率」と漢字表記になりました。
- 建蔽率の宅建解説
建蔽率とは「建築物の建築面積の、敷地面積に対する割合」をいい、つまり計算式は「建築物の建築面積」÷「敷地面積」となります。100㎡の土地に50㎡までの建物を建てていいよ=建蔽率5/10ということです。
ちなみに次ページでお話する容積率とは「建築物の延べ面積の、敷地面積に対する割合」をいい、同様に「建築物の延べ面積」÷「敷地面積」であらわせます。「建築物の延べ面積」とは、建築物の各階の床面積の合計のことです。
建築物が密集している市街地で皆が敷地いっぱいに建物を建ててしまうと、日当たりが悪いなど不便ですよね?不便なだけでなく、火事などが起こった場合に燃え広がるのも早くなってしまいます。同様に無制限に高い建物を建てられるとしても不便が多くなります。このようなやりたい放題を制御するため、建蔽率と容積率の規制が存在しています。
■建蔽率の規制や緩和
建蔽率は、敷地内に適度の空地を確保することで日照、採光、通風の確保や延焼防止を図ることを目的として規制されています。建築面積の最高限度は、「敷地面積」×「建蔽率」で求めることができます。
以下、地域ごとの建蔽率の最高限度です。
1.第1第2低層住専・田園住居・第1第2中高層住専・工業専用
⇒ 3/10 4/10 5/10 6/10 のうち都市計画で定めたもの
2.第1第2住居・準住居・準工業
⇒ 5/10 6/10 8/10 のうち都市計画で定めたもの
3.近隣商業
⇒ 6/10 8/10 のうち都市計画で定めたもの
4.商業
⇒ 8/10
5.工業
⇒ 5/10 6/10 のうち都市計画で定めたもの
6.用途地域の指定のない地域
⇒ 3/10 4/10 5/10 6/10 7/10 のうち特定行政庁が土地利用の状況等を考慮し当該区域を区分して都道府県都市計画審議会の議を経て定めたもの
この数値は無理して覚える必要はありません。ただし、商業地域の 8/10 は覚えておいてください。
また、次の場合は建蔽率が緩和されます。ここはすごく重要ですので確実に覚えておいてください。
1.建蔽率の限度が 8/10 の地域外で、防火地域内にある耐火建築物等(+準防火地域内の準耐火建築物等)
⇒ 上記最高限度の数値に+1/10(つまり 8/10 の商業地域は確実に適用外ですね)
防火地域内で準耐火建築物を建築する場合は建蔽率の緩和規定は適用されませんので、ひっかけ問題に注意してください。「等」とはこれらと同等以上の延焼防止性能を有するものとして政令で定める建築物を指します。
2.特定行政庁が指定した街区の角にある敷地等の内にある建築物
⇒ 上記最高限度の数値に+1/10
3.耐火建築物と角地にある建築物の両方の条件を満たすもの
⇒ 上記最高限度の数値に +2/10
+というと厳しくなるイメージかもしれませんが、建蔽率が50%→60%になるということは、それだけ大きな建物を建てられるということです。防火地域という火災防止を目的とした厳しい規制が設けられている地域で、更に燃えにくい耐火建築物を建てるのならば大丈夫だろう、ということです。
更に、次の場合は建蔽率の制限を受けません。
つまり敷地いっぱいに建築物を建てることができます(=建蔽率10/10)。
1.建蔽率の限度が8/10とされている地域内で、防火地域内にある耐火建築物等
2.巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊など公益上必要なもの
3.公園、広場、道路等の内にある建築物で、特定行政庁が安全上、防火上、衛生上支障がないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
また、第一種低層住居専用地域・第二種低層住居専用地域・田園住居地域内においては、建築物の外壁またはこれに代わる柱の面から敷地境界線までの距離(=外壁の後退距離)を定めることもできます(1mまたは1.5m)。
■建蔽率の最高限度の練習問題
建蔽率の計算を練習しておきましょう。100㎡は第一種住居地域、50㎡は近隣商業地域にまたがる150㎡の敷地があったとします(それぞれ都市計画で定められた建蔽率は、6/10 と 8/10)。ここに建築物を建てる場合の、建蔽率の最高限度を求めてみましょう。
建物の敷地が規制数値の異なる複数の地域にまたがる場合、それぞれの地域の建蔽率にその地域にかかる敷地の敷地全体に占める割合を乗じた数値の合計が、その敷地全体の建蔽率の最高限度となります(※)。何を言っているか分かりませんね。もっと簡単な方法がありますので、実際に解いてみましょう。
第1住居 100×6/10=60
近隣商業 50×8/10=40
この2つを足した100㎡が、この敷地に建てられる建築面積の最高限度です。この建築面積の最高限度100㎡を敷地面積150㎡で割ってください。100/150=6.7/10 これが当該敷地の建蔽率の最高限度となります。ちなみに※印の方法でも、6/10×100/150+8/10×50/150=6.7/10 と同じ答えになります。
異なる用途地域にまたがる場合に、「制限が厳しい方を適用する」「敷地の過半が属する方を適用する」といったひっかけ問題に注意してください。
ではこの例題の敷地が防火地域内にあり、耐火建築物を建てる場合の建蔽率の最高限度はどうなるでしょうか(特定行政庁が指定する角地ではありません)?まず第一種住居地域の部分は制限が1/10緩和され、7/10となりますね。近隣商業地域の部分は元の限度が8/10ですので建蔽率制限を受けず10/10となります。
第1住居 100×7/10=70
近隣商業 50×10/10=50
この2つを足した120㎡が建築面積の最高限度となります。従いまして、120÷150=8/10 これが当該敷地の建蔽率の最高限度となります!
■敷地面積の最低限度
もしも敷地が細かく分けられてしまうと、ゴミゴミとした街になってしまいます。そのような「ミニ開発」を防ぎ、良好な住居環境を保護するために建築物の敷地面積の最低限度が都市計画で定められることがあります。都市計画で敷地面積の最低限度を定める場合、200㎡以内の範囲で定められます。
以下、例外(=制限がない)です。
1.建蔽率の限度が8/10とされている地域内で、防火地域内にある耐火建築物等
2.巡査派出所、公衆便所、公共用歩廊など公益上必要なもの
3.その敷地の周囲に広い公園等の空地を有する建築物で、特定行政庁が市街地の環境を害するおそれがないと認めて建築審査会の同意を得て許可したもの
4.特定行政庁が用途または構造上やむを得ないと認め建築審査会の同意を得て許可したもの
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