登録免許税の概要から特例を解説

宅建試験の税その他解説:「登録免許税」についてお話します。前ページの「印紙税」より少し複雑ですが、所得税や贈与税と比べれば簡単ですので、ここはできるだけマスターしておきましょう。

登録免許税の宅建解説

登録免許税とは

土地や建物を売買した場合、その権利を第三者に主張するために所有権の保存登記や移転登記等を行います。また、銀行からお金を借りる場合には抵当権の設定登記等を行います。これら登記を行う際に課される税金が登録免許税です。


登録免許税の概要

1.課税主体:国

2.課税客体:不動産の登記など

例外:非課税登記(以下の登記については登録免許税が課税されません)

国等が自己のために受ける登記
建物の新築、増築の表示登記(表示登記=登記簿表題部に初めになされる登記)

3.納税義務者:登記を受ける者

登記を受ける者が2以上であるときは、これらの者が連帯して納付義務を負います。つまり不動産売買における所有権移転登記は、買主(登記権利者)と売主(登記義務者)が共同して登記申請を行います。

登記名義人である被相続人から相続により土地の所有権を取得した相続人が、相続登記をしないまま亡くなった場合、その相続人を登記名義人とする土地の相続登記について登録免許税は課せられないという点は頭の片隅に。

4.課税標準:固定資産課税台帳の登録価額

登録されていない場合、類似不動産の登録価額をもとに登記官が認定した価格となります。また、不動産上に借地権等の所有権以外の権利その他処分の制限があるときは、その権利その他処分の制限がないものとした価額(=更地価額)となります。その他、次の2つの注意点も覚えておいてください。

抵当権の設定登記の場合、課税標準は債権金額となる。課税標準の金額が1,000円に満たない場合、その課税標準は1,000円として計算される。

5.税率:登記原因により異なる

所有権保存登記は不動産価額の1000分の4、売買による所有権移転登記は1000分の20、相続による移転なら1000分の4などなど個々の登記区分に応じて税率が定められているのですが、細かく全てを覚える必要はないでしょう。出題されたとしても丸々1題ということはないと思いますので消去法で対処してください。

むしろ重要なのは税率が軽減される特例です。ここは少し大変ですが、しっかり頭に入れておいてください。

・登記を受ける者が、平成20年1月1日以降に、電子情報処理組織を使用して、不動産の所有権の保存もしくは移転の登記、抵当権の設定の登記、株式会社、合名会社、合資会社、合同会社などの設立の登記の申請を行う場合における当該登記に係る登録免許税の額は、登録免許税法の規定により計算した金額から100分の10を乗じて算出した金額(上限5,000円)を控除した額とする(=オンライン申請は1割引)

・個人が、一定の要件(家屋の床面積50㎡以上)に該当する住宅用家屋を新築し、または建築後使用されたことのない一定の要件に該当する住宅用家屋を取得して、その個人の居住の用に供した場合で、新築又は取得後1年以内に受ける所有権の保存登記:本則1000分の4 → 軽減税率1000分の1.5

・個人が、一定の要件(家屋の床面積50㎡以上、木造等築20年以内、耐火建築物築25年以内、一定の耐震基準に適合または昭和57年1月1日以後に建築された家屋)に該当する住宅用家屋を取得(売買および競落に限る。贈与・交換・相続・合併等による所有権移転登記に軽減税率は適用されない点に注意)し、その個人の居住の用に供した場合で、新築または取得後1年以内に受ける所有権の移転登記:本則1000分の20 → 軽減税率1000分の3

・個人が、一定の要件に該当する住宅用家屋(上記2つ)の新築(増築を含む)をし、または一定の要件に該当する住宅用家屋を取得し、その個人の居住の用に供した場合において、これら住宅用家屋の新築もしくは取得をするための資金の貸付けが行われるときまたは対価の支払が賦払の方法により行われるときは、その貸付けまたはその賦払金にかかる債権を担保するために一定の者が受けるこれらの住宅用家屋を目的とする抵当権の設定登記で、新築または取得後1年以内に受ける抵当権の設定登記:本則1000分の4 → 軽減税率1000分の1

・仮登記がされている不動産について、その仮登記に基づき本登記を受ける場合、本登記の税率から一定の税率を控除する

・地上権や永小作権等の登記がされている不動産について地上権等の登記名義人が当該不動産を取得する場合、税率は所有権移転登記の税率に100分の50を乗じた割合となる
  共通要件 固有要件 軽減税率
所有権保存登記 個人の自己居住用
床面積50㎡以上
新築または取得後1年以内に登記
新築住宅のみ 0.15%
所有権移転登記 同上 一定の耐震基準に適合または
昭和57年1月1日以後に建築
0.3%
抵当権設定登記 同上 同上 0.1%

【住宅用家屋の所有権移転登記にかかる税率の軽減措置】激アツ要点+αまとめ

①売買または競落による住宅用家屋の取得であること
②個人が自己の居住用住宅として使用すること
③床面積が50㎡以上であること
④新築または取得後1年以内に登記をすること
⑤新耐震基準を満たすor登記簿上の建築日付が昭和57年以降
登記申請の際、市区町村長の証明書(住宅用家屋証明書)を添付する
過去に適用を受けていても、上記要件を満たせば再度適用を受けることができる(=一生に一度ではない)

6.納付方法:現金納付orクレジットカード決済or税額3万円以下のときは印紙納付可

7.納付期日:その登記を受けるまで

8.納税地:登記を受ける登記所の所在地


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印紙税 贈与税
【宅建試験問題 平成14年ー問27】不動産登記に係る登録免許税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.土地の所有権の移転登記に係る登録免許税の税率は、移転の原因にかかわらず一律である。
2.土地の売買に係る登録免許税の課税標準は、売買契約書に記載されたその土地の実際の取引価格である。
3.土地の所有権の移転登記に係る登録免許税の納期限は、登記を受ける時である。
4.土地の売買に係る登録免許税の納税義務は、土地を取得した者にはなく、土地を譲渡した者にある。
1 誤:売買や相続など、所有権取得の原因により税率は異なる
2 誤:登録免許税の課税標準=固定資産課税台帳登録価額
3 正:登録免許税の納期限=登記を受けるとき
4 誤:登録免許税の納税義務者=不動産の登記を受ける者で、売買契約は双方が登記を受ける者にあたる
【宅建試験問題 平成3年ー問28】登録免許税に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.登録免許税の課税標準の金額を計算する場合において、その金額が1千円に満たないときは、その課税標準は1千円とされる。
2.納付した登録免許税に不足額があっても、その判明が登記の後である場合においては、その不足額の追徴はない。
3.建物の新築をした所有者が行う建物の表示に関する登記については、登録免許税は課税されない。
4.登録免許税の納付は、納付すべき税額が3万円以下の場合においても、現金による納付が認められる。
1 正:登録免許税の課税標準金額を計算する場合において、その全額が千円に満たないときは、これを千円とする
2 誤:不足があれば、判明が登記後でも追徴される
3 正:表示の登記について登録免許税は課税されない
4 正:3万円以下の場合は印紙納付もできるが、あくまでも現金納付が原則(クレジットカード決済も可)
【宅建試験問題 平成10年ー問26】住宅用家屋の所有権の保存登記に係る登録免許税の税率の軽減措置の適用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.登録免許税の税率の軽減措置は、従業員の社宅として新築した住宅用家屋について法人が受ける登記には適用されない。
2.登録免許税の税率の軽減措置は、既にこの税率の軽減措置の適用を受けたことのある者が受ける登記には適用されない。
3.登録免許税の税率の軽減措置は、鉄筋コンクリート造の住宅用家屋の登記にのみ適用があり、木造の住宅用家屋の登記には適用されない。
4.登録免許税の税率の軽減措置は、その登記を受ける年分の合計所得金額が 3,000万円超である個人が受ける登記には適用されない。
1 正:住宅用家屋を新築した場合に所有権保存登記の軽減措置が行われるのは個人のみ
2 誤:かつてこの特例を受けた者でも再度の適用可
3 誤:所有権保存登記の軽減措置適用要件は個人の居住用+床面積50㎡以上+新築(購入)後1年以内
4 誤:そのような規定はなく、所得は関係ない