印紙税が課される文書と記載金額

宅建試験の税その他解説:「印紙税」についてお話します。前ページの所得税とは打って変わってとても単純で簡単です。ここは税その他の貴重な得点源で、宅建合格には落とせないところですので確実にマスターしておいてください。

印紙税の宅建解説

印紙税とは

印紙税とは、不動産取引によって作成された契約書や領収証などの文書に対して、その文書作成者に課される税をいいます。

2022年5月に施行された不動産取引の電子化に伴い、電磁的記録による方法で作成された文書には収入印紙を貼る必要がない=印紙税は課税されないこととなっています。宅建試験対策としては「電子契約であれば不動産の譲渡や売買に関する契約書、土地の賃貸借契約書に印紙税は課されない」点は必ず押さえておきましょう。

2023年以降の試験では、しばらくこれであっさり得点できる可能性が高いです(この出題可能性が高いだけで、もちろん他の課税文書も電磁的方法で作成されていれば印紙税は課されません)。


印紙税の概要

1.課税主体:国

2.課税客体:課税文書

・課税文書:土地の賃貸借契約書、売買・交換契約書、贈与契約書、不動産売買代金領収証等の売上代金に係る金銭または有価証券の受取書(=領収書)など

後日に正式な契約書を作成することを目的として作成される仮契約書や、既に存在している契約の内容を変更することを目的として作成される変更契約書も課税文書となります。同一内容の契約書が2通以上作成された場合、それぞれ契約の成立を証明する目的で作成されたものであるときは、それら全ての文書が印紙税の課税対象となります。

【例題】土地の売買契約書(記載金額2,000万円)を3通作成し、売主A、買主B及び媒介した宅建業者Cがそれぞれ1通ずつ保存する場合、Cが保存する契約書には、印紙税は課されない。→ 誤り。宅建業者Cが保存する契約書も課税文書となります。

・不課税文書(非課税と同じ意味という認識で大丈夫):建物の賃貸借契約書、抵当権・質権の設定契約書、不動産以外の売買契約書、使用貸借契約書など

・非課税文書:記載金額が5万円未満の受取書、記載金額が1万円未満の契約書 、営業に関しない受取書国・地方公共団体が作成した契約書(受取書)、委任状など

営業に関しない受取書に印紙税は課されないという点には注意です。不動産業者ではない一般の人が自分の土地建物を売却した場合、どれだけ高額だったとしても、営業ではないのでその領収書に印紙は不要となります。

国や地方公共団体と、私人が共同作成した文書の場合、
私人が作成し、国や地方公共団体が保存するもの → 課税
国や地方公共団体が作成し、私人が保存するもの → 非課税
となります(国等が保存する文書は私人が作成したとみなされ、私人が保存する文書は国等が作成したとみなされる)

3.納税義務者:課税文書の作成者

委任に基づく代理人が代理人名義で作成する課税文書の作成者=代理人となります。

4.課税標準:課税文書の記載金額

・不動産の譲渡に関する契約書の記載金額

売買:売買金額
交換:交換金額
贈与:記載金額のない契約書として扱う(=一律200円

交換金額ですが、交換対象物双方の金額が記載されている場合、いずれか高い方の金額が記載金額となります。交換差金のみが記載されている場合は、その交換差金が記載金額となります(交換金額、交換差金が記載されていない場合は記載金額がない契約書=200円)。ちょっと間違えやすいので、すぐ下の表と事例も参考にしてください。

宅建合格!印紙税
交換における記載内容 記載金額
双方の記載がある 高い方
双方の記載+差金の記載がある 高い方
差金のみ記載がある その金額
等価交換で金額の記載あり その金額
等価交換で金額の記載なし 200円

等価交換でも金額の記載があればその金額が記載金額となり印紙税が課されます。Aの所有する500万円の土地とBの所有する1000万円の土地を交換し、Aは差額の500万円をBに支払う旨を記載した土地交換契約書の記載金額は、500万円ではなく高い方の価額である1000万円となります。

・土地の賃貸借契約書の記載金額

契約に際し、貸主に交付し後日返還することが予定されていない金額権利金・礼金・更新手数料などを指し、賃料・敷金・地代は記載金額とならない点に注意)

・地上権の設定や譲渡に関する契約書の記載金額

契約に際し、相手方当事者に交付し後日返還することが予定されていない金額

・変更契約書の記載金額

原契約の契約金額から総額の変更がない場合:記載金額がない契約書(=200円
増額契約:増加額部分
減額契約:記載金額がない契約書(=200円

・要注意!消費税額との関係

消費税額等が明確に区分記載されているときは、それを除く額が記載金額となります。

請負金額1,100万円、税抜価格1,000万円、消費税額等100万円
請負金額1,100万円、うち消費税額等100万円
請負金額1,000万円、消費税額等100万円、計1,100万円
↑消費税額等が明確に表示されているため、記載金額は「1,000万円」となります。

請負金額1,100万円(内、消費税等を含む)
↑消費税額等が明確に表示されていないため、記載金額は「1,100万円」となります。


5.税率:記載金額によって異なりますが覚える必要はありません

参考までに…記載金額10万円超50万円以下は400円、100万円超500万円以下は2,000円など。

むしろ先ほどから出てます記載金額がない場合の方が重要です → 一律200円
「記載金額がない場合は課税されない」というひっかけ問題に注意してください。

6.納付方法:印紙を貼り付けて消印する

消印は自己またはその代理人や使用人の印章により行いますが、署名でも構いません

7.納付期日:課税文書作成時

8.過怠税:罰金です

印紙を貼り付けていない場合:不貼付の印紙税額とは別にその2倍額の合計=3倍(自己申告なら1.1倍)
消印がない場合:既に貼付の印紙税額とは別にその1倍額の合計=2倍


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所得税 登録免許税
  記載金額
売買契約書 売買代金
交換契約書(記載金額あり) 高い方の額
交換契約書(交換差金の額のみ) 交換差金の額(交換差金の記載もなければ200円)
一つの契約書に売買と請負が併記 原則は売買契約書(請負金額が高いときは請負契約書)
変更契約書(増額) 増加分の額
変更契約書(減額or総額変更なし) 記載金額なし(200円)
贈与契約書 記載金額なし(200円)
建物賃貸借契約書 非課税
土地賃貸借契約書 後日返還されない権利金等の額(返還される保証金は200円)
敷金や保証金の領収証 敷金や保証金の額
記載金額5万円未満の受取書 非課税
営業に関しない受取書 非課税
抵当権設定契約書 非課税
国や地方公共団体が作成した文書 非課税(国等以外が作成して国等が保存する文書は課税文書)
電子契約書 非課税
【宅建試験問題 平成2年ー問30】印紙税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.「月額家賃10万円、契約期間2年間、権利金60万円、敷金30万円とする」旨を記載した建物の賃貸借契約書については、印紙税は課税されない。
2.6万円の印紙税が課税される契約書に、誤って10万円の収入印紙をはり付け、消印した場合、過大に納付した4万円の印紙税については、還付を受けることができない。
3.当初作成の「土地を6億円で譲渡する」旨を記載した売買契約書の契約金額を変更するために作成する契約書で、「当初の契約書の契約金額を1億円減額し、5億円とする」旨を記載した変更契約書は、記載金額5億円の不動産の譲渡に関する契約書として、印紙税が課税される。
4.「月額賃料20万円、契約期間2年間、権利金100万円、保証金100万円とする」旨を記載した土地の賃貸借契約書については、記載金額680万円の土地の賃借権の設定に関する契約書として、印紙税が課税される。
1 正:建物の賃貸借契約書は課税文書ではない
2 誤:過誤納金の還付は可能
3 誤:契約金額減少の変更契約書は、記載金額がない契約書として課税される(=200円)
4 誤:賃料と後日返還される保証金は除かれ、権利金100万円のみが記載金額
【宅建試験問題 平成12年ー問27】印紙税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.建物の賃貸借契約に際して敷金を受け取り、敷金の領収書(記載金額100万円)を作成した場合、その領収書に「賃借人が退去する際に返還する」旨が記載されているときでも、印紙税は課税される。
2.土地の譲渡契約(記載金額5,000万円)と建物の建築工事請負契約(記載金額3,000万円)を1通の契約書にそれぞれ区分して記載した場合、その契約書の記載金額は8,000万円である。
3.A社を売主、B社を買主、C社を仲介人とする土地の譲渡契約書(記載金額5,000万円)を3通作成し、それぞれが1通ずつ保存することとした場合、仲介人であるC社が保存する契約書には印紙税は課税されない。
4.土地の譲渡金額の変更契約書で、「既作成の譲渡契約書に記載の譲渡金額1億円を1億1,000万円に変更する」旨が記載されている場合、その契約書の記載金額は1億1,000万円である。
1 正:「敷金の領収書」は「金銭の受取書」であり課税文書となる(ひっかけ問題)
2 誤:記載金額が上回っている方を優先し、記載金額は5,000万円
3 誤:不動産譲渡における仲介人は契約当事者に該当するため、Cにも印紙税は課税される
4 誤:契約金額増加の変更契約書の記載金額はその増加金額(=1,000万円)
【宅建試験問題 平成4年ー問29】印紙税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。なお、以下の契約書はいずれも書面により作成されたものとする。

1.不動産の売買契約書を2通作成し、1通には正本、他の1通には副本と表示した場合、副本には、印紙税は課税されない。
2.「契約金額は別途不動産鑑定士の評価額とすることとし、手付金額として200万円を受領した」旨を記載した不動産売買契約書は、記載金額200万円の不動産の譲渡に関する契約書として、印紙税が課税される。
3.「地上権存続期間50年、地上権設定の対価1億円、地代年2,000万円とする」旨の地上権設定契約書は、記載金額1億円の地上権の設定に関する契約書として、印紙税が課税される。
4.不動産の売買契約書に印紙をはり付ける場合には、その文書と印紙の彩紋とにかけて判明に消印しなければならないが、その消印は必ず文書の作成者の印章又は署名により行わなければならない。
1 誤:副本や写しなども、契約の成立等を証明する目的で作成されたときは課税文書に該当する
2 誤:契約金額が未定な場合、記載金額のない契約書として課税される(=200円)
3 正:後日返還の予定がない金額(権利金・礼金・更新料)が記載金額となり、後日返還の予定がある金額(敷金・保証金)や地代は記載金額に含まれない
4 誤:消印は必要だが、必ずしも文書作成者の印章または署名による必要はない