宅建試験の法令制限解説:実はかんたん法令制限も残すところあとわずか、宅建試験ではあまり出題されない箇所を一気に見ていって終了となります。少し量が多くなりますので今回は「単体規定(+建築協定)」を、そして次回は「その他の法令制限」と2回に分けお伝えして終了したいと思います。
- 単体規定と建築協定の宅建解説
■単体規定
建築基準法でお話しても良かったのですが、出題可能性が低いためここで一気にご紹介します。単体規定は「一般規制」と呼ばれ、都市計画区域等の内外を問わず全国的に適用されます。以下、要点ですのでシンプルに頭の中に入れておいてください。
1.建築物の敷地
建築物の敷地は次の要件を満たさなくてはなりません。
・原則として、建築物の敷地はこれに接する道の境界線よりも高くなければならず、また地盤面はこれに接する周囲の土地より高くなければならない
・湿潤な土地やゴミその他これに類するもので埋め立てられた土地等に建築物を建築する場合には、衛生上または安全上必要な措置を講じなければならない
・建築物の敷地には、雨水および汚水を排出し、または処理するための適当な下水管、下水溝、ためます等これらに類する施設を設けなければならない
・建築物ががけ崩れ等による被害を受けるおそれのある場合には、擁壁の設置その他安全上適当な措置をしなければならない
2.建築物の構造
次の建築物は、安全上必要な構造方法に関して技術的基準に適合し、また一定の基準に従った構造計算によって確かめられる安全性を有していなければなりません。
・3階建て以上、延べ面積500㎡超、高さ13m超、軒の高さ9m超のいずれかを満たす木造建築物
・2階建て以上または延べ面積200㎡超の木造以外の建築物
・高さ13m超または軒の高さ9m超である主要構造部の一部を石造、れんが造などの構造とした建築物
また、以下の建築物は防火上の安全性の確保も必要となります。
・4階以上(地階を除く)、高さ16m超のいずれかを満たす木造建築物は、耐火構造としなければならない(床、屋根、階段以外の主要構造部に木材やプラスチック等の可燃材料を用いた場合、火災に耐えうる性能に関する技術的基準に適合するものとするか、通常火災終了時間が経過するまで建築物の倒壊及び延焼を防止できなければならない)
・延べ面積1,000㎡超の木造建築物等は、外壁および軒裏で延焼のおそれがある部分を防火構造とし、屋根の構造を一定の技術的基準に適合するものとしなければならない
・耐火建築物または準耐火建築物を除く延べ面積1,000㎡超の建築物は、防火上有効な構造の防火壁によって有効に区画し、かつ、各区画の床面積の合計を1,000㎡以内としなければならない
また、以下のような構造上の制限もあります。
・住宅の居室、学校の教室、病院の病室などで地階に設けるものは、壁や床の防湿の措置等について衛生上必要な技術的基準に適合するものとしなければならない
・居室の天井の高さは、2.1m以上としなければならない(一つの部屋で天井の高さの異なる部分がある場合、平均の高さが2.1m以上)
・長屋または共同住宅の各戸の界壁は、小屋裏または天井裏に達するものとし、その構造を遮音性能に関する技術的基準に適合するものとしなければならない(天井に遮音性能があれば小屋裏または天井裏に達する必要なし)
・住宅の居室、学校の教室、病院の病室などには、採光のための窓その他の開口部を設け、採光に有効な部分の面積に対して一定の割合以上のものとしなければならない(住宅や病室:7分の1以上、小中高校の教室:5分の1以上など。住宅の居室について50ルクス以上の照明設備の設置等の措置が講じられているときは「10分の1」以上までの範囲内とすることができるようになりました R5法改正) 最高いいな!(採光1/7)
・居室には換気のための窓その他の開口部を設け、換気に有効な部分の面積は、その居室の床面積に対して20分の1以上としなければならない 換気に十分!(換気1/20)
3.建築設備
以下、建築物の設備に関する規定です。
・下水道処理区域内においては、水洗便所以外の便所としてはならず、汚物を公共下水道以外に放流しようとする場合は、汚物処理性能に関する技術的基準に適合する屎尿浄化槽を設けなければならない
・水洗便所で換気設備を設けたもの以外は、外気に接する窓を設けなければならない
・給気口は、居室の天井の高さの2分の1以下の高さに設け、常時外気に開放された構造としなければならない
・排気口は、給気口より高い位置に設け、常時開放された構造とし、排気筒の立ち上がり部分に直結させなければならない
・給気口や排気口には、雨水や害虫、ホコリなど衛生上有害なものを防ぐ設備を設けなければならない
・高さ20m超の建築物には、原則として有効に避雷設備を設けなければならない
・高さ31m超の建築物には、原則として非常用の昇降機(=エレベーター)を設けなければならない
この20mと31mは割と出題される上にどっちがどっちだったか忘れてしまいます。低くても(20m)念のため避雷針は必要!高くても(31m)健康のため階段を使おう!と覚えておきましょう。「原則として」とあるのは、31m超部分が階段室等である場合は設置不要となるなど細かい例外となります。
・建築物の高さ31m以下の部分にある3階以上の階には、原則として非常口を設けなければならない
・2階以上の階にあるバルコニーその他これに類するものの周囲には、安全上必要な高さが1.1m以上の手すり壁、さくまたは金網を設けなければならない
・アスベスト(石綿)=全ての建築物で原則使用禁止
・クロルピリホス(シロアリ駆除剤)=居室を有する建築物には使用禁止
・ホルムアルデヒド(接着剤)=居室を有する建築物では使用面積制限あり
最後に、単体規定は地方公共団体の条例による制限の付加、市町村の条例による制限の緩和もすることができるという点を頭の片隅に入れておいてください。
■建築協定
こちらも建築基準法の補足です。出題可能性は低いですが念のため押さえておいてください。
建築物の利用増進、土地の環境改善を目的として自主的な申し合わせで成立するのが建築協定です。まず、建築協定を締結することができるのは、土地所有者または借地権者ということは押さえておいてください。そして以下、建築協定の成立、変更、廃止の要件です。
成立:市町村がその区域の一部について建築協定を締結することができる旨を定めた条例を制定し、関係者全員の合意(借地権の目的となっている場合は借地権者の合意で土地所有者の合意は不要)によって作成された建築協定書を代表者が特定行政庁に提出して認可を受ける(=条例で定めなければ締結できない点に注意)
変更:関係者全員の合意によって特定行政庁の認可を受ける
廃止:関係者過半数の合意によって特定行政庁の認可を受ける
締結→全員の合意、変更→全員の合意、廃止→過半数の合意です。
建築協定の効力は、認可の公告後に土地所有者や借地権者となった者に対しても及びます。建築物の借主も含まれますが、借地権の目的となっていた土地で合意しなかった土地所有者の土地承継人には効力は及びません。
また、借地権の目的となっている土地所有者は、特定行政庁の認可を受け、1人で当該土地の区域を協定区域として建築協定を定めることができます(認可の日から3年以内に協定区域内の土地に2人以上の土地所有者等が存することとなったときから通常の建築協定となる)。
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