不動産取得税の概要から特例を解説

宅建試験の税その他解説:「不動産取得税」について解説します。前ページでお伝えした「固定資産税」とどちらかが(または複合問題で)高確率で出題されます。勉強の要領も固定資産税と同じですね。固定資産税と区別し、よく比較しておいてください。

不動産取得税の宅建解説

不動産取得税とは

不動産取得税とは、土地や家屋の購入、家屋の建築など、不動産の所有権を取得した場合に課される税金です。


不動産取得税の概要

1.課税主体:取得した不動産が所在する都道府県

2.課税客体:不動産の取得

不動産:土地(田、畑、宅地、山林等)・家屋(住宅、店舗、工場、倉庫等)
取得 :売買・交換・贈与・新築・改築・増築・特定遺贈

ここではいくつか注意点があります。取得は有償無償を問いません登記の有無も関係なく、現実に所有権を取得したと認められれば課税されます。改築については、家屋の価値が増加した場合に限り増加分について課税されます。この3つは本試験で出題されてもおかしくありませんので注意しておいてください。

「相続」「合併」「包括遺贈」は取得に含まれないという点にも注意です。相続による不動産の取得や法人の合併による不動産の取得等は非課税です。包括遺贈とは「財産の3割を○○に遺贈する」といった漠然とした遺贈で、「××の土地を」といった具体的に指定する特定遺贈が課税客体となる点と比較しておいてください。

また、共有物分割による不動産の取得については、当該不動産における分割前の持分割合を超えなければ不動産取得税は課されず国や地方公共団体等が不動産を取得した場合も不動産取得税は課税されません。

3.納税義務者:不動産取得者(個人、法人を問わない)

4.課税標準:固定資産課税台帳に登録されている価格(=固定資産税評価額

土地:特例あり(下で詳しく)
家屋:特例あり(下で詳しく)

固定資産税評価額が存在しない新築・増築・改築等は知事が決定する価格が課税標準となります。実際の取引価格ではありませんので注意してください。

5.税率:4%(本則)

不動産取得税の標準税率は4%ですが、皆さんが絶対に覚えておくべきは「3%」です。平成18年4月1日から取得した土地や住宅用家屋については3%が標準税率となるという特例が続いているためです。住宅用家屋以外の家屋(店舗や事務所等)については4%が標準税率となります。皆さんはこの3%と4%を覚えておいてください。尚、あくまでも「標準税率」であり制限税率ではないので4%を超える税率が課されることもあります。

6.納付税額:特例を下で

7.税額控除:特例を下で

8.納付方法:普通徴収

9.納付期日:納税通知書に記載してある期限(納期限前10日までに納税者に交付)

10.免税点:土地10万円建築にかかる家屋23万円その他の家屋12万円

上記金額未満であれば不動産取得税は課されません。建築にかかる家屋とは新築や改築等、その他の家屋とは中古住宅の購入等をいいます。土地は「土地」で住宅用に限りませんので、さり気なく注意です。課税標準となる金額を基準に判断され、面積も関係ありません


不動産取得税の特例

住宅を新築した場合や新築住宅を取得した場合、または既存住宅を取得した場合、以下の要件を満たすと不動産取得税の負担が軽減されます。=課税標準の特例

1.住宅の要件

新築住宅:床面積50㎡(一戸建て以外の賃貸住宅は40㎡)以上240㎡以下
既存住宅:床面積50㎡以上240㎡以下+耐震基準に適合

2.取得者

新築住宅:個人・法人を問わない
既存住宅:個人のみ

3.用途

新築住宅:制限なし(賃貸用等でも可)
既存住宅:取得した個人の居住用のみ

4.価格

新築住宅:制限なし
既存住宅:制限なし

5.控除額

新築住宅:1,200万円(認定長期優良住宅:1,300万円)
既存住宅:新築された時期により100万~1,200万円と異なる(平成9年4月1日以降の新築は1,200万円なので、1,200万円だけ覚えておけば大丈夫です)

登録価格からこの控除額を引いたものが課税標準となります。つまり、上記要件を満たす新築住宅の税額は、(建物の価格-1,200万円)×3%、既存住宅の税額は、(建物の価格-100万~1,200万円)×3%となります。

また敷地についても特例があり、平成18年1月1日から取得した宅地評価土地の課税標準は、固定資産課税台帳に登録されている価格の2分の1となります。宅地評価土地とは、宅地および宅地比準土地をいい、宅地比準土地とは宅地以外の土地で宅地に比準して価格が決定された土地をいいます。

①固定資産評価額1,000万円の新築マンション(150㎡)を購入した場合

固定資産税 :1,000万円×1.4%=14万円(5年間1/2となる特例あり)
不動産取得税:床面積50㎡以上240㎡以下なので1,200万円が控除され0円
②固定資産評価額2,000万円の築20年マンション(200㎡)を令和元年に個人の居住用として購入した場合

固定資産税 :2,000万円×1.4%=28万円
不動産取得税:個人の居住用で耐震基準に適合し、床面積50㎡以上240㎡以下なので1,200万円が控除され800万円×3%=24万円

そして更に、45,000円または建物の床面積の2倍まで(上限200㎡)の土地に相当する税額のどちらか高い方が控除される特例もあります。つまり宅地評価土地の税額は、土地の価格×1/2×3%-税額控除(※)となります。
※45,000円or1㎡当たりの課税標準額×床面積の2倍(上限200㎡)×3%

実際に計算させる問題が出る可能性は低いと思いますが、この1,200万円、×1/2、2倍、200㎡という数字はなるべく覚えておいてください!


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固定資産税 所得税
  固定資産税 不動産取得税
課税主体 固定資産が所在する市町村 取得した不動産が所在する都道府県
課税客体 1月1日現在の固定資産(土地・家屋・償却資産) 不動産の取得(相続・合併・包括遺贈は取得に含まれない)
納税義務者 原則として固定資産課税台帳に所有者として登録されている者 不動産取得者
課税標準 固定資産課税台帳登録価格(3年に一度見直し) 同左
標準税率 1.4%(自治体により異なる税率も可) 土地や住宅用家屋:3%(店舗や事務所等は4%)
納付方法 普通徴収(都市計画税と併せて徴収可) 普通徴収
納付期日 4・7・12・2月中に市町村の条例で定める 納税通知書記載の期限(納期限前10日までに交付)
免税点 課税標準額が土地30万円未満、家屋20万円未満 課税標準額が土地10万円未満、
建物=建築による取得は23万円未満、その他12万円未満
宅地の特例 200㎡以下部分=課税標準×1/6
200㎡超部分 =課税標準×1/3
固定資産課税台帳登録価格の2分の1が控除
住宅の特例 床面積50~280㎡の新築住宅(居住割合2分の1以上)
→3年間、2分の1に減額(120㎡までの住宅部分に限る)
新築マンションは40~280㎡で5年間
床面積50~240㎡の新築住宅→1200万円が控除
(一戸建て以外の賃貸住宅は40㎡以上240㎡以下)
【宅建試験問題 平成8年問30 改題】不動産取得税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.宅地の取得に係る不動産取得税の課税標準は、当該取得が本年中に行われた場合には、当該宅地の価格の1/2の額とされる。
2.不動産取得税の標準税率は5/100であるが、本年4月に住宅を取得した場合の不動産取得税の標準税率は3/100である。
3.不動産取得税は、相続、贈与、交換及び法人の合併により不動産を取得した場合には課せられない。
4.不動産取得税の免税点は、土地の取得にあっては30万円、家屋の取得のうち建築に係るものにあっては一戸につき23万円、その他の家屋の取得にあっては一戸につき12万円である。
1 正:令和の今でも変わらず、宅地については課税標準を1/2にする軽減措置がとられています
2 誤:不動産取得税の標準税率は本来4%で、軽減措置により土地や住宅を取得した場合の不動産取得税の標準税率は3%
3 誤:相続や合併で不動産取得税は課されないが、贈与や交換は課税対象
4 誤:不動産取得税の免税点は、土地10万円、建築に係る家屋23万円、その他の家屋12万円
【宅建試験問題 平成12年問28 改題】不動産取得税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.床面積が33㎡である新築された住宅で、まだ人の居住の用に供されたことのないものを、平成18年年4月に取得した場合、当該取得に係る不動産取得税の課税標準の算定については、当該住宅の価格から1,200万円が控除される。
2.現在保有している家屋を解体し、これを材料として他の場所に同一の構造で再建した場合は、常に不動産の取得はなかったものとみなされる。
3.宅地を平成18年4月に取得した場合、当該取得に係る不動産取得税の課税標準は、当該宅地価格の2分の1の額とされる。
4.委託者のみが信託財産の元本の受益者である信託において、受託者から委託者に信託財産を移す場合の不動産の取得については、不動産取得税が課税される。
1 誤:新築住宅取得にかかる課税標準の特例は床面積50~240㎡であることが必要
2 誤:再建築移築は新築にあたる
3 正:平成18年1月1日から取得した宅地の課税標準は価格の2分の1
4 誤:信託終了時の不動産の取得は、受益者が委託者の場合は非課税となる
【宅建試験問題 平成13年ー問28 改題】不動産取得税に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.不動産取得税は、不動産の取得に対して、取得者の住所地の都道府県が課する税であるが、その徴収は普通徴収の方式がとられている。
2.平成18年4月に中古住宅とその敷地を取得した場合、当該敷地の取得に係る不動産取得税の税額から2分の1に相当する額が減額される。
3.土地に定着した工作物又は立木はそれ自体では不動産取得税の課税対象とはならないが、土地と同時に取引される場合には、不動産取得税の課税対象となる。
4.家屋の改築により家屋の取得とみなされた場合、当該改築により増加した価格を課税標準として不動産取得税が課税される。
1 誤:取得者の住所地ではなく当該不動産所在の都道府県が課する(普通徴収は正しい)
2 誤:税額が2分の1ではなく課税標準が価格の2分の1となる
3 誤:土地と同時に取引されても工作物や立木は不動産取得税の対象とはならない
4 正:改築によって増加した価値の分が、不動産取得税の課税対象となる