宅建試験の税その他解説:今回より税法を具体的に掘り下げていきます。まずは「固定資産税」について解説します。次ページの「不動産取得税」とどちらかが(または複合問題で)出題されると考えておいてください。固定資産税と不動産取得税=地方税、ということは既にお話いたしましたね。地方税はとても簡単です。得点源ですので確実にマスターしておいてください。
- 固定資産税の宅建解説
■固定資産税とは
固定資産税とは、固定資産(土地、家屋、償却資産)を所有していることに対して課される税金で、取得の翌年度から、所有し続ける限り毎年課税される税金です。
償却資産:土地及び家屋以外の事業用資産で、減価償却額または減価償却費が法人税法または所得税法の所得の計算上、損金または必要な経費に算入されるもの=船舶や航空機など(自動車税の課税対象となる自動車や牛、馬などは償却資産の対象となりません)
■固定資産税の概要
1.課税主体:土地や家屋などの固定資産が所在する市町村
例外として、特別区では都となります。
2.課税客体:固定資産(土地、家屋、償却資産)
例外として、国・地方公共団体等に対して固定資産税は課税されません。未登記の土地や建物でも、土地補充課税台帳や家屋補充課税台帳に登録されていれば固定資産税の課税対象となります。
3.納税義務者:賦課期日(1月1日)における固定資産の「所有者(※)」
つまり、令和元年1月5日に新築された家屋に令和元年度分の固定資産税は課されず、課税が始まるのは令和2年度からとなります。売買などで年の途中に所有者が変わった場合でも、その年度分の固定資産税は1月1日現在での所有者(=売主)に対して課されるという点に注意(日割り計算等は行われない)。
また、質権または100年より永い存続期間の定めのある地上権の目的である土地については、その土地を実質的に支配しているその質権者または地上権者が納税義務者となります。
※所有者:固定資産課税台帳に所有者として登録されている者(=名義上の所有者)。所有者が賦課期日前に死亡していた場合は、賦課期日においてその土地等を現に所有している者が所有者となる(災害等によって所有者の所在が不明である場合も、あらかじめ通知をすることで、その使用者を所有者とみなします)。原則 賦課期日(1月1日)現在に固定資産課税台帳に所有者として登録されている者 例外 納税義務者が死亡している場合 :賦課期日において現に所有している者
災害等で所有者が所在不明な場合:実際に使用している者(通知必要)
区分所有建物の土地に対して課される固定資産税については、各区分所有者が持分の割合によって按分した額を納税する義務を負います。連帯して納税義務を負うというひっかけに注意してください(単に土地等を共有している場合は連帯して納付することと区別)。
4.課税標準:賦課期日現在の固定資産課税台帳に登録されている価格
この、固定資産課税台帳に登録されている価格を「固定資産税評価額」といいます。この価格は3年に一度の基準年度において評価替えが行われ、その評価替え後の価格が3年間据え置かれます(地目の変換や家屋の改築・損壊等があった場合は見直す)。
土地や家屋の評価は、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき行われ、その評価を基に市町村長が毎年3月31日までに価格の決定を行い、固定資産課税台帳に登録し、毎年4月1日に公示することになります。(=土地や家屋の評価自体は毎年行われます)
納税者、借地人、借家人等は、いつでも固定資産課税台帳を閲覧することができ、その登録事項の証明書の交付を求めることもできます。また、納税者は、固定資産課税台帳に登録された価格について不服がある場合、公示日(4月1日)から納税通知書の交付を受けた日後3ヶ月を経過するまでの間に、書面によって固定資産評価審査委員会に審査の申し出をすることができます。固定資産課税台帳 土地課税台帳
家屋課税台帳納税義務者・
借地人・借家人自己の関連部分 一年中 閲覧可 縦覧帳簿 土地価格等縦覧帳簿
家屋価格等縦覧帳簿納税義務者 全ての土地や家屋 4/1~4/20 or
第一期納期限の遅い方以後縦覧可
5.税率:1.4%(市町村は、財政上その他の必要があると認める場合に標準税率を超える税率を定めることができ、その場合に税率の上限はありません)
6.納付税額:特例を下で
7.税額控除:特例を下で
8.納付方法:普通徴収
普通徴収=役所から送られてくる納税通知書で納税者が直接納付すること
特別徴収=会社が給与から天引きして納付すること
9.納付期日:4月、7月、12月、2月中において各市町村の条例で定める
納付期日は納税通知書に記載されていて、納税通知書は納期限前10日までに納税者に交付されます。また、特別な事情がある場合は、これと異なる納期を定めることも可能です。
10.免税点:課税標準が一定金額未満の場合、固定資産税は原則として課されない
土地 :30万円未満
家屋 :20万円未満
償却資産:150万円未満
■固定資産税の特例
1.住宅用地の特例:住宅用地を保有している場合、固定資産税の負担が軽減される=課税標準の特例
小規模住宅用地(住宅用地面積200㎡以下):登録価格×6分の1
一般住宅用地(住宅用地面積200㎡超部分):登録価格×3分の1
住宅用地が300㎡である場合、200㎡を小規模住宅用地、100㎡を一般住宅用地として課税標準の軽減を行います。
難問対策:土地に係る固定資産税の負担調整措置について、「商業地等」の課税標準額の上昇幅が評価額5%から2.5%に変更されました(R4法改正)。
2.新築住宅の特例:新築後一定期間内、固定資産税の負担が軽減される=税額の特例
中高層耐火住宅:新築初年度から5年度の間、床面積120㎡までの税額が2分の1減額
上記以外 :新築初年度から3年度の間、床面積120㎡までの税額が2分の1減額
この特例対象となる新築住宅の要件として、床面積が50㎡以上280㎡以下(賃貸マンションやアパートは40㎡以上280㎡以下)であることが必要ですので覚えておいてください。
住宅用地(小規模) 課税標準額が1/6 住宅用地(一般) 課税標準額が1/3 新築(マンション) 5年間税額が1/2 新築(戸建住宅) 3年間税額が1/2
3.住宅バリアフリー改修促進税制
65歳以上の者、要介護または要支援の認定を受けている者、障害者である者が居住する住宅(賃貸住宅を除く)についてバリアフリー改修工事を行い、当該改修工事に要した費用から補助金等をもって充てる部分を除いた費用が50万円を超え、改修後の住宅床面積が50㎡以上である場合、当該家屋にかかる翌年度分の固定資産税額(100㎡相当分まで)を3分の1減額する。
次ページの不動産取得税との比較表もご活用ください!
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