宅建試験の民法解説:改正民法で大きく変わる「消費貸借と使用貸借」について見ていきます。
- 消費貸借と使用貸借の宅建解説
これまではマイナー分野でしたが、改正民法で大きく変わりました。賃貸借・消費貸借・使用貸借の違いは出題可能性アリかもしれません。
目的物の所有権が借主に移転するか?ーYES→消費貸借
|
NO
↓
借主が賃料を支払うか?ーYES→賃貸借
|
NO
↓
使用貸借
より詳細は改正民法一覧の『消費貸借と使用貸借』にまとめてありますので、そちらもご参照ください。
■消費貸借の成立
改正民法により、諾成契約でも消費貸借契約が成立することとされました。要物契約から諾成契約になったのではなく、原則は要物契約のまま、「諾成契約も認められる」ということです。
そして諾成契約により消費貸借を成立させるには、書面が必要とされています。
■使用貸借の成立
従来の使用貸借は要物契約とされていましたが、改正民法により諾成契約となりました。
消費貸借と異なり、使用貸借は要物契約から「諾成契約に変更」されています。しっかり区別しておきましょう。
■消費貸借の利息
貸主は、特約がなければ借主に対して利息を請求することができません。原則は無利息ということです。特約がある場合、貸主は、借主が目的物を受け取った日以降の利息を請求することができます。
尚、使用貸借は完全に「無償」となります。
■消費貸借の返還時期
・返還時期を定めていなかった場合
貸主:相当期間を定めて返還の催告をすることができる
借主:いつでも返還することができる
・返還時期を定めていた場合
貸主:その時期による
借主:いつでも返還することができる
「返還時期を定めていても借主はいつでも返還できる」という点は出題ポイントですね。
返還時期の定めがあるにも関わらず、その時期が到来する前に借主が返還したことにより貸主が損害を受けた場合、貸主は、その賠償を請求することができます。
早めに返還されたことによる損害とは、3年の約束で現金を貸して利息を期待していたのに、早めに返還されたことで受け取ることのできる利息が少なくなった場合などですね。
■使用貸借の解除
使用貸借が諾成契約となり、口頭または書面による合意によって成立することで、口頭か書面かで結論が異なるケースが出てきます。ここは重要です。
・借用物の引渡し前
口頭による合意:貸主・借主は自由に解除できる
書面による合意:貸主から一方的に解除できない(借主は自由に解除可)
・引渡し後の貸主からの解除(借主は自由に解除可)
期間の定めがない場合:目的に従い借主が使用収益をするのに足りる期間を経過したときに解除できる
期間も目的も定めていない場合:いつでも解除できる
・使用貸借の終了事由
1.期間を定めていた場合(期間満了で終了)
2.期間は定めず目的を定めていた場合(使用収益に足りる期間を経過で終了)
3.借主の死亡(貸主が死亡した場合は、貸主の地位が相続される)
■使用貸借における損害
契約の本旨に反する使用収益により損害が生じた場合、貸主は、目的物の返還を受けたときから1年以内に損害賠償請求を行う必要があります。この1年間は、損害賠償請求権について時効の完成も猶予されます。
また借主が支出した費用の償還請求も、貸主が返還を受けたときから1年以内に請求する必要がある点も頭の片隅に入れておきましょう。
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