宅建試験の民法解説:「不法行為」の難問対策。一時期出題は減っていましたが、最近また流行り傾向ですので要注意です。使用者責任や工作物責任など覚えやすい問題ばかりですので、数少ないパターンを掴むだけで簡単に正解できます。宅建試験の得点源です。
- 不法行為の難問対策
■不法行為とは
責任能力のある者が、
故意または過失によって、
他人の権利もしくは利益を違法に侵害し、
その行為によって、
損害を発生させたこと。
ある者が他人の権利や利益を侵害し、その他人に損害が発生した場合に損害を賠償する。簡単に言いますとこれが不法行為の流れです。
権利能力…出生から(胎児の一部例外あり)
意思能力…6~7才程度の知能
責任能力…11~12才程度の知能
行為能力…18才から(成年擬制の例外あり)
では、責任能力のある17才の高校生がバイクで人を跳ねてしまった場合、被害者はお金を持っていない高校生に損害賠償請求をするのでしょうか?一般的には未成年者の監督義務者である親に対して責任を追及するはずです。
このように、使用者責任や土地工作物の占有者(所有者)責任など、特殊な不法行為で責任は誰にあるのか、誰が誰に求償できるのかが最近の出題傾向となっていますので、しっかり押さえておきましょう。
■不法行為による損害賠償時期
不法行為による損害賠償債務が履行遅滞になる時期:不法行為発生時から
不法行為による損害賠償請求権の消滅時効期間:被害者またはその法定代理人が損害および加害者を知ったときから3年(人の生命または身体を害する不法行為は5年)、または不法行為発生時から20年(除斥期間ではなく消滅時効の対象となりました)
■損害賠償の方法
原則:金銭賠償(慰謝料)
例外:名誉棄損における原状回復(謝罪広告や侵害行為の差止めなど)
損害賠償については、胎児も生まれたものとみなされます。
被害者が死亡したとき、当然に相続人は慰謝料請求権を相続します(判例)。
■使用者責任
A社(使用者)は、従業者B(被用者)が事業の執行について第三者Cに加えた損害を賠償する責任を負います。ただし、AがBの選任およびその事業の監督について相当の注意をしたとき、または相当の注意をしても損害が生ずべきであったときはこの限りではなく責任を免れます(立証責任は使用者)。使用者責任が発生するには、雇用関係の有無や有償無償など使用者と被用者の内部関係や主観的意図にとらわれず、客観的に判断されます。
被害者Cは、AB両者に損害賠償を全額請求することができます。
Aが賠償をした場合、Bに対して信義則上相当と認められる額を求償することができます。
Bが賠償をした場合、Aに対して損害の公平な分担という見地から相当と認められる額についてのみ求償することができます。
悪いのはあくまでも被用者Bです。賠償を行った使用者は被用者に対して当然に信義則上相当と認められる額を求償することができますが、被用者が使用者に対して求償できるのは公平な分担が認められる場合のみとなります。
またAタクシー会社の運転手Bが乗客を乗せて走行中、C運転の乗用車と衝突して乗客を負傷させた場合(BC両者に過失あり)、乗客に賠償をしたA及びBはCに対して当然に求償することができます。もちろんCが賠償した場合も、ABに対して求償可能となります。
■工作物責任
AがBに自己の所有する建物を賃貸し(建設会社Cが屋根の工事をしていた)、その屋根瓦が落下して通行人が怪我をした場合、損害賠償責任を負うのは占有者Bです。しかし、Cが損害防止の注意をしていた場合、損害賠償責任を負うのは所有者Aです。Bは必要な注意をしていれば責任を負いませんが、Aは無過失責任です。
責任負担者・・1.占有者、2.占有者が免責事由を証明できたら所有者
(=占有者は過失責任で、所有者は無過失責任となります)
また、工作物の以前の占有者や所有者、請負人Cなどに欠陥を生じさせた責任がある場合、賠償をしたAまたはBは、その者に求償することができます。
■共同不法行為
数人が共同の不法行為により他人に損害を与えた場合、連帯して被害者に損害賠償の責任を負います。AがBCから100万円の損害を受けた場合、AはBまたはCどちらにでも100万円全額の請求をすることができ、Bが全額を払った場合、BはCに対してCの負担分を求償することができます。
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