債務不履行の原則と損害賠償請求の改正

債務不履行の原則の改正

今回は『債務不履行の原則』に関する改正点を見ていきます。

債務不履行の効果として「追完請求」「代金減額請求」「解除」「損害賠償請求」が認められますが、追完請求・代金減額請求は「売買」で、解除は「契約の成立から解除」でお伝えしますので、まずは債務不履行の原則損害賠償請求に関する改正規定を見ていきましょう。


履行期と履行遅滞

債務の履行について不確定期限がある場合、債務者は、期限の到来を知ったときから遅滞の責任を負うとされていましたが、これが改正民法では、「期限到来後に履行の請求を受けたとき、または期限の到来を知ったときのいずれか早い方」から遅滞責任を負うとしています。

確定期限あるときは期限到来時から、期限を定めなかったときは履行の請求時から遅滞責任を負う点は変わっていません。


履行不能と履行請求

債務の発生原因や取引上の社会通念に照らして債務の履行が不能の場合、債権者は履行請求ができません

判例で当然のように認められていたことの明文化ですが、原始的不能は損害賠償請求が可なこと、不能原因が債務者にある場合に債務者は損害賠償責任を負うこととしっかり区別しておいてください。


受領遅滞の注意義務

債務者が債務を履行しない履行遅滞とは逆に、債務者が履行をしているのに債権者が履行を拒み、または履行を受けることができない状態を受領遅滞と言います。

債務の目的が特定物の引渡しである場合、その特定物を債務者は善管注意義務をもって保存する必要がありますが、債権者に受領遅滞がある場合、履行の提供時から引渡しをするまで、自己の財産に対するのと同一の注意義務で足りることとなりました。

また、受領遅滞により履行費用が増加した場合、その増加額は債権者の負担となることも新たに規定されていますので頭の片隅に入れておいてください。


履行不能と帰責事由

債務不履行責任とは、債務者に帰責事由があり履行できない場合に債務者が負担する責任を言います。では、特殊な状況下で債務者に帰責事由がない場合はどうなるのでしょうか?

履行遅滞中に当事者に帰責事由なく履行不能となった場合:債務者の責任とみなす
受領遅滞中に当事者に帰責事由なく履行不能となった場合:債権者の責任とみなす

ただし2つ目は、債務者が「履行の提供」をしていることが要件となります。


債務不履行の損害賠償

債務不履行には「履行遅滞」「履行不能」「不完全履行」がありますが、債権者が損害賠償請求をするには、従来は履行不能のみ債務者の帰責事由が必要とされていました。これが改正民法により、3つとも債務者の帰責事由が必要となっています。

帰責事由の主張立証責任は、債務者にあります。← 地味に重要です


填補(てんぽ)賠償

履行不能などにより債務者が本来の債務を履行できない場合、債権者は、本来の債務の履行に代わる損害賠償の請求をすることができます。以下、填補賠償ができるケースです。

1.履行不能
2.債務者がその債務の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
3.契約の解除または債務不履行による契約解除権が発生したとき


特別の事情による損害賠償の範囲

特別の事情によって生じた損害について、従来は当事者がその事情を予見し、または予見することができたときは、債権者は損害賠償請求ができるとされていましたが、改正民法では、当事者が「予見すべき」であったときに損害賠償請求ができるとしています。

主張立証責任は債務者にありますので、この場合の当事者とは債務者だけを指すと考えて問題ありません。


金銭債務の特則

金銭の給付を目的とする債務不履行について、その損害賠償額は、債務者が遅滞責任を負った最初の時点における法定利率によって定める。前回お伝えしました通り、法定利率が5%ではなく変動制となりましたので、このような言い回しとなっています。よって、一律5%と出題されたら誤りとなります。

尚、法定利率を超える約定利率がある場合は、約定利率に従っても構いません


損害賠償額の予定

当事者は、あらかじめ債務不履行による損害賠償額を定めておくことができ、従来は、裁判所はこの額を増減することができないとされていました。しかし改正民法により裁判所による増減が可能となりました。真逆です。注意してください。


以上、小粒な改正が多い債務不履行の原則でした。最低限、「不確定期限ある債務の遅滞時期」「受領遅滞時の特定物保存は自己と同一の注意義務」「債務不履行責任3種は債務者の帰責性が必要で主張立証責任は債務者」「裁判所が損害賠償の予定額を増減できる」あたりは確実に押さえておきましょう!


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