債権者代位権の民法大改正

債権者代位権の改正

今回は『債権者代位権』に関する改正点を見ていきます。

たまーに出題され、出題されたときは難問扱いだった債権者代位権ですが、大きな改正がありましたのでご紹介しておきます。

他に重要改正が目白押しの今年の民法で債権者代位権が出題されるか・・と聞かれるとかなり疑問符が付きます。重要改正点の出題が一通り落ち着いた数年後にさり気なく出題される可能性の方が高いと思いますが、裏をかいて難問枠で出題される可能性も0ではありませんので、余裕がある方は押さえておいてください。

覚えやすい重要ポイントのみご紹介しておきます。
これを押さえておくだけでも得点できる確率がグンと上がると思います。

ちなみに「ここで債権者代位権?」と思われた方も多いと思いますが、「条文順」にお送りしています。

では、順番に見ていきましょう!


債権者代位権とは

債権者代位権とは、債権者が、債務者の持つ権利を債務者に代わって行使する権利です。債権を回収しやすくするための手段の一つですね。第三者が弁済をして債権者に代位する代位弁済に対して、債権者が債務者の権利を債務者自身に代わり行使します。

第三者が弁済をした場合の「任意代位」「法定代位」(←改正民法でこの概念がなくなっています)は、「弁済」の中で「弁済による代位」としてお送りします。債権者代位権とは別物ですので区別しておいてください。火災保険金などに求償できる代位求償権も別物です。


債権者代位権の原則と要件

債権者は、自己の債権を保全するため必要があるとき(下記要件)は、債務者に属する権利(=被代位権利)を行使することができます。その債権が強制執行により実現できないものであるときは、被代位権利を行使することができない点に注意してください。

また従来は、「債権者はその債権の期限が到来しない間は、裁判上の代位によらなければ、債権者代位権を行使することができない」とされていました(=裁判上なら代位可能)が、改正民法により期限到来前は裁判上の代位も不可となりました。ここは激アツです。ただし、例外として保存行為は代位可能な点に注意してください。

これが債権者代位権として定められている基本原則です。債権者代位権とは債権者が債務者の財産に干渉することで財産を保全する権利です。よって、むやみに認めるわけにはいかず、債務者に十分な財産がある場合など必要性が低い場合には認める必要もありません。

以下、債権者代位権を行使するための要件です。

債務者が無資力であり、債権を自ら行使していないこと =「必要があるとき」
被保全債権が金銭債権であり、履行期が到来していること
・代位行使される権利が一身専属の権利(認知や年金の受取りなど)でないこと
・代位行使される権利が差押えを禁じられた権利でないこと


債権者代位権の改正注意点をまとめて

出題されてもおかしくない改正箇所をインプリ風にまとめて見ていきます。

・債権者は、被代位権利の目的が可分である場合、自己の債権額の限度においてのみ被代位権利を行使することができる!

・債権者は、被代位権利の目的が金銭の支払または動産の引渡しである場合、相手方に対し、その支払または引渡しを自己にするよう求めることができる!(→ 直接請求により被代位権利は消滅)

・債権者が被代位権利を行使した場合、相手方は、債務者に対して主張することができる抗弁をもって債権者に対抗することができる

↑債権者Aが債務者Bに10万円の債権を持ち、BがC(=相手方)に何らかの債権を持っている場合の話です。BのCに対する債権が売買代金支払請求権だったとして、Cは、「Bが目的物を引渡すまで代金は払わない」という同時履行の抗弁権をAに対しても主張することができるということです。

・債権者が被代位権利を行使した場合でも、債務者は、自ら取立て等の行為をすることができる!(従来は債権者が被代位権利を行使すると債務者はその権利行使ができなくなりました。真逆となったので注意!)

・被代位権利の行使にかかる訴えを提起した場合、債権者は債務者に対し、遅滞なく訴訟告知をしなければならない

・登記をしなければ権利の得喪や変更を第三者に対抗することができない財産を譲り受けた者は、所有権移転登記請求権についても代位行使をすることができる


以上、債権者代位権の出題ポイントでした。

今週は「債権者代位権は必要があるとき(債務者が無資力であり、債権を自ら行使していない)に行使できる」「債権が強制執行により実現できないものであるときは行使不可」「期限到来前は裁判上の代位も不可」「目的物が可分である場合の被代位権利の範囲は自己の債権額の限度」「金銭の支払または動産の引渡しなら直接請求可能」「訴えを提起したら遅滞なく訴訟告知が必要」・・このあたりは押さえておきたいですね。


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債務不履行の改正民法 詐害行為取消権の改正民法
【宅建試験問題 平成22年ー問7】民法第423条第1項は、「債権者は、自己の債権を保全するため必要があるときは、債務者に属する権利(以下「被代位権利」という。)を行使することができる。ただし、債務者の一身に専属する権利及び差押えを禁じられた権利は、この限りでない。」と定めている。 これに関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.債務者が既に自ら権利を行使しているときでも、債権者は、自己の債権を保全するため、民法第423条に基づく債権者代位権を行使することができる場合がある。
2.未登記建物の買主は、売主に対する建物の移転登記請求権を保全するため、売主に代位して、当該建物の所有権保存登記手続を行うことができる場合がある。
3.建物の賃借人は、賃貸人(建物所有者)に対し使用収益を求める債権を保全するため、賃貸人に代位して、当該建物の不法占有者に対し当該建物を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
4.抵当権者は、抵当不動産の所有者に対し当該不動産を適切に維持又は保存することを求める請求権を保全するため、その所有者の妨害排除請求権を代位行使して、当該不動産の不法占有者に対しその不動産を直接自己に明け渡すよう請求できる場合がある。
1 誤:債務者が既に自ら権利を行使している場合、債権者は債権者代位権を行使することができない
234 正:問題文の通り頭の片隅に入れ、深追いは禁物
【宅建試験問題 平成7年ー問5】債権者代位権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.Aが妻Bに不動産を贈与した場合、Aの債権者Cは、Aの夫婦間の契約取消権を代位行使することができる。
2.DのEに対する債権の弁済期が到来していない場合、自己の債権を保全するため、Dは、保存行為としてであれば、EのFに対する債権を行使することができる。
3.土地がGからH、HからIへと譲渡された場合において、登記がなおGにあるときは、Iは、HのGに対する登記請求権を代位行使することができる。
4.Jの所有地をKが賃借している場合において、Lが不法占拠したときは、Kは、Jの所有権に基づく妨害排除請求権を代位行使することができる。
1 誤:一身専属権は、債権者代位権の対象とならない
2 正:債権者代位権の行使は原則として債権の弁済期が到来していることが必要だが、例外として保存行為は弁済期前でも可能
34 正:その通り