契約全般の民法大改正

宅建改正民法!契約の成立から解除

宅建試験に出る「契約の成立・効力・地位の移転・解除と、契約の流れに関連する改正民法解説

とても改正点は多いですが、重要なものは少ないです。宅建試験で出題されそうなものだけを厳選してご紹介しますので、全体的にふわっと覚えておけば十分でしょう(重要と書いているところはしっかりと覚えておいてください)。


契約自由の原則

契約自由の原則として、

1.契約締結の自由
2.契約内容決定の事由
3.相手方選択の自由
4.契約方式の自由

が定められました。

契約自由の原則は、暗黙の了解として、または学説により争いなく認められていましたが、実は民法にその規定はありませんでした。民法の大原則として、宅建試験でも問1でポンと出題されるかもしれませんね(ちょうど4つありますし)。

1.何人も、法令に特別の定めがある場合を除き、契約するかどうかを自由に決定することができる
2.契約当事者は、法令の制限内において、契約内容を自由に決定することができる
3.契約は、申込みに対して相手方が承諾したときに成立する
4.契約成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない

14の法令の特別な定めとは、水道法など特殊なものです。宅建業法も含まれます。
2の法令の制限内とは、公序良俗違反などを想定しています。


承諾期間の定めない申込み

承諾期間を定めないでした申込みは、申込者が承諾の通知を受けるのに相当な期間を経過するまでは撤回することができません(申込者が撤回する権利を留保していたときを除く)。撤回権の留保=撤回できる旨の但し書きなど

突然の撤回によって被申込者(申込みを受けた者)が不利益を受けないようにするためですね。ただし、対話者への申込みは、対話が継続している間はいつでも撤回することができます。そして対話が継続している間に申込者が承諾の通知を受けなかった場合(=被申込者が承諾をしなかったとき)、対話終了とともに申込みが失効することとなります。

対話とは、まさに話し合い中ということです。対話終了後も申込みの効力を失わないと申込者が表示した場合は、例外としてその効力は失われません

新規定なので未知数ですが、宅建業務にも関連し、十分に宅建試験で出題される可能性がある規定だと思います。「対話者」という新しい概念に注意しておいてください。


申込者の死亡等

申込者が申込みの通知を発した後に、

死亡した場合
意思能力を有しない状況になった場合
行為能力の制限を受けた場合
申込者がある事実が生じたとすれば申込みは効力を有しない旨の意思表示をしていた場合

に、相手方が承諾通知をするまでにその事実が生じたことを知ったときは、その申込みは効力を生じません。どんな場合に、いつまでに知ったか、ここも問題にしやすい新規定ですね。宅建試験での出題可能性ありです。


契約の成立時期

従来の民法の原則では「承諾の通知を発したとき」を契約の成立時期としていましたが、通信手段が発達し、迅速に意思が届く現代では時代錯誤の規定となっていました。そこで改正民法では、承諾の意思表示が申込者に到達したときに生じることとなりました。

以前にお伝えした「隔地者に限らず相手方に到達したときから効力を生じる」という意思表示の原則が、契約の承諾の意思表示にも適用されるということです。

申込者の意思表示または取引上の慣習により承諾の通知を必要としない場合、契約は、承諾の意思表示と認めるべき事実があったときに成立します。

申込者が申込発信後に申込みを撤回した場合、申込者による撤回通知と、相手方による承諾通知で、到達時期の先後により契約が成立するかどうか決せられます(=撤回通知の到達が承諾通知の到達より遅れた場合、契約は成立する)。


懸賞広告

かなり出題可能性は低いと思いますが、新規定な上に簡単なので載せておきます。

懸賞広告者は、期間を定めて行った懸賞広告は撤回することができません出題されるとしたらこの条文通りの直球よりも裏読みでしょうか。期間を定めていない懸賞広告は、その指定した行為を完了する者がいない間は撤回することができます

期間を定めて行った懸賞広告でも撤回権を留保していたときは撤回することができ期間を定めていない懸賞広告でも広告中に撤回しない旨を表示したときは撤回することができなくなります

対比は宅建試験が好きなところなので、大穴として軽く頭の片隅に入れておいてください。


同時履行の抗弁権

双務契約の当事者の一方は、相手方が債務の履行(債務の履行に代わる損害賠償債務の履行を含む)を提供するまでは、自己の債務の履行を拒むことができます。

( )内の文章が追加されました。判例等では認められていたことの明文化です。売主の引渡債務に代わる損害賠償債務と買主の代金支払債務、請負人の損害賠償債務と報酬支払債務など、これらも同時履行の関係に立つということですね。

覚えることは特に変わっていませんが、重要なので載せておきます。


危険負担

「当事者双方の責めに帰さない事由で債務を履行することができなくなった場合、債権者は、反対給付の履行を拒むことができる

危険負担は、従来は「債権者主義」(=債権者が危険を負担するという考え)が原則とされていました。

売主A、買主Bといて、目的物が不可抗力により滅失した場合、滅失した目的物についての債権者=「引渡せ」と言えるBが債権者=Bが危険を負担するということで、Aの目的物引渡債務は消滅するにも関わらず、Bの代金支払義務は残ったままとなります。意味が分かりませんね。理不尽すぎます。

そこで改正民法では、危険負担は「債務者主義」が原則となりました。

債務者が反対給付を受ける権利を有しなくなるのではなく、反対給付の履行を拒むことができるのです。上記AB双方の責任でなく売買契約の履行ができなくなった場合、AがBに代金の支払請求をしても、Bは支払いを拒むことができるということです。

危険負担は難しいので、「AがBに代金の支払請求をしても、Bは支払いを拒むことができる」これだけ覚えておけば十分でしょう。

危険負担は出題可能性が低い上に出題されたら難問となる可能性大なので、深追い禁物です。

当然ですが、債権者の責任により債務を履行することができなくなった場合は、債権者は反対給付の履行を拒むことができませんので少し注意。このとき自己の債務を免れたことで利益を得た債務者は、その利益を債権者に償還することを要します。深追いはここまでで。


第三者のためにする契約

契約により当事者の一方が第三者に対してある給付をすることを約した場合、その第三者(=受益者)は、債務者に対して直接その給付を請求する権利を有します。

AがBから100万円を借りていて、AがCに車を100万円で売った場合、Cは代金100万円をAではなくBに支払うとする契約も有効ということです。

ここまでは従来からある規定ですが、改正民法により「第三者=契約成立時に現に存しないor特定していない」場合も含まれるとされました。

胎児や設立中の法人を受益者とする契約も有効であるということです。

上記の例で、AがCとの売買契約を解除するにはBの承諾が必要である旨も新しく規定されていますので覚えておいてください。


契約上の地位の移転

契約当事者の一方が第三者との間で契約上の地位を譲渡する旨の合意をした場合、契約の相手方がその譲渡を承諾したときは、契約上の地位が第三者に移転します

簡単ですね。
契約の相手方が認めれば地位の譲渡も認められる、覚えておきましょう。

もちろん賃貸人の地位の移転は賃貸借契約の規定に従うなど、特則が優先します。


催告による契約の解除

当事者の一方が債務の履行をしない場合、相手方が相当の期間を定めて履行の催告をし、その期間内に履行がないときは、相手方は契約を解除することができます。

ここまでは従来からある催告による契約解除の基本ですね。

この基本にプラスして改正民法では、「催告をして相当期間が経過した場合でも、債務不履行がその契約および取引上の社会通念に照らして軽微であるときは、解除することができない」としています。


催告によらない契約の解除

1.債務の全部の履行が不能であるとき
2.債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき
3.債務の一部履行不能または一部履行拒絶により残存部分では目的達成できないとき
4.特定日時や一定期間に履行しなければ目的を達成できず、その時期を経過したとき
5.債権者が催告をしても履行される見込みがないことが明らかなとき

2番と5番が改正民法により無催告解除が認められるケースとして追加されました。
そして、

1.債務の一部の履行が不能であるとき
2.債務者が債務の一部の履行を拒絶する意思を明確に表示したとき

は、無催告で契約の一部解除も認められることとなりました。

催告による解除も無催告解除も、改正民法により債務者の帰責事由は不要となっています(重要)。
債権者に帰責事由がある場合、債権者から契約解除をすることはできません

この2行は必ず覚えておいてください。催告解除の軽微であるとき云々という概念は出てこない点に注意。


契約解除の効果

各当事者は原状回復義務を負うこと、金銭であれば受領のときからの利息を付す必要があること、損害賠償請求ができることは変わっていません。

改正民法では、金銭以外の物を返還する場合について新設規定を置いています。金銭以外の物を返還するときは、その受領時以後に生じた果実も返還する必要があります。

果実とは物から生じる収益で、マンション賃貸の賃料などを言います。
改正前 改正後
債務不履行に基づく解除には、債務者の帰責事由(故意や過失)が必要 債務不履行に基づく解除に、債務者の帰責事由は不要
無催告解除の規定は定期行為のみ(+履行不能の規定) 無催告解除の規定が追加された
・債務の全部の履行が不能
・債務者が債務の全部の履行を拒絶する意思を明確に表示
・債務の一部履行不能または一部履行拒絶により残存部分では目的達成できない
・債権者が催告をしても履行される見込みがないことが明らか
規定なし 債務不履行が軽微な場合は解除ができない
規定なし 債務不履行が債権者の帰責事由に基づく場合は解除ができない
解除権者が故意または過失により契約目的物を
・著しく損傷した場合
・返還できなくなった場合
・加工や改造により他の種類の物に変えた場合
は解除ができない
左記はそのまま、ただし、解除権者が解除権を有することを知らなかったとき解除権は消滅しない


以上、宅建試験で出題される契約関連全般についての改正点でした。

長々とお疲れさまでした…。
改正民法も折り返しを超えて終わりが見えてきていますので、あと少し頑張りましょう!


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