事前届出が必要となる区域とは?

宅建試験の法令制限解説:「事前届出制」、「許可制」、届出を怠ったときなどの「罰則」について解説します。宅建試験で出題されることはほとんどありませんが、すごく簡単ですので2~3回読んで軽く頭にいれておいてください。しかし、事前届出制だけは少し注意です。「届出制」の問題として、事後届出制とミックスされて出題されることがあります。事後届出制との違いはきちんと整理しておいてください。

事前届出その他の宅建解説

事前届出制

事前届出制とは、注視区域内および監視区域内において土地利用を行うなどする場合に必要とされている届出制です。注視区域、監視区域の説明につきましては、国土利用計画法の全体像をご覧ください。以下、事前届出制で覚えておいていただきたい事項をまとめておきます。

1.事前届出が必要な面積要件

注視区域:事後届出制と同じ(市街化区域2,000㎡以上、その他の都市計画区域5,000㎡以上、 都市計画区域外10,000㎡以上)
監視区域:都道府県知事が、都道府県の規則で定める(注視区域の面積要件未満)

2.一団の土地か否かの判断基準

権利取得者(買主等)・権利設定者(売主等)の双方を基準に判断されます。事前届出制の場合、契約当事者双方が届出義務者となります。権利取得者のみを基準に判断される事後届出と区別しておいてください。

3.審査対象

事前届出制は、当事者双方が「予定対価の額」「土地の利用目的」などを示し、市町村を経由して都道府県知事に届け出るという手続きがとられます。契約締結後2週間以内に届け出る事後届出と比べ、文字通り「事前届出」(契約締結の少なくとも6週間前)です。そして都道府県知事は、事前届出がなされた内容につき、予定対価の額および利用目的について審査を行います。事後届出の審査対象が利用目的だけだったことと区別しておいてください。

4.事前届出事項の変更

届け出た事項につき予定対価の額や土地の利用目的を変更する場合、原則として再度の届出が必要となります。しかし例外として、減額変更を行うだけのときは再度の届出は不要です。事後届出制には、この「再度の届出」という制度はないので区別しておいてください。


許可制

はっきり言って宅建試験での出題可能性は限りなく低いです。しかし一応試験範囲ですので、許可制というものがどういった区域について指定されるかイメージだけ掴んでおいてください。許可制は規制区域内において指定されますが、都市計画区域内か都市計画区域外かで指定の定義が異なります。

都市計画区域内:土地の投機的取引が相当範囲にわたり集中して行われ(行われるおそれがある)、または地価が急激に上昇している(上昇するおそれがある)と認められる区域について指定する

都市計画区域外:上記のような事態が生ずると認められる場合に、その事態を緊急に除去しなければ適正かつ合理的な土地利用の確保が著しく困難となると認められる区域について指定する

この定義を丸暗記する必要はありません。
許可制でヤマをはるとしたら以下の6つです。

1.許可制に必要な面積要件はない
2.契約締結前に許可を受ける
3.許可制の審査対象は予定対価の額および土地の利用目的
4.無許可で契約をした場合は無効無届けは罰則の対象となるが契約自体は有効の届出制と区別
5.不許可となった場合、土地に関する権利を有する者は、都道府県知事に権利の買取りを請求できる
6.契約当事者の一方または双方が国等である場合、都道府県知事との協議により許可とみなされる


届出制の罰則

届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合、事後届出制および事前届出制共通で6ヵ月以下の懲役または100万円以下の罰金に処せられます。また、事前届出制は届出から6週間を待ち勧告等がない場合に契約可能となるのですが、6週間を待たずに契約をした場合は50万円以下の罰金に処せられます。

勧告を無視して契約した場合、罰則はありませんが勧告に従わない旨および勧告内容が公表される可能性があります。


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事後届出制 都市計画法の仕組み
  事後届出 注視区域 監視区域
届出の要件 一団の土地に関する権利を、対価を得て、移転・設定する売買等の契約をした場合 同左 同左
目的 適正な土地利用 ・適正な土地利用
・地価の抑制
同左
届出義務者 権利取得者 当事者双方 同左
届出時期 契約締結後2週間以内 契約締結前 同左
届出対象面積 ・市街化区域:2000㎡以上
・市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域:5000㎡以上
・都市計画区域外(準都市計画区域を含む):10000㎡以上
同左 左の面積に満たない範囲で都道府県の規則で定める
審査対象 利用目的のみ3週間以内に勧告 利用目的および価額6週間以内に勧告 同左
届け出なかった場合 契約は有効だが6月以下の懲役または100万円以下の罰金 同左 同左
勧告を無視した場合 契約は有効で罰則もないが、公表される可能性あり 同左 同左
届出不要の例外 国や地方公共団体等による取引
・民事調停法による調停に基づく場合
農地法3条許可を受けた場合
同左 同左
【宅建試験問題 昭和58年ー問17】Aは、市街化区域内 (注視区域内) に面積3,000平方メートルの一団の土地 (以下「甲地」という。) を所有している。甲地に係る土地取引について、国土利用計画法第27条の4第1項の規定による土地に関する権利の移転等の届出 (以下「事前届出」という。) が必要であるか否かに関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.甲地をBが所有している土地と交換しようとする場合など対価が金銭以外のものであるときには、事前届出をする必要はない。
2.甲地をBに贈与しようとする場合には、事前届出をする必要がある。
3.AがBから借り入れた金銭債務の担保として、甲地について代物弁済の予約を行おうとする場合には、事前届出をする必要がある。
4.甲地が1,000平方メートルずつ3筆に分けて登記されており、それぞれBCDと売買契約を締結しようとする場合には、事前届出をする必要はない。
1 誤:交換は「土地に関する権利の対価の授受を伴って移転・設定する契約」に該当し、事前届出が必要となる
2 誤:贈与は「対価の授受を伴わない」権利移転なので、原則として事前届出は不要となる(例外は覚える必要なし)
3 正:代物弁済は「土地に関する権利の対価の授受を伴って移転・設定する契約」に該当し、事前届出が必要となる
4 誤:一団の土地を複数の取引で売却する場合、全体として事前届出の面積要件(市街化区域なら2,000㎡以上)に達していれば事前届出が必要となる(登記が分かれていても関係なし)
【宅建試験問題 平成12年ー問16】国土利用計画法に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1.監視区域内において一定規模以上の面積の土地売買等の契約を締結した場合には、契約締結後2週間以内に届出をしなければならない。
2.市町村長は、当該市町村の区域のうち、国土交通大臣が定める基準に該当し、地価の上昇によって適正かつ合理的な土地利用の確保に支障を生ずるおそれがあると認められる区域を、期間を定めて、注視区域として指定することができる。
3.監視区域内において国土利用計画法の規定に違反して必要な届出をせず、土地売買等の契約を締結した場合には、6月以下の懲役又は100万円以下の罰金に処せられる。
4.注視区域内においては、都道府県の規則で定める面積以上の土地売買等の契約を締結する場合に届出が必要である。
1 誤:監視区域内の場合、当事者双方があらかじめ都道府県知事に届け出る(=事前届出)
2 誤:注視区域を指定するのは都道府県知事
3 正:その通り(契約自体は無効とはならない)
4 誤:これは監視区域の規定であり、注視区域は事後届出制の要件と同様