事後届出が必要となる要件とは?

宅建試験の法令制限解説:国土利用計画法の2回目「事後届出」についてお話します。この事後届出はすごく重要です。宅建本試験直前に合格レベルに達していない方は、事前届出などは捨てて事後届出制だけを覚えておけば国土法は大丈夫と言っても過言ではありません。事後届出は完璧に覚えておいてください。ここで絶対に1点を確保してください。

事後届出の宅建解説

国土利用計画法における土地取引の規制には2種類の届出制と1種類の許可制があり、宅建試験でぶっちぎり重要なのは「事後届出」です。
事後届出 権利取得者が事後に届出 一般区域
事前届出 契約の両当事者が事前に届出 注視区域・監視区域
許可制 契約の両当事者が事前に許可申請 規制区域


事後届出制とは?

事後届出制とは、「一団の土地に関する権利を、対価を得て、移転・設定する売買等の契約を締結した場合、権利取得者は、都道府県知事に取引価格や土地の利用目的などを届け出なければならない」とする制度をいいます。何を言っているのかよく分かりませんね。

キーワードは、「一団の土地に関する権利」「対価を得て」「移転・設定する売買等の契約」の3つです。この3つのキーワードについては以下で詳しく解説いたしますので、まずここでは、事後届出は「権利取得者が都道府県知事に届け出る」ということを覚えておいてください。また、事後届出制の主な目的は合理的な土地利用を図ることにあります。地価の上昇を抑制することが目的の事前届出制と区別しておいてください。


一団の土地に関する権利

一見すると面積要件に満たない土地取引であっても、処分される全体の面積を基準として事後届出が必要かどうか判断されます。「全体の面積を基準」とは、物理的な一体性、計画的な一体性から判断され、つまり隣接する土地の計画的取引であれば、売主が複数であったり契約時期がずれていたとしても一団の土地と判断されます。

また、事後届出を要する面積要件とは以下の通りです。

市街化区域:2,000㎡以上
市街化区域以外の都市計画区域内:5,000㎡以上
都市計画区域外(準都市計画区域を含む):10,000㎡以上

この数字は正確に覚えておいてください。

街づくりを行う場所のことを都市計画区域といいます。そして既に市街地を形成している区域およびおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域を市街化区域といいます(つまり建物が立ち並んでいる街です)。また、「一団の土地」といえるかどうかは権利を取得する者を基準に判断されるということも必ず覚えておいてください。

土地に関する「権利」ですが、所有権(予約も含む)地上権・賃借権(設定の対価がある場合)と、これらの権利の取得を目的とする権利をいいます。譲渡担保設定契約、代物弁済予約なども土地に関する権利に含まれますが、抵当権や不動産質権は含まれないという点に注意しておいてください。
事後届出が必要 事後届出は不要
・売買(予約含む)
・譲渡担保
・代物弁済(予約含む)
・交換
・買戻権、予約完結権の譲渡
・地上権や賃借権の設定(対価あり)
・抵当権、質権、地役権、使用貸借権の設定や移転
・相続、遺贈、贈与、法人合併
・時効取得
・土地収用や換地処分
・買戻権、予約完結権の行使
・条件付契約の条件成就


対価を得て

事後届出が必要となるのは、対価を得て行われる土地取引に限られます。したがって、贈与、相続、遺産分割、法人の合併、信託などは含まれません。しかし信託の場合、受託者(信託された者)から信託財産を有償で取得する場合は事後届出が必要となりますので注意してください。

同様に地上権や賃借権の設定も、設定に対価がある場合のみ事後届出が必要となります。ちなみに地上権や賃借権の設定における対価とは、権利金などの一時金をいいます。


移転・設定する契約

事後届出が必要とされるのは、土地に関する権利を移転・設定する「契約」を締結した場合に限られます。

「契約」ですので、当事者がお互いに意思表示をすることが必要となります。したがって、買戻権や予約完結権の行使などの一方的意思表示は契約にはあたりません。しかし、買戻権や予約完結権そのものを取得する場合は「契約」にあたります。これは大切ですので、少し細かい知識ですが頭に入れておいてください。


事後届出の手続き

事後届出は、権利取得者が行います。以下、事後届出の流れです。赤文字部分の審査対象は頻出問題です。

1. 権利取得者が、対価の額や土地の利用目的などを示し、契約締結後2週間以内市町村を経由して都道府県知事に届け出る(指定都市はその長に直接届出。停止条件付契約でも契約締結日、予約でも予約日が起算点)

2.都道府県知事が利用目的について審査(対価の額は審査対象ではない点に注意)
→ 勧告がなければ契約どおり or
→ 助言がなされる or
→ 問題があれば3週間以内(合理的理由があれば最大3週間延長される)に土地利用審査会の意見を聴いて勧告がなされる

届出を怠った場合でも契約は無効とはなりませんが、6月以下の懲役または100万円以下の罰金という罰則は科されます。勧告を無視した場合に罰則はありませんが、公表される可能性があります(助言無視では公表なし)。勧告に基づき土地の利用目的が変更された場合、知事は当該土地に関する権利処分についてあっせん等の努力義務を負います。
宅建合格!事後届出

事後届出制の例外

事後届出該当要件に当てはまる場合でも、以下の場合に事後届出は不要となります。

1.契約当事者の一方または双方が国や地方公共団体である場合
2.民事調停法に基づく調停により土地売買等の契約が締結された場合
3.農地法3条1項の許可を要する土地を取引する場合
届出要件 一団の土地に関する権利を、対価を得て、移転・設定する売買等の契約をした場合
届出義務者 権利取得者のみ
届出時期 契約締結後2週間以内
届出対象面積 ・市街化区域:2000㎡以上
・市街化調整区域、区域区分が定められていない都市計画区域:5000㎡以上
・都市計画区域外(準都市計画区域を含む):10000㎡以上
審査対象 利用目的のみ
届け出なかった場合 契約は有効だが6月以下の懲役または100万円以下の罰金
勧告を無視した場合 契約は有効で罰則もないが、公表される可能性あり
届出不要の例外 国や地方公共団体等による取引
・民事調停法による調停に基づく場合
農地法3条許可を受けた場合

次ページに事後届出と事前届出の比較表も作成してありますのでご活用ください。


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国土法の全体像 事前届出制その他
【宅建試験問題 昭和55年ー問16】国土利用計画法第27条の4 (注視区域における土地に関する権利の移転等の届出) の規定に基づく届出に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.届出について都道府県知事から勧告を受けなかった場合において、届出に係る予定対価の額を減額変更して土地売買等の契約を締結しようとするときには、再度の届出が必要である。
2.宅建業者が、土地区画整理事業施行区域内の保留地を売買する場合、保留地の面積にかかわらず、届出を行う必要はない。
3.民事調停法に基づく調停により土地売買等の契約が締結される場合には、土地の面積にかかわらず、届出を行う必要はない。
4.買主が国であっても、届出が必要である。
1 誤:「事前届出」において、土地の利用目的を変更または予定対価の額を増額変更する場合に再度の届出が必要となり、減額変更で再度の届出は不要(事後届出には再度の届出という概念はない)
2 誤:土地区画整理事業施行区域内の保留地でも、届出対象面積に達していれば事前届出(監視区域と注視区域)・事後届出ともに必要となる
3 正:民事調停法に基づく調停により土地売買等の契約が締結される場合、土地面積に関係なく、事前届出(監視区域と注視区域)・事後届出ともに必要はない
4 誤:当事者の一方または双方が国等の場合、土地面積に関係なく、事前届出(監視区域と注視区域)・事後届出ともに必要はない
【宅建試験問題 平成11年ー問16】国土利用計画法第23条の届出(以下この問において「事後届出」という)に関する次の記述のうち,正しいものはどれか。

1.土地売買等の契約を締結した場合には、当事者双方は、その契約を締結した日から起算して2週間以内に、事後届出を行わなければならない。
2.宅建業者が、一団の造成宅地を数期に分けて不特定多数の者に分譲する場合において、それぞれの分譲面積は事後届出の対象面積に達しないが、その合計面積が事後届出の対象面積に達するときは、事後届出が必要である。
3.事後届出においては、土地に関する権利の移転等の対価の額を届出書に記載しなければならないが、当該対価の額が土地に関する権利の相当な価額に照らし著しく適正を欠くときでも、そのことをもって勧告されることはない。
4.事後届出に係る土地の利用目的について勧告を受けた場合において、その勧告を受けた宅建業者がその勧告に従わなかったときは、その旨及びその勧告の内容を公表されるとともに、罰金に処せられることがある。
1 誤:事後届出は権利取得者のみが行えばよく、当事者双方が行う必要はない
2 誤:それぞれの面積が権利取得者を基準に判断して、事後届出の対象面積に達しなければ届出は不要
3 正:土地の利用目的については勧告を受けることがあるが、対価の額は審査対象ではない
4 誤:勧告を受けた者が勧告に従わない場合、公表されることはあるが罰則はない
【宅建試験問題 平成17年ー問17】国土利用計画法第23条の届出(以下この問において「事後届出」という。)に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。

1.宅建業者Aが、市街化区域において、Bの所有する面積3,000㎡の土地を一定の計画に基づき1,500㎡ずつ順次購入した場合、Aは事後届出を行う必要はない。
2.宅建業者Cは、市街化調整区域において、Dの所有する面積8,000㎡の土地を民事調停法に基づく調停により取得し、その後当該土地をEに売却したが、この場合、CとEはいずれも事後届出を行う必要はない。
3.甲県が所有する都市計画区域外に所在する面積12,000㎡の土地について、10,000㎡を宅建業者Fに、2,000㎡を宅建業者Gに売却する契約を、甲県がそれぞれF、Gと締結した場合、FとGのいずれも事後届出を行う必要はない。
4.事後届出に係る土地の利用目的について、乙県知事から勧告を受けた宅建業者Hが勧告に従わなかった場合、乙県知事は、当該届出に係る土地売買の契約を無効にすることができる。
1 誤:権利取得者が一定の計画に基づき合計で3000㎡の土地を取得するには事後届出必要
2 誤:CD間の取引は民事調停法に基づく調停によるため事後届出不要だが、Eは事後届出必要
3 正:当事者の一方または双方が国や地方公共団体の場合は事後届出不要
4 誤:勧告を受けた者が勧告に従わない場合、公表されることはあるが無効となることはない