遺言と遺留分の民法大改正

宅建改正民法!遺言と遺留分

宅建試験に出る「遺言と遺留分」の改正民法解説

前ページの相続より重要度が低い上に少し複雑となりますが、それでもまだまだ覚えやすく、出題された場合は得点源となります!


自筆証書遺言

2019年の宅建試験から出題範囲だった改正点ですが、念のため再度触れておきます。

全文を自書して押印が必要だった自筆証書遺言ですが、自筆証書に一体化して添付する財産目録部分」については、パソコンでの作成や通帳のコピー等でよくなりました。

ただし、それぞれの目録の毎葉に署名と押印が必要となります。

そして2021年(令和3年)の宅建試験から自筆証書遺言に関する以下の改正点も出題範囲となります。出題可能性は低いですが、簡単なので頭の片隅に入れておきましょう。3つめは少し注意ですね。

・遺言書保管官が自筆証書遺言の方式をチェックするようになった!
・2020年7月10日以降に無封で法務局に持ち込むことで、法務局が保管してくれるようになった!
法務局が保管する場合、検認が不要となった!


遺贈義務者の引渡義務

遺贈義務者は、目的物が特定物か不特定物であるかに関わらず、相続開始時の状態で引き渡せばよいことになりました。

改正された無償贈与と同じですね。従来は目的物に「瑕疵」があった場合は担保責任を負いましたが、タダであげるのに責任を負わされては堪りません。


遺言執行者

ここが遺言関連で最も改正されていますが、宅建試験で遺言執行者が出題されることは超レアケースかと思いますので、最重要箇所のみ軽くまとめておきます。余裕がない方はスルーでも大丈夫です。

尚、遺言執行者とは相続人の一人であったり、弁護士や司法書士であったり・・誰を指名しても構いません

・遺言執行者は、その任務を開始したときは、遅滞なく相続人に遺言内容を通知する!

・遺言執行者は、遺言内容を実現するため、遺言者の利益のために行動する!
(従来は相続人の代理人とみなされ、相続人の利益のために行動しているかのようでした)

・遺言執行者がいる場合、遺贈の履行は遺言執行者のみが行うことができる!

・遺言執行者は、遺言者が別段の意思表示をしていた場合を除き、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができる!(従来の復任権は、やむを得ない事由がある場合のみ)

・遺言執行者は、やむを得ない事由により第三者に遺言執行を行わせる場合、その選任及び監督についてのみ相続人に対して責任を負う!

遺言執行者がある場合、相続人が遺言に反する行為をすることは禁止されていますが、従来の規定では禁止の効力が明文化されていませんでした。そこで改正民法では、禁止の効力=無効とし、それと共に善意の第三者には対抗できないとしました。

ただし、この無効はあくまでも「相続人」が妨害行為をした場合の話であり、「相続人の債権者」が相続財産について適法に自分の権利を行使できる点とは別問題ですので注意してください。ちょっとヤラシイひっかけ問題として出題しやすいところだと思います。
改正前 改正後
規定なし 遺言執行者は、任務開始時に相続人に対して遺言内容を通知しなければならない
遺言執行者がいる場合、相続人がした遺言執行部分に抵触する相続財産の処分は無効 左記の無効は善意の第三者には対抗できない


撤回された遺言の効力

詐欺や強迫により遺言が撤回された場合と同様に、改正民法により取消事由となった「錯誤」=勘違いにより遺言が取り消された場合も、最初の遺言の効力が回復することとなりました。

遺言が撤回された場合、その撤回が撤回されても効力が回復しないのが原則ですが、詐欺・強迫・錯誤の場合は最初の遺言を有効にしたいという意思が強く残っているものと思われます。そこで、この3つについては撤回・取り消した遺言が復活します。


遺留分侵害額の請求

従来の「遺留分減殺請求権」が金銭債権化されて「遺留分侵害額請求権」となりました。

「減殺を請求」するのではなく「侵害額(金銭)の支払を請求」することになります。

たとえば遺贈の対象が遺留分を侵害する住居だった場合、減殺を請求すると所有権が共有となり、財産の処分が煩雑化してしまいます。そこで改正民法では、シンプルに侵害された遺留分に相当する金銭の支払を請求することができるようになったということです。

難問対策となりますが、侵害額の請求方法は、【遺留分】-【遺留分権利者が受けた特別利益】-【遺留分権利者が所得する相続分】+【遺留分権利者が承継する債務】となります。

分かりやすい民法解説の「遺言と遺留分の難問対策」に例題を載せてありますので、参考程度に見ておいてください。
改正前 改正後
遺留分を侵害する行為があった場合、遺留分権利者は所有権の移転といった遺留分減殺請求権を行使できる 遺留分を侵害する行為があった場合、遺留分権利者は遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求できる


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