配偶者居住権と特別の寄与の民法大改正

配偶者居住権と特別の寄与

今回は「配偶者居住権と特別の寄与」についてお送りします。

配偶者居住権は完全なる新規定なので未知数ですが、今後の宅建試験で頻出分野になってもおかしくないところだと思います。今年いきなり出題される可能性もありますので、しっかりと押さえておきましょう。

では、宅建試験で狙われそうなポイントを見ていきます!


配偶者居住権と配偶者短期居住権

配偶者居住権には、配偶者居住権配偶者短期居住権があります。
これらは別物ですので、分けて考えてください。

試験で狙われるポイントですので、下のまとめ比較表も有効にご活用ください。

配偶者居住権とは、被相続人死亡後の配偶者の居住権を長期的に保護する権利で、遺産となる建物の価値を「居住権」と「所有権」に分け、居住権は配偶者に残したまま所有権を子などに相続させることを可能とする規定です。

例えばAとBが再婚してAが死亡し、BとAの連れ子Cが相続人となった場合、血の繋がっていないBとCで相続トラブルとなる事例は日常茶飯事で、相続財産となる住居を遺産分割できない場合(Bが建物代金の半分をCに払えない場合)、Bはこれまで住んでいた家を追い出されてしまう可能性があります。これを回避する規定が配偶者居住権です。

そして配偶者居住権が終身とも言える長期の居住権であるのに対して、配偶者短期居住権とは、文字通り短期の居住権となります。遺産分割により出ていかなくてはならないことになってしまった場合でも、引き続き一定期間は住むことができる権利です。

どのような場合に配偶者居住権を行使できるのか、配偶者短期居住権となるのか、それぞれの成立要件などを見ていきましょう。


居住権の成立要件

配偶者居住権:
遺言または遺産分割協議で決定し、
配偶者以外の者と共有の状態ではなく、
相続開始時に居住していること

配偶者短期居住権:
法律上当然に認められ、
配偶者居住権を取得しておらず、
相続開始時に無償で居住していること

(補足)
配偶者居住権が認められるためには、配偶者居住権が遺贈の目的とされているか、遺産分割で配偶者が居住権を取得する必要があります。当然に認められる配偶者短期居住権と区別しておいてください。

Aが死亡し配偶者Bと子Cが相続人であった場合、建物甲の所有権をCが取得し、居住権をBが取得することはできますが、甲がAとDの共有だった場合、配偶者居住権は認められないとするのが2つめの要件です。単独で所有していた場合のみ適用される権利です。ただし、甲の所有権をCが取得し、居住権をBが取得した後にCが死亡し、Cの配偶者Eと親であるBが当該建物を相続して共有となった場合、この場合はBの配偶者居住権は残ります。「ただし」以下の今年の出題可能性は低いと思いますが、今後出題が予想されるひっかけポイントです。

配偶者短期居住権の成立には相続開始時に「無償」で居住していることが必要で、これは一部使用(建物の2階部分のみなど)にも認められるということだけ覚えておいてください。


居住権の権利内容

配偶者居住権:建物全部について無償で使用収益が可能
配偶者短期居住権:無償で使用していた部分についてのみ使用可能(収益不可

(補足)
配偶者居住権を取得した配偶者は、善管注意義務をもって使用収益を行うことができ、建物の改築や増築、第三者に使用収益させるには所有者の承諾が必要です(配偶者短期居住権を取得した配偶者も善管注意義務をもって使用し、第三者に使用させるには建物取得者の承諾が必要)。

配偶者居住権の「所有者」=配偶者短期居住権の「建物取得者


居住権の存続期間

配偶者居住権:別段の定めがある場合を除き、配偶者の終身の間
配偶者短期居住権:遺産分割の確定日から6ヶ月経過した日または遺言等で建物を取得した者からの消滅申入れから6ヶ月経過した日のいずれか遅い日まで(=少なくとも相続開始から6ヶ月は住むことができる)

(補足)
建物取得者は、上記の場合を除き、いつでも配偶者短期居住権の消滅を申し入れることができます。


居住権の登記請求権

配偶者居住権:登記請求権が認められ、登記が第三者への対抗要件となる
配偶者短期居住権:登記請求権はなく、対抗要件も存在しない

(補足)
配偶者居住権を取得した配偶者が、居住権があることを第三者に対抗するためには登記が必要となります。建物の所有者は、配偶者に配偶者居住権の設定登記を備えさせる義務を負い、登記に協力しなければなりません。建物賃借権と異なり、占有だけで第三者に対抗することはできませんので注意してください。ここ出題可能性高めです。

所有者は自由に建物を譲渡することができますが、新たに取得した第三者に対抗手段のない配偶者短期居住権者を保護するため、新たな取得者は配偶者短期居住権者が出ていくまで、その使用を妨害することはできないとしています。


居住権における配偶者の義務

配偶者居住権:
譲渡ができず、
所有者の承諾なく第三者に使用収益させられず、
用法遵守義務に違反し催告で是正されない場合は消滅の可能性があり、
通常の必要費を負担する

配偶者短期居住権:
譲渡ができず、
建物取得者の承諾なく第三者に使用させられず、
用法遵守義務に違反した場合は催告不要で消滅の可能性があり、
通常の必要費を負担する

(補足)
配偶者居住権を有する配偶者が善管注意義務に違反したり、所有者の承諾なく増改築等を行った場合、所有者は、相当期間を定めて是正を催告し、それでも是正されない場合は配偶者居住権を消滅させることができます(配偶者短期居住権の建物取得者は、催告不要で消滅請求可能)。

通常の必要費以外の特別費(災害による大きな損傷の修繕費など)や有益費(価値を増加させる費用)は、所有者が負担します。また配偶者は建物に小さな修繕の必要があるときはすぐに修繕する必要があり、配偶者が修繕をしない場合は所有者が修繕することもできます(配偶者短期居住権も同様)。


居住権の権利の終了

配偶者居住権:配偶者の死亡、建物滅失、存続期間を定めた場合は存続期間の満了など
配偶者短期居住権:配偶者の死亡、建物滅失、上記存続期間の終了建物取得者による消滅請求配偶者居住権の取得など

(補足)
存続期間の満了により配偶者居住権の期間が終了した場合、配偶者は建物を所有者に返還しなくてはなりません。ただし、配偶者がその建物について共有持分を有する場合は返還する必要はなく、他の所有者も返還請求をすることができません


特別の寄与

これも新設規定ですが、判例等で認められていたことの明文化がメインです。宅建試験で出題されてもおかしくない箇所を軽く解説しておきますが、そもそも宅建試験で特別の寄与が出題されたことはありませんので、出題可能性は低いと思います。

従来より「相続人」が「特別の寄与」を行っていれば「寄与分」として相続分が増えることは規定されていました。特別の寄与とは、介護や財産を増やしたり・・などです。

しかし、被相続人の息子の嫁が義父である被相続人の介護の世話を何年も頑張ったのに、相続人ではない息子の嫁は法定相続分もなく、相続人ではないので寄与分も受けられないというのは理不尽です。

そこで改正民法において、無償の労務の提供によって相続財産の維持・増加があった場合、相続開始後、相続人に対して寄与に応じた額の金銭を請求できることが明文化されました。

寄与を請求できる者を「特別寄与者」といいますが、特別寄与者は戸籍上の親族である者に限られます。内縁の妻等は含まれません。また「無償」ですので、その行為時に対価があった場合にも認められません。寄与分をいくらとするか、相続人と協議が調わない場合、特別寄与者は、裁判所に対して協議に代わる処分を請求することもできます

深追い禁止で、特別の寄与はここまでにしておきましょう。


以上、120年ぶりに大改正された民法の解説は終了です。お疲れさまでした!


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  配偶者居住権 配偶者短期居住権
成立要件 遺言または遺産分割協議で決定
配偶者以外の者と共有ではない
相続開始時に居住していたこと
法律上当然に発生
配偶者居住権を取得していない
相続開始時に無償で居住していたこと
権利内容 建物全部について無償で使用収益 無償使用部分を使用できる
存続期間 別段の定めがある場合を除き、終身 遺産分割確定日or
遺言による取得者からの消滅申入れ
から6ヶ月経過日
対抗要件 登記 対抗要件なし
義務 譲渡不可
所有者の承諾なく第三者に使用収益不可
違反時に催告からの消滅可能性
通常の必要費を負担
譲渡不可
建物取得者の承諾なく第三者に使用不可
違反時に催告不要で消滅可能性
通常の必要費を負担
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