宅建業者が受領できる報酬限度額

宅建業法の完全解説:宅建業者が売買・貸借の媒介・代理を行った際の「報酬限度額」の計算方法について解説します。令和元年10月の消費税増税に伴い、税率だけでなく計算式自体に大きな変更がありました。あまりいないと思いますが…古本で勉強されている方は注意してください。

宅建業者が受領できる報酬限度額

宅建業法で間違えるとしたら、記憶が曖昧になる35条書面記載事項根本的に分かっていない報酬計算という方が多いですね。細かい問題、やらしいひっかけが出題される他の分野と違い、出題パターン、ひっかけパターンは決まっていますので、一度コツを掴めば確実な得点源となるのですが、どうも苦手意識の強い方が多いようです。

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宅建業法で定める報酬の種類(特に記載ないときは課税事業者が前提)

苦手意識のある方は、何が何だかゴチャゴチャになっていることが多いと思うので、まずはザックリ全体像を把握しましょう。出題パターンは、

売買または交換における・・・
1.宅建業者が単独で媒介
2.複数の宅建業者が共同して媒介
3.宅建業者が代理
4.一方の宅建業者が媒介、もう一方の宅建業者が代理

貸借における・・・
5.宅建業者が単独で媒介
6.複数の宅建業者が共同して媒介
7.宅建業者が代理
8.居住用建物以外で権利金の授受がある場合

これだけです。なんだか簡単そうに思えてきましたね。覚えるのが少し面倒なのは、国土交通大臣が定める報酬限度額の基本計算式だけです。

代金額 200万円以下部分=5.5%(免税事業者は5.2%)
代金額 200万円超400万円以下部分=4.4%(免税事業者は4.16%)
代金額 400万円超部分=3.3%(免税事業者は3.12%)

部分ごとに報酬が異なり、代金額500万円の場合は200×5.5%+200×4.4%+100×3.3%となります。この式は確実に気合いで覚えてください。

更に、400万円以下部分は「200×5.5%+200×4.4%」と一定なので、時短計算も可能となりますね。

代金額が200万円以下の場合は5.5%、
200万超~400万であれば、代金額の4.4%+22,000円(免税事業者は4.16%+20,800円)
400万超であれば、代金額の3.3%+66,000円(免税事業者は3.12%+62,400円)

また、後から消費税を加えても同じとなります。
200万超~400万であれば、(代金額の4%+20,000円)×1.1(免税事業者は×1.04)
400万超であれば、(代金額の3%+60,000円)×1.1(免税事業者は×1.04)

この簡易計算式を使えば順々に足していく必要がなくなります

代金額が500万円として、

・200万×5.5%+200万×4.4%+100万×3.3%=110,000+88,000+33,000=231,000円
・500万×3.3%+66,000=231,000円
・(500万×3%+60,000)×1.1=231,000円

全て同じ答えとなります!

ただし、平成30年の法改正で「代金額400万円以下の売買や交換における売主や交換を行う者からの報酬上限は18万円」という特例が新設されたことも覚えておいてください。400万円以下で、特例について明をして合意があれば、遠方調査費等を含め、売主からは一律18万円+消費税が上限額となります。消費税を加えた198,000円という数字は覚えておきましょう。上限が一律18万円とは報酬+特別費用であって、特別費用がなくても売主からは18万円で統一されたというわけではありませんので注意してください。

この計算式さえ覚えてしまえば、あとは慣れで正解できます。出題パターンは決まっています。

完全版ですが、ゴチャゴチャと詳しく解説するよりもシンプルに見ていった方が分かりやすいでしょう。要点を思いきりシンプルに、そして例題を交えて報酬限度額をマスターしてしまいましょう!

尚、「媒介」とは不動産屋(宅建業者)が売主と買主(貸主と借主)の間に入り仲介することで、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種がありましたね。仲介内容次第で、売主、買主(貸主、借主)、その両方から報酬を受領することができます。

これに対して「代理」は、不動産屋(宅建業者)が売主または買主(貸主または借主)の代わりとして売買や貸借をすすめることになります。相手方からすると宅建業者自身と取引をしているようなものとなり、よってその相手方は宅建業者に報酬を支払う必要がありません。代理を依頼した者が宅建業者に相手方の分の報酬も支払うこととなります。

「代理は全てお任せ、媒介は依頼者が最後の契約に出向く必要がある」ということです。それぞれに長所短所がありますが、そこまでは宅建試験で出題されないでしょう。

また、「交換」は高い方の価格を基準として売買と同じ計算をするだけなので、売買=交換と置き換えていただければ大丈夫です。


1.宅建業者が単独で媒介(売買)した場合の報酬計算

基本計算式で算出した額まで。売主と買主の両方から媒介依頼を受けた場合は、基本計算式で算出した額が片方から受領できる限度となります。

計算した報酬額が100万円として、売主からのみ媒介依頼を受けていた場合は、売主から100万円を受領できます。売主と買主から媒介依頼を受けていた場合は、それぞれ100万円を限度に合計200万円まで受領でき、売主から120万円、買主から80万円で合計200万円は許されません。簡単ですね!


2.複数の宅建業者が共同して媒介(売買)した場合の報酬計算

宅建業者Aが売主から、宅建業者Bが買主から媒介依頼を受けた場合、基本計算式で算出した額がそれぞれの宅建業者が受領できる限度となります。

計算した報酬額が100万円として、Aは売主から100万円、Bは買主から100万円まで受領できます。もちろんAは120万円、Bは80万円とすることは許されません。簡単ですね!


3.宅建業者が代理(売買)した場合の報酬計算

基本計算式で算出した額の2倍までを、依頼者から受領できます。原則として双方代理は禁止なので、売主と買主の双方から代理依頼を受けるケースは考える必要がありません(双方代理を行った場合、売買でも貸借でも報酬上限は一方から依頼されたときと同額)。

計算した報酬額が100万円として、依頼をしてきた売主または買主から200万円まで受領できます。簡単ですね!


4.一方の宅建業者が代理、もう一方の宅建業者が媒介(売買)した場合の報酬計算

宅建業者Aが売主から代理依頼を、宅建業者Bが買主から媒介依頼を受けた場合、両方の宅建業者を合わせて、基本計算式で算出した額の2倍が限度となります。しかし代理業者は基本報酬額の2倍まで受領することができますので、上記1番2番と異なり、配分を変えることも可能となります。

計算した報酬額が100万円として、Aは売主から100万円、Bは買主から100万円という分配はもちろん、A150万円+B50万円も可能で、A200万円+Bは無報酬なんてことも可能となります。簡単ですね!


5.宅建業者が単独で媒介(貸借)した場合の報酬計算

報酬限度額=月額の借賃+消費税(課税事業者10%、免税事業者4%)となります。そして「居住用建物以外」か「居住用建物」かで、貸主と借主からそれぞれ受領できる限度額が変わってきます

月額10万円として、「宅地」や「居住用以外の建物」賃貸借を媒介した課税事業者は、貸主と借主の双方から合わせて11万円まで受領できます。配分は66,000円と44,000円、11万円と0円など自由です。

これに対して「居住用建物」の場合、配分は55,000円と55,000円になります。片方から受領できる報酬額の上限は、月額に消費税を加えた半分までとなります。しかし例外がありまして、あらかじめ依頼者から承諾を受けている場合は、月額=上限は変わりませんが、居住用でも配分を自由に変更することができます。この例外は頻出問題です!


6.複数の宅建業者が共同して媒介(貸借)した場合の報酬計算

宅建業者Aが貸主から、宅建業者Bが借主から貸借の媒介依頼を受けたとしても、5番と何も変わりません。月額に消費税を上限として、居住用建物以外なら配分自由、居住用建物なら原則として月額の半分ずつまで受領できます。


7.宅建業者が代理(貸借)した場合の報酬計算

売買の代理と同様に、貸借の代理も貸主または借主のどちらか一方から依頼される形となります。よって、依頼をしてきた貸主または借主の一方から月額の借賃(+消費税)を丸々受領できます。

月額10万円として、代理依頼をしてきた貸主または借主の一方から11万円を受領できます。


8.居住用建物以外で権利金の授受がある場合(貸借)の報酬計算

居住用建物以外の賃貸借の媒介または代理において、権利金の授受がある場合、権利金の額を売買代金とみなして、基本計算式により算出した額を報酬限度額とすることができます(=みなし計算)。

ここでの権利金とは「権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものをいいます。返還される権利金の設定がある場合、返還されない権利金の設定があっても居住用建物の場合は、みなし計算はできませんのでひっかけ問題に注意してください。「居住用建物以外」で「返還されない権利金」かどうかを冷静に見極めましょう

では、例題ということで消費税(10%)も考え、月額10万円、権利金150万円(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないもの)の宅地貸借の媒介における課税事業者の報酬限度額はいくらになるでしょうか?

貸主と借主の双方から配分自由で合わせて11万円orみなし計算により150万×5.5%=8万2,500円。売買の媒介なので、片方から8万2,500円を限度に双方から合わせて16万5,000円まで受領できます。

報酬の上限は?と出題されたら16万5,000円が正解ですが、みなし計算が可能な場合は必ずみなし計算を行うという必要はなく、11万円を上限としても構いません。


以上、報酬計算の「全て」でした。整理して簡潔にまとめてみると、思ったよりも簡単すよね?この8パターンしかありませんので、どれに該当するのか過去問などで練習し、マスターしておきましょう。確実に1点を拾えます。

また、土地は非課税ですが、売買交換における建物は消費税を引いた本体価額で計算するということも忘れずに!「土地代が2,000万円である代金4,200万円(消費税を含む)の土地付き建物・・」と出題された場合、土地代2,000万円を引いた2,200万円から消費税分を引いた2,000万円が建物の本体価額となり、土地代を足した4,000万円で計算することとなります。

(ここを問われる可能性は低いですが、貸借における居住用建物は非課税となります。税込賃料11万円の居住用建物…本体賃料11万円で計算、税込賃料11万円の非居住用建物…本体賃料10万円で計算)

あと、簡単な次の2つも必ず押さえておいてください。

・宅建業者は、不当に高額な報酬を請求することはできない!(実際に受領した額が限度内であっても、請求すること自体が宅建業法違反)

・宅建業者は、依頼者から依頼を受けた広告費や遠方調査費以外を報酬として受領することはできない!(実際に受領しなくても、請求すること自体が宅建業法違反)

報酬は成功報酬なので契約が成立しないと受領できませんが、依頼を受けた広告費等は、契約が不成立に終わっても必要経費として請求することができます。


近年の宅建本試験問題(皆さん直近の過去問は解く機会が多いと思いますので、古すぎず新しすぎない練習問題を少々。言い回しなど、雰囲気をチェックしておきましょう)

宅建業者A(消費税課税事業者)は、Bが所有する建物について、B及びCから媒介の依頼を受け、Bを貸主、Cを借主とし、1か月分の借賃を10万円(消費税等相当額を含まない。)、CからBに支払われる権利金(権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないものであり、消費税等相当額を含まない。)を150万円とする定期建物賃貸借契約を成立させた。この場合における次の記述のうち、宅建業法の規定によれば、正しいものはどれか(2018-30改題

1.建物が店舗用である場合、Aは、B及びCの承諾を得たときは、B及びCの双方からそれぞれ11万円の報酬を受けることができる。
2.建物が居住用である場合、Aが受け取ることができる報酬の額は、CからBに支払われる権利金の額を売買に係る代金の額とみなして算出される16万5,000円が上限となる。
3.建物が店舗用である場合、Aは、Bからの依頼に基づくことなく広告をした場合でも、その広告が賃貸借契約の成立に寄与したときは、報酬とは別に、その広告料金に相当する額をBに請求することができる。
4.定期建物賃貸借契約の契約期間が終了した直後にAが依頼を受けてBC間の定期建物賃貸借契約の再契約を成立させた場合、Aが受け取る報酬については、宅建業法の規定が適用される。

1:それぞれ11万円ではなく、BCから合わせて11万円が上限(配分自由)となります。店舗用建物なのでみなし計算も可能ですが、150万×5.5%=82,500円で、11万円ずつを受領することはできません。
2番は居住用なので数字を見るまでもなくみなし計算不可で、依頼者から依頼を受けていない広告費を請求している3番も誤りです。4番を知らなくても、消去法で正解できる問題です。


宅建業者A(消費税課税事業者)が受け取ることのできる報酬の上限額に関する次の記述のうち、宅建業法の規定によれば、正しいものはどれか(2018-31改題

1.土地付中古住宅(代金500万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Bから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ5万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をBに対し説明した上で、AがBから受け取ることができる報酬の上限額は286,000円である。
2.土地付中古住宅(代金300万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが買主Cから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ4万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をCに対し説明した上で、AがCから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。
3.土地(代金350万円。消費税等相当額を含まない。)の売買について、Aが売主Dから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の売買の媒介に比べ2万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をDに対し説明した上で、AがDから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。
4.中古住宅(1か月分の借賃15万円。消費税等相当額を含まない。)の貸借について、Aが貸主Eから媒介を依頼され、現地調査等の費用が通常の貸借の媒介に比べ3万円(消費税等相当額を含まない。)多く要する場合、その旨をEに対し説明した上で、AがEから受け取ることができる報酬の上限額は198,000円である。

法改正ホヤホヤで出題された18万円の特例の問題です。ゴチャゴチャして難しそうですね。こういった問題は飛ばしてしまい、最後にゆっくり解くのもテクニックの一つです。

まず、1番は400万円超なので特例は受けられず、普通に500万×3.3%+66,000で231,000円が限度額となります。2番も買主からなので特例は受けられず、普通に300万×4.4%+22,000で154,000円、4番も貸借なので特例は受けられず、普通に借賃に消費税で165,000円が限度額となります。

頑張って正確に細かいところまで計算しなくても、少し慣れれば1番は500万×3.3%+66,000で23万前後かな?2番も300万 ×4.4%+22,000で15万前後かな?と分かるようになります。問題文の286,000円や198,000円とは程遠い数字となっています。暗算の試験ではなく電卓の持込みも不可の宅建試験で、すごく近い紛らわしい数字をもってくることはありませんので、無駄な時間は使わず、瞬時にざっくりとした見当をつけられる練習をしておきましょう。もしも近い数字が2つ以上ある場合、2倍にできる、配分がおかしい・・などなど、問題自体に何か別の意図がないか確認してみてください。計算式の答えの誤差で正解不正解を分けるような問題は出題されないと考えて大丈夫でしょう。

正解は特例の条件(400万円以下、売主から、説明済み)を全てクリアしている3番で、実は全く時間のかからない問題でした。合意に触れていませんが、説明をした=それに反対してない=合意も得たということなのでしょう。こういった察しろ系の問題も本試験ではよく出題されますので、あまり細かく突っ込まないように!


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