低廉な空家等の報酬

宅建業法解説:前ページでは売買・交換・貸借の媒介・代理について、宅建業者が1人の場合の報酬計算についてお話いたしました。複数の宅建業者が関与する場合、報酬計算のベースとなる本体価額の出し方など、ここでは報酬に関する規制の応用知識をお送りいたします。また、計算問題は慣れが必要ですので、実際に本試験問題も解いてみたいと思います。

報酬に関する規制の応用知識

複数の宅建業者が関与する場合

宅建業者Aが売主から媒介を依頼され、宅建業者Bが買主から媒介を依頼された場合などです。この場合、宅建業者が受領できる報酬額には次の2つの制限があります。

1.宅建業者全員の受領する報酬総額は、1人の宅建業者に依頼した場合の報酬限度内でなければならない

2.各宅建業者が受領できる報酬限度額は、各宅建業者が依頼者の一方から受領できる報酬限度内である

では、例題を挙げて練習してみましょう(課税事業者の場合)。宅建業者Aと宅建業者Bが媒介により2,000万円の土地の売買契約を成立させた ⇒ 宅建業者が1人の場合:(2,000万円×3%+6万円)×1.08=71万2,800円。売主と買主の双方から媒介を依頼されていれば142万5,600円まで受領することができる。それぞれの宅建業者が受領できる報酬額は、宅建業者が1人であるときと同じなので、A・Bそれぞれ71万2,800円まで受領することができる。

宅建業者Aと宅建業者Bが代理により2,000万円の土地の売買契約を成立させた ⇒ 宅建業者が1人の場合:(2,000万円×3%+6万円)×1.08×2=142万5,600円。Aは依頼者の一方から142万5,600円まで受領することができる(Bも同様)。すなわち、A・B両者の合計が142万5,600円の範囲内で、A・Bそれぞれ142万5,600円まで受領することができる。


本体価額

売買代金や賃料、権利金等を報酬計算の基礎とする場合、消費税分を抜いた価額(=本体価額)を報酬計算の基礎とします。宅建試験本番で、消費税課税物件の代金等が消費税込みで表示されていた場合は、消費税分を抜いて報酬計算をする必要があります。消費税の課税対象となるものは以下の通りです。

売買・交換:建物の売買代金および交換代金
貸借:居住用建物以外の建物の賃料および権利金

よって、代金2,160万円(消費税込み)の建物の売買を媒介した場合に…と出題された場合、2,160万円を1.08で割り、2,000万円を本体価額として報酬計算をします。土地の売買代金や居住用建物の賃料等は非課税ですのでそのまま計算してください。


練習問題(平成10年度 宅建本試験問題)

A、B及びCが、宅建業に関して報酬を受領した場合に関する次の三つの記述のうち、宅建業法の規定に違反しないものはいくつあるか。なお、A、B及びCは、いずれも宅建業者である。

ア 消費税の課税業者であるAが、甲及び乙から依頼を受け、甲所有の価額2,400万円の宅地と乙所有の価額 2,000万円の宅地を交換する契約を媒介して成立させ、甲及び乙からそれぞれ80万円の報酬を受領した。

イ 消費税の免税業者であるBが、消費税の免税業者である丙から依頼を受け、借賃月額10万円、権利金(権利設定の対価として支払われる金銭で返還されないもの)200万円で丙所有の店舗用建物の貸借契約を媒介して成立させ、丙から12万円の報酬を受領した。

ウ 消費税の免税業者であるCが、消費税の課税業者である丁から依頼を受け、丁所有の価額2,000万円の宅地と価額1,728万円(消費税・地方消費税込み)の建物の売買契約を媒介して成立させ、丁から117万円の報酬を受領した。(改題)

(1)一つ
(2)二つ
(3)三つ
(4)なし

ア 違反しない⇒
交換の媒介では高い方の不動産価格である2,400万円を基準としますね。そしてAは課税業者なので、(2,400万円×3%+6万円)×1.08=84万2,400円。この84万2,400円が、Aが甲・乙それぞれから受領できる報酬限度額となります。

イ 違反する⇒
貸借の媒介では1ヶ月分の借賃の限度で報酬額を受領できます。そしてBは免税業者なので、10万円×1.032=10万3,200円。また、店舗用建物で権利金の授受があるため、権利金を基準として報酬を受領することもできます。(200万円×5%)×1.032=10万3,200円。どちらを基準としても12万円未満ですので、宅建業法違反となります。

ウ 違反しない⇒
建物については消費税分を除いた1,600万円(1,728万円÷1.08)が基準となるという点にご注意ください。そしてCは免税業者なので、{(2,000万円+1,600万円)×3%+6万円 }×1.032=117万6,480円。Cは117万円の報酬を受領しても問題ありませんね。

よって宅建業法に違反しないものはアとウの2つで、正解は2番となります。


低廉な空家等の売買交換における特例

価額が400万円以下の宅地または建物の売買や交換について媒介または代理を行う場合、売主や交換を行う者から、通常の報酬額の他に現地調査等に特別に要する費用を受領することができます。

上限は報酬と併せて18万円+消費税までとなります。つまり、400万円以下の物件売買(交換)の報酬上限は、一律18万円ということです。

売主から300万円の物件について売買の媒介依頼を受け、特別な調査費用として3万円を受領する約束をしていた場合 ⇒ 300万円×4%+2万円=14万円。従来ですと、これに特別な調査費用3万円を加えた17万円(+消費税)が報酬の上限ですが、400万円以下の物件売買なので、調査費用3万円との約束があっても18万円(+消費税)まで受領することができます(報酬額上限が18万円であることを媒介契約時に売主が合意している必要があります)。上限18万円は売主のみで、買主からは従来の報酬額となります(=売主から18万円、買主から14万円)。


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【宅建試験問題 平成2年ー問48改題】消費税の免税事業者である宅建業者Aは、消費税の課税事業者である法人甲から媒介の依頼を受け、また、消費税の課税事業者である宅建業者Bは、消費税の免税事業者である乙から媒介の依頼を受けて、AB共同して、甲乙間に、甲の所有する事業用の宅地及び建物の売買契約を成立させた。この場合、宅建業者が受領することのできる報酬の上限額に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。(消費税8%

1.消費税込みの物件価額が宅地1,080万円、建物2,160万円の場合、Aの受領することのできる報酬の上限額は、101万5,488円である。
2.消費税込みの物件価額が宅地1,000万円、建物2,160万円の場合、Aの受領することのできる報酬の上限額は、96万円である。
3.消費税込みの物件価額が宅地1,080万円、建物2,160万円の場合、Bの受領することのできる報酬の上限額は、111万4,560円である。
4.消費税込みの物件価額が宅地1,000万円、建物2,160万円の場合、Bの受領することのできる報酬の上限額は、108万8,640円である。
1 正:3,080万✕3%+6万=98.4万円に免税事業者なので1.032を掛けて1,015,488円
2 誤:3,000万✕3%+6万=96万円に免税事業者なので1.032を掛けて990,720円
3 誤:3,080万✕3%+6万=98.4万円に課税事業者なので1.08を掛けて1,062,720円
4 誤:3,000万✕3%+6万=96万円に課税事業者なので1.08を掛けて1,036,800円
【宅建試験問題 平成3年ー問41改題】宅建業者Aが甲の依頼を受け、宅建業者Bが乙の依頼を受け、AB共同して甲乙間の契約を成立させ、報酬を受領した場合に関する次の記述のうち、宅建業法の規定に違反しないものは、どれか。なお、Aと乙は消費税の課税事業者、Bと甲は消費税の免税事業者とする。(消費税8%

1.貸主甲の居住用建物を権利金(権利設定の対価として支払われる金銭で、返還されないものをいう。)300万円、1月当たりの借賃30万円で乙が借りるとの賃貸借の媒介の場合、Aが甲より25万9,200円、Bが乙より24万円受領した。
2.貸主甲の居住用建物を1月当たりの借賃30万円で乙が借りるとの賃貸借の媒介の場合、Aが甲より17万2,800円、Bが乙より15万円受領した。
3.甲所有の宅地及び建物を代金それぞれ4,000万円及び1,080万円(消費税込み)で乙が買うとの売買の媒介の場合、Aが甲より169万円、Bが乙より163万円受領した。
4.甲所有の宅地を代金4,000万円で乙が買うとの売買の媒介の場合、Aが甲より136万800円、Bが乙より130万320円受領した。
1 違反する:居住用建物なので、権利金の額でみなし計算不可。A:15万✕1.08=162,000円、B:15万✕1.032=154,800円
2 違反する:1と同じ
3 違反する:4,000万+1,000万=本体価格5,000万円✕3%+6万=156万円なので、A:156万✕1.08=1,684,800円、B:156万✕1.032=1,609,920円
4 違反しない:4,000万✕3%+6万=126万円なので、A:126万✕1.08=1,360,800円、B:126万✕1.032=1,300,320円
【宅建試験問題 平成3年ー問50改題】宅建業者Aが単独で又は宅建業者Bと共同して、甲乙間に契約を成立させて報酬を受領した場合に関する次の記述のうち、宅建業法に違反しないものは、どれか。ただし、A・Bともに、消費税の免税業者であるものとする。(免税事業者のみなし仕入れ率3.2%

1.甲所有の宅地(3,000万円)の売買について、甲から代理の依頼を受けたAと、買主乙から媒介の依頼を受けたBとが共同して、売買契約を成立させ、Aが甲から192万円、Bが乙から96万円を受領した。
2.甲所有の宅地(1,800万円)と乙所有の宅地(2,000万円)の交換について、甲から媒介の依頼を受けたAと、乙から媒介の依頼を受けたBとが共同して、交換契約を成立させ、Aが甲から66万円、Bが乙から66万円を受領した。
3.甲所有の店舗用建物の賃貸借について、甲から媒介の依頼を受けたAが、甲と借主乙との間に、賃貸借契約(借賃月額40万円。保証金1,500万円、ただし、この保証金は、乙の退去時に乙に返還するものとする。)を成立させ、甲から51万円を受領した。
4.甲所有の居住用建物の賃貸借について、甲から媒介の依頼を受けたAと、借主乙から媒介の依頼を受けたBとが共同して、甲と乙との間に、賃貸借契約(借賃月額40万円)を成立させ、Aが甲から10万円、Bが乙から30万円を受領した。ただし、媒介の依頼を受けるに当たり、報酬額について別段の定めはないものとする。
1 違反する:3,000万×3%+6万=96万円。媒介は1.032を掛けて990,720円、代理は2倍で1,981,440円だが、複数の宅建業者が関与した場合でも、受け取ることができる報酬合計は代理の限度額に相当する1,981,440円まで
2 違反しない:高い方の2,000万×3%+6万=66万円に1.032を掛けて681,120円。複数の宅建業者が関与する場合は、合計して2倍の1,362,240円まで
3 違反する:居住用以外建物なのでみなし計算ができるケースだが、みなし計算ができる権利金とは「権利設定の対価として支払われる金銭であって返還されないもの」を意味し、本肢の保証金は、退去時に借主に返還されるので権利金に該当しない。よって、40万✕1.032=412,800円が報酬限度額となる
4 違反する:居住用建物なので、依頼者の承諾がない限り借賃の0.5ヶ月分が報酬限度額となり、20万✕1.032=206,400円。複数の宅建業者関与した場合、ABそれぞれ206,400円以下で、両者合わせても412,800円が上限となる