宅建業法解説:前ページでは売買・交換・貸借の媒介・代理について、宅建業者が1人の場合の報酬計算についてお話いたしました。複数の宅建業者が関与する場合、報酬計算のベースとなる本体価額の出し方など、ここでは報酬に関する規制の応用知識をお送りいたします。また、計算問題は慣れが必要ですので、実際に本試験問題も解いてみたいと思います。
- 報酬計算の応用の宅建解説
■複数の宅建業者が関与する報酬計算
宅建業者Aが売主から媒介を依頼され、宅建業者Bが買主から媒介を依頼された場合などです。この場合、宅建業者が受領できる報酬額には次の2つの制限があります。
1.宅建業者全員の受領する報酬総額は、1人の宅建業者に依頼した場合の報酬限度内でなければならない
2.各宅建業者が受領できる報酬限度額は、各宅建業者が依頼者の一方から受領できる報酬限度内である
では、例題を挙げて練習してみましょう(課税事業者の場合)。宅建業者Aと宅建業者Bが媒介により2,000万円の土地の売買契約を成立させた ⇒ 宅建業者が1人の場合:2,000万円×3.3%+66,000円=72万6,000円。売主と買主の双方から媒介を依頼されていれば145万2,000円まで受領することができる。それぞれの宅建業者が受領できる報酬額は、宅建業者が1人であるときと同じなので、A・Bそれぞれ72万6,000円まで受領することができる。
宅建業者Aと宅建業者Bが代理により2,000万円の土地の売買契約を成立させた ⇒ 宅建業者が1人の場合:(2,000万円×3.3%+66,000万円)×2=145万2,000円。Aは依頼者の一方から145万2,000円まで受領することができる(Bも同様)。すなわち、A・B両者の合計が145万2,000円の範囲内で、A・Bそれぞれ145万2,000円まで受領することができる。
■本体価額
売買代金や賃料、権利金等を報酬計算の基礎とする場合、消費税分を抜いた価額(=本体価額)を報酬計算の基礎とします。宅建試験本番で、消費税課税物件の代金等が消費税込みで表示されていた場合は、消費税分を抜いて報酬計算をする必要があります。消費税の課税対象となるものは以下の通りです。
売買・交換:建物の売買代金および交換代金
貸借:居住用建物以外の建物の賃料および権利金
よって、代金2,200万円(消費税込み)の建物の売買を媒介した場合に…と出題された場合、2,200万円を1.1で割り、2,000万円を本体価額として報酬計算をします。土地の売買代金や居住用建物の賃料は非課税ですのでそのまま計算してください。
■報酬計算の練習問題(平成10年度 宅建本試験問題 改題)
A、B及びCが、宅建業に関して報酬を受領した場合に関する次の三つの記述のうち、宅建業法の規定に違反しないものはいくつあるか。なお、A、B及びCは、いずれも宅建業者である。
ア 消費税の課税業者であるAが、甲及び乙から依頼を受け、甲所有の価額2,400万円の宅地と乙所有の価額 2,000万円の宅地を交換する契約を媒介して成立させ、甲及び乙からそれぞれ80万円の報酬を受領した。
イ 消費税の免税業者であるBが、消費税の免税業者である丙から依頼を受け、借賃月額10万円、権利金(権利設定の対価として支払われる金銭で返還されないもの)200万円で丙所有の店舗用建物の貸借契約を媒介して成立させ、丙から12万円の報酬を受領した。
ウ 消費税の免税業者であるCが、消費税の課税業者である丁から依頼を受け、丁所有の価額2,000万円の宅地と価額1,760万円(消費税・地方消費税込み)の建物の売買契約を媒介して成立させ、丁から118万円の報酬を受領した。(改題)
(1)一つ
(2)二つ
(3)三つ
(4)なし
ア 違反しない⇒
交換の媒介では高い方の不動産価格である2,400万円を基準としますね。そしてAは課税業者なので、2,400万円×3.3%+66,000円=85万8,000円。この85万8,000円が、Aが甲・乙それぞれから受領できる報酬限度額となります。
イ 違反する⇒
貸借の媒介では1ヶ月分の借賃の限度で報酬額を受領できます。そしてBは免税業者なので、10万円×1.04=10万4,000円。また、店舗用建物で権利金の授受があるため、権利金を基準として報酬を受領することもできます。200万円×5.2%=10万4,000円。どちらを基準としても12万円未満ですので、宅建業法違反となります。
ウ 違反しない⇒
建物については消費税分を除いた1,600万円(1,760万円÷1.1)が基準となるという点にご注意ください。そしてCは免税業者なので、(2,000万円+1,600万円)×3.12%+62,400円 =118万5,600円。Cは118万円の報酬を受領しても問題ありませんね。
よって宅建業法に違反しないものはアとウの2つで、正解は2番となります。尚、消費税増税に伴い免税事業者の計算式がものすごく細かくなったので、電卓持ち込み不可の宅建試験で「ウ」のような問題が今後出題される可能性はすごく低いと思います。問題文の数字が「118万円」ではなく「100万円」「140万円」などかけ離れていれば出題可能性はありますが・・「イ」のように免税事業者の問題は貸借のみとなる可能性が高いと思います。
■低廉な空家等の売買交換における報酬の特例
価額が400万円以下の宅地または建物の売買や交換について媒介または代理を行う場合、売主や交換を行う者から、通常の報酬額の他に現地調査等に特別に要する費用を受領することができます。
上限は報酬と併せて18万円+消費税までとなります。つまり、400万円以下の物件売買(交換)の報酬上限は、一律18万円ということです。
課税事業者が売主から300万円の物件について売買の媒介依頼を受け、特別な調査費用として3万円を受領する約束をしていた場合 ⇒ 300万円×4.4%+22,000万円=15万4,000円。従来ですと、これに特別な調査費用3万円を加えた184,000円が報酬の上限ですが、400万円以下の物件売買なので、調査費用3万円との約束があっても、実際に要した費用を考慮して18万円+消費税=198,000円まで受領することができます(報酬額上限が18万円であることを媒介契約時に売主が合意している必要あり)。上限18万円は売主のみで、買主からは従来の報酬額となります(=売主198,000円、買主154,000円)。
上限が一律18万円とは報酬+特別費用であって、特別費用がなくても売主からは18万円で統一されたというわけではありませんので注意してください。
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