保証と連帯保証の民法大改正

保証と連帯保証の改正

今回は『保証と連帯保証』の改正点について見ていきます。

前回までの連帯債務連帯債権より格段に重要度が上がりますが、改正点も多いので、超重要ポイントを厳選してご紹介します。民法大改正の目玉の一つです。どこが出題されてもおかしくありません。

キーポイントは「保証人の保護の強化」です。

これを念頭に、順番に見ていきましょう!


保証人の負担

保証契約の締結後に主たる債務が加重された場合でも、保証債務は加重されない

従来からある規定で、保証債務が主たる債務よりも重くなることは許されないとされていました。主たる債務よりも重いときは、主たる債務の限度に減縮されます。

では、保証契約の締結後に主たる債務が加重された場合、保証債務もその限度まで加重されるのか、元の主たる債務よりも重くすることはできるのか?主債務10万、保証債務10万だった場合に、主債務が12万になったことで保証債務も12万(元の主債務より重い)とできるのか、ということです。この点についての規定がありませんでした。

→ 答えはNoです。主たる債務が加重されても保証債務は影響を受けないという規定が新設されました。


主たる債務者に生じた事由

保証人は、主たる債務者が主張できる抗弁をもって債権者に対抗することができる

主債務者が債権者に対して相殺権、取消権、解除権を有する場合、保証人は、債務者がその債務を免れる限度で履行を拒むことができます。主債務者が債権者に対してもつ債権の相殺をもって対抗することができる旨しか定められていなかった従来の規定から、より具体的に、明確な規定が新設されました。

その他、主債務者に対する履行の請求などが保証人にも効力を及ぼす点は従来と変わっていませんが、「連帯保証人に対する履行の請求が主債務者に効力を及ぼさない」ことになった点は必ず押さえておいてください。前回お伝えした連帯債務者の一人にした履行の請求も、他の連帯債務者に対して時効の完成猶予・更新の効力は及びません


履行状況に関する情報提供

委託を受けて保証人となった者は、主債務の履行状況を債権者から聞くことができる

委託を受けた保証人による、主たる債務の履行状況を知る権利が新設されました。

委託を受けた保証人から請求があった場合、債権者は遅滞なく、主たる債務の元本及び利息、違約金、損害賠償等の不履行の有無並びにこれらの残額、そのうち弁済期が到来しているものの額について情報を提供しなければなりません

「委託を受けた保証人」「請求があった場合」「債権者が」「遅滞なく」「弁済期が到来しているもの」、ここは様々な問題が作れ、かなり出題可能性も高いと思います。


主たる債務者による期限の利益の消失

主債務者が期限の利益を喪失した場合、債権者は、その利益の喪失を知ったときから2ヶ月以内に保証人に対して通知しなければならない

ここも熱いですね。以下、出題ポイントです。

主債務者が期限の利益を失っていることに気付いていない保証人は、遅延損害金が発生しているなど思わぬ不利益を被る可能性があります。

そこで保証人が主債務者の期限の利益喪失を知ることができるようにするため、主債務者の期限の利益が喪失した場合、債権者は、利益喪失を知ったときから2ヶ月以内に保証人に対してその旨を通知することが義務付けられました(保証人が法人の場合も通知必要)。

期間内の通知を怠った債権者は、期限の利益喪失から現に通知を行うまでに生じた遅延損害金(期限の利益を喪失しなかったとしても生ずべきものを除く)に係る保証債務の履行を請求することができなくなります

( )内も含め、ここはいくつも厄介な問題を作りやすそうなところです。債権者が保証人に対して請求ができなくなるのは上記期間内の遅延損害金のみで、それ以外の保証人としての保証債務履行義務がなくなるわけではないのでご注意ください(保証人が法人の場合は適用されません。上記通知と区別)。

ちなみに法改正とは無関係の基礎知識となりますが、「期限の利益」とは「借り手側の支払期限の権利」のことです。支払期限が来るまでは支払い(弁済・返済)をする必要はなく遅延損害金も発生しません。この「債権者から返済を請求されない権利」を期限の利益と呼びます。

「期限の利益を喪失する」とは、債務者が破産した場合や虚偽の財務状況を申告していた場合、住所不定となった場合など様々なケースがあります。期限の利益を喪失することで債権者から一括返済を請求されることとなり、一括請求のタイミング=返済期日から2ヶ月以上経過後が多くなっています(金融機関により異なります)。


事前通知を怠った保証人の求償制限

委託を受けた保証人の求償権、委託を受けていない保証人の求償権、弁済期前に弁済等をした場合の求償権、事前求償権と、求償関連については特筆すべき改正点はありませんので割愛いたします。出題ポイントは「分かりやすい民法解説」をご参照ください。

ここでは、主たる債務者に事前通知をせずに保証人が債務の消滅行為を行った場合についてのみ、少し触れておきます。

債権者Aが債務者Bに対して1,000万円の債権を有し、保証人Cが存在したとします。

委託を受けて保証人となったCが、Bに通知せず1,000万円を弁済した
→ 原則としてCは支出した全額を求償できる。
委託を受けず保証人となったCが、Bに通知せず1,000万円を弁済した
→ 主債務者Bが現に利益を受ける限度で求償できる。

分かりにくいので、もう少し事例で解説しましょう。

上記のケースでBがAに対して800万円の反対債権を有していたとします。
Bは相殺により800万円の履行を消滅させ、200万円を支払うことで全て弁済できると考えていました。全額の弁済をしたCに対して「保証債務を履行する前に教えてくれよ…」と思うはずです。

この辺のバランスの話です。

委託をした保証人であれば、委託をした方にも確認を怠った責任があるので、Cは原則として全額求償が可能です。ただし、通知を怠った連帯債務者の求償制限を準用し、BはAに対抗できた800万円についてCに対抗(支払請求を拒否)することができます。そして拒否された場合は、CはAに対して800万円の履行の請求をすることとなります。

これに対し、委託されてないのに勝手に弁済をした保証人は、問答無用で求償権の範囲が限定されます。初めから200万円の求償しかできず、800万円はAに対して請求することになります。

ここは少し複雑なので、余裕がなければスルーで大丈夫でしょう。


主たる債務者が通知を怠った場合

主債務者が債務の消滅行為をしたが、委託を受けた保証人に通知を怠った場合、善意で債務の消滅行為をした保証人は、その債務の消滅行為を有効とみなすことができる

債権者A、債務者B、保証人Cといて、BがAに弁済をしたにも関わらずCに通知を怠ったため、何も知らないCがAに対して弁済をしたときは、CからAの弁済を有効とし、CはAから取り戻すのではなく、Bに対して求償を求めることができます(Bが頑張ってAから取り戻します)。

通知を怠ったBの帰責性が一番高いという判断ですね。
通知義務がない委託を受けていない保証人は、ここでは登場しません。


事後通知を怠った保証人の求償制限

債務の消滅行為をした保証人が、主債務者に通知を怠った場合、主債務者が善意でした債務の消滅行為は有効とみなすことができる

主たる債務者が先に弁済等を行い保証人に通知を怠った一つ上の逆パターンですね。人物を入れ替えるだけで結論は同じです。ただしこちらは、委託を受けた保証人が通知を怠った場合だけでなく、主たる債務者の意思に反して保証をした保証人も含まれる点に注意です。


個人根保証契約

問題はここですね。民法大改正の目玉とも言える保証の改正の中でも目玉となる改正点です。しかし、過去に宅建試験で根保証が出題されたことはありません。他の法律試験では重要な根保証契約が、大きく変わったことで宅建試験でも出題されるのか…?

ひとまず、超超超重要ポイントだけピンポイントでご紹介しておきます。もしも出題される場合は、ここの可能性が高いはずです。

個人根保証とは、当事者が将来に渡って負う債務を、個人がまとめて保証する制度です。

マンションの入居などに際し、本人が利用し続ける限り賃料が発生します。本人が支払えない場合は保証人が肩代わりしますので、期間が長くなるほど保証人の負担が大きくなります。

そこで今回の改正で「契約時に限度額を定める」ことが義務化されました。限度額の定めのない根保証契約は無効となります。保証人は支払請求に応じる必要はありません。

2020年4月1日の改正民法施行後に締結された契約のみが対象となります。「令和元年○月に締結した限度額を定めていない個人根保証契約は無効となる」と出題されたら誤りとなります。

「限度額を定める」「施行前からの保証人は限度額を定めていないことを理由に無効を主張できない」、この2点は必ず押さえておいてください。


他にも細かい改正や、事業に係る保証契約の特則といった新規定もあるのですが、これ以上の深入りはやめておきましょう。出題が未知数の箇所への深入りは得策とは言えません。出題可能性に対して労力が割に合わなくなります。

今回ご紹介した内容以上のものが出て、消去法でも対応できなかったら潔く捨てましょう。50点でも40点でも同じ合格です。頻出問題を確実に取り、宅建合格を勝ち取りましょう!


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