- 宅建改正民法!連帯債務
宅建試験に出る『連帯債務』の改正民法解説
元々出題頻度は高くありませんが、前回お伝えした新規定「連帯債権」との比較で出題されてもおかしくありません。出題しやすいところとも言えます。ちょっと改正点は多いですが、難しいところではないと思います。
■連帯債務者への履行の請求
民法は相対的効力(相対効)を原則とし、例外的に絶対的効力(絶対効)を認め、そして従来は連帯債務者への履行の請求は絶対効とされていました。
しかし連帯債務者相互間に必ずしも密接な関係があるわけではないため、改正民法では連帯債務者への履行の請求は原則通り相対効に変更されています。
■連帯債務者の一人への免除
「連帯債務者の一人に対して債権者が免除をした場合、その免除部分について他の連帯債務者にも効力が生ずる」とする旧437条が削除されました。
つまり、免除が相対的効力となったということです。ものすごく重要ですね。連帯債権の免除が絶対効である点にも注意が必要です。近い将来、宅建試験でも高確率で出題されると思います。
債権者Aが、負担割合は平等として連帯債務者BCDに対して300万円の債権を有していたとします。AがBに対して債務の免除をした場合、従来は絶対的効力としてBの負担分(100万円)についてCDの債務も免除されていました。CDは200万円を返せば足ります。
しかし改正民法では、連帯債務者の一人への免除は相対的効力となり、CDは変わらず300万円の債務を負うこととなります。
そしてこの場合=連帯債務者の一人に対して債務が免除された場合でも、他の連帯債務者は、その連帯債務者に対して求償権を行使することができます。
AはCDに対して全額の請求ができますので、CまたはDが全額を弁済してもBに求償できないとなると、CDの負担が増えてしまいます。そこで、改正民法ではBの債務が免除された場合でも、CDはBに対して求償権を行使できるとしました。
■連帯債務者の一人の時効完成
「連帯債務者の一人のために時効が完成した場合、その部分について他の連帯債務者も義務を免れる」とする旧439条が削除されました。
免除と同様に、これまたすごく重要ですね。免除以上に出題確率が高いかもしれません。
債権者Aが、負担割合は平等として連帯債務者BCDに対して300万円の債権を有し、Bに対して時効が完成した場合、従来は絶対的効力としてBの負担分(100万円)を差し引いてCDは200万円を負担することとなりました。
しかし改正民法では、連帯債務者の一人の時効完成は相対的効力となり、CDは変わらず300万円の債務を負うこととなります。
免除と同じく、Bの時効が完成してもCDはBに対して求償権を行使することができます。
■連帯債務者の一人による相殺
連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有しながらも相殺を援用しない場合、その連帯債務者の負担部分において、他の連帯債務者は履行の請求を拒むことができます。
従来は、連帯債務者の一人が債権者に対して債権を有する場合において相殺が行われない場合、他の連帯債務者はその負担部分について相殺を援用することができました。
しかし改正民法は、相殺の援用ではなく「履行の拒絶」までを認めるとしています。他の連帯債務者からすれば、相殺はされなくても、その分の履行を拒絶することができれば何も問題ないはず、ということですね。改正前 改正後 連帯債務者に対する履行の請求は、絶対的効力を有する 連帯債務者に対する履行の請求は、相対的効力に変更 連帯債務者の1人に対する債務の免除は、その負担部分について絶対的効力を有する 連帯債務者の1人に対する債務の免除は、相対的効力に変更 連帯債務者の1人に時効が完成した場合、その負担部分について絶対的効力を有する 連帯債務者の1人の時効の完成は、相対的効力に変更 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合、その者が相殺を援用しない間、その負担部分について他の連帯債務者が相殺を援用できる 連帯債務者の1人が債権者に対して債権を有する場合、その者が相殺を援用しない間、その負担部分の限度において他の連帯債務者は履行を拒むことができる
■連帯債務の絶対効まとめ
履行の請求+免除と時効が相対効となり、他の連帯債務者が有する債権の相殺援用が履行拒絶となったことにより、連帯債務の絶対効は以下の4つのみとなりました。
・弁済
・自己債権での相殺
・更改
・混同
尚、相対効であっても、債権者及び他の連帯債務者の一人が別段の意思表示をしたときは絶対効となる点に注意しておいてください。
■連帯債務者間の求償権
連帯債務者の一人に対する弁済等により共同の免責を得た場合、その連帯債務者は、免責額が自己の負担部分を超えるかどうかにかかわらず、他の連帯債務者に対して、免責を得るために支出した財産の額(その財産額が共同の免責を得た額を超える場合は、その免責を得た額)のうち各自の負担部分に応じた額の求償権を有します。
条文通りだと何を言っているのか分かりにくいですね。
つまり、従来は「各自の負担部分」について求償権を有しましたが、改正民法では「自己の負担部分を超えない弁済も求償可能」となったということです。その財産額が共同の免責を得た額を超える場合は「免責を得た額」について求償可能となります。
まだ分かりにくいので事例で解説しましょう。
債権者Aが連帯債務者BCDに300万円の債権を有していたとします(負担部分は平等)。BがAに自己の負担部分(100万円)を超えない90万円を弁済した場合でも、BはCDそれぞれに30万円の求償をすることができますが、Bが代物弁済により時価360万円の弁済を行った場合は、CDそれぞれに120万円の求償ができるわけではなく、求償額は100万円になる、ということです。
■通知を怠った連帯債務者の求償制限
1.他の連帯債務者があることを知りながら他の連帯債務者が弁済を行う場合、事前の通知が必要となる
債権者Aが連帯債務者BCD(負担部分は平等)に対して300万円の債権を有しており、BがAに対して100万円の債権を持ち相殺しようと考えていたところ、CがBDに知らせず300万円を弁済した場合に問題となる話です。
Bは、負担部分の100万円についてCに対抗することができ、Bが相殺を行った場合、Cからの100万円支払請求を拒否することができます。CはAに対して、Bが相殺した分の100万円を請求することができ、これで全て丸く収まります。
連帯債務者の一人が、事前通知をせず共同の免責を得たとしても、債権者に対抗することができる事由を有していた他の連帯債務者は、免責を得た連帯債務者に対抗することができるというわけです。
2.他の連帯債務者があることを知りながら共同の免責を得た通知を怠った場合、他の連帯債務者は、自己の財産をもって免責を得るためにした行為を有効とみなすことができる
債権者Aが連帯債務者BCD(負担部分は平等)に対して300万円の債権を有しており、BがAに対して300万円の弁済を行ったのに、そのことをCDに知らせず、何も知らないCが弁済した場合に問題となる話です(Cの弁済額は、自己の負担部分100万円とします)。
300万円を弁済したBは、本来Cに対して100万円の求償権を有します。しかし、何も知らなかったCはAに100万円を弁済済みで、Bからも求償を求められたら困ってしまいます。CがAから100万円を返却してもらって、それをBからの求償に充てるのがベストですが、それもCにとっては面倒です。
では、誰が一番責任を負うべきか?そこで改正民法は通知を怠ったBに落ち度があるとして、Cの弁済を有効とみなし、Bが頑張ってAから100万円を取り戻すべき、とすることとしました。
では今回は、「免除と時効が相対効になったこと」「免除や時効完成を受けた連帯債務者にも求償できること」「相殺が行われない場合は自己の負担部分について履行拒絶ができること」「共同の免責を得たら求償権を行使できること」辺りは押さえておきましょう。
通知を怠った場合も重要なので、余裕があれば押さえておきましょう。
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