宅建業法解説:「弁済業務保証金と保証協会」。営業保証金とどこが違うのか?前ページの営業保証金との異同が特に重要です。一覧表を作っておきますので、そちらも参考にしてください。では、弁済業務保証金と保証協会について見ていきましょう!より詳しい解説はこちら:弁済業務保証金の完全解説
- 弁済業務保証金の宅建解説
弁済業務保証金とは、営業保証金と同じく、一般消費者に損害を与えないように供託しておく保証金です。最も異なる点は、この弁済業務保証金制度は「保証協会に加入している宅建業者」(=社員)にのみ適用される制度だということです。
もちろん保証協会への加入は義務ではなく、宅建業者は宅建業を行うにあたり、営業保証金を供託するか保証協会へ加入するか選択することになります。
■弁済業務保証金の供託
営業保証金は宅建業者が直接供託所へ供託するのに対し、弁済業務保証金は「保証協会の社員である宅建業者」が保証協会へ「弁済業務保証金分担金を納付」し、「保証協会」が「弁済業務保証金を供託所へ供託する」、という形式をとります。
1.弁済業務保証金分担金納付義務者
弁済業務保証金分担金を納付する者は、保証協会の社員になろうとする宅建業者です。
2.弁済業務保証金供託義務者
弁済業務保証金を供託をする者は保証協会です。
3.弁済業務保証金分担金納付先
弁済業務保証金分担金の納付先は保証協会です。
4.弁済業務保証金供託場所
弁済業務保証金の供託先は法務大臣および国土交通大臣の定める供託所です。
5.納付額および供託金の額
弁済業務保証金分担金の納付額は「主たる事務所で60万円」「従たる事務所で30万円」です。営業保証金に比べてすごく安いですね。宅建業者が保証協会の社員となるメリットです。
6.弁済業務保証金分担金納付期限
弁済業務保証金分担金の納付期限は「保証協会に加入しようとする日まで」です。
7.弁済業務保証金供託期限
弁済業務保証金の供託期限は「社員から分担金の納付を受けた日から1週間以内」です。
8.事務所の新設
保証協会の社員である宅建業者が弁済業務保証金分担金納付後に新たに事務所を設置した場合、新設した事務所1つにつき30万円ずつ、設置した日から2週間以内に保証協会に弁済業務保証金分担金を納付します。この期間内に弁済業務保証金分担金を納付しなかった宅建業者は業務停止処分を受け、保証協会の社員としての地位も失ってしまいます。そして保証協会は、弁済業務保証金分担金の納付があった日から1週間以内にその額を供託します。
9.弁済業務保証金分担金納付方法
弁済業務保証金分担金は、必ず金銭で納付しなければなりません。
10.弁済業務保証金供託方法
弁済業務保証金は営業保証金と同じく、金銭や国債証券、地方債証券などで供託可能です。その評価額も同様です。
■弁済業務保証金の還付
1.還付を受けられる者
営業保証金の場合と同じく、宅建業者と取引をし、その宅建業に関する取引について生じた債権を有する者(宅建業者を除く)に限られます。しかし、弁済業務保証金特有の問題として次の2点を覚えておいてください。
・宅建業者が保証協会の社員となる前に取引をした者も、弁済業務保証金から還付を受けることができる!
・弁済業務保証金の還付を受けるには、保証協会の認証(権利があることの証明)を受けなければならない!
2.還付を受けられる額
還付額は「その社員が社員でないとした場合に供託すべき営業保証金に相当する額の範囲内」、つまり、「営業保証金の範囲内」です。例えば、本店と2つの支店を有する宅建業者が保証協会に納付する弁済業務保証金分担金は60+30×2で120万円ですが、還付額は営業保証金に相当する1,000+500×2で2,000万円の範囲内で還付可能ということです。
3.供託金の不足
弁済業務保証金が還付され、供託すべき弁済業務保証金額に不足が生じた場合、保証協会は、国土交通大臣より還付があった旨の通知を受けた日から2週間以内に、還付された額に相当する弁済業務保証金を新たに供託しなければなりません。そして宅建業者(社員)は、保証協会より不足の通知を受けた日から2週間以内に、還付された額に相当する弁済業務保証金分担金を「還付充当金」として保証協会に納付する必要があります。
保証協会の通知より2週間以内に還付充当金を納付しない宅建業者は、保証協会の社員としての地位を失ってしまいます。社員の地位を失っても宅建業を続けていくには、社員の地位を失った日から1週間以内に「営業保証金」を供託し、免許権者に届け出なければなりません。これを怠ると業務停止処分を受けます。社員の地位を失った宅建業者は、もう社員となることはできません。
■弁済業務保証金の取戻し
弁済業務保証金を供託しておく必要がなくなった場合、「保証協会」は、供託所から弁済業務保証金を取り戻すことができます。そして保証協会は、宅建業者に弁済業務保証金分担金に相当する取戻し額を返還します。以下、2つだけ弁済業務保証金を取り戻せるケースです。
・宅建業者が社員でなくなったとき
・事務所の一部を廃止し、分担金額が法定の額を超えたとき
1つ目の宅建業者が社員でなくなった場合は、保証協会は債権者に対して6ヶ月を下らない一定期間内に、保証協会の認証を受けるための申出をするよう公告をしなければなりません。2つ目は公告不要ですぐに取り戻せます。
■保証協会
ではここで、以前からチラホラと出てきます「保証協会」とは何か、補足しておきます。これが単体で宅建試験に出るということはあまりありませんが、簡単ですので覚えておいてください。正式名称を宅地建物取引業保証協会といい、国土交通大臣が指定した社団法人で、宅建業者のみを社員とする団体です。一つの保証協会の社員は、重ねて他の保証協会の社員となることはできません。
必要的業務:弁済業務(対象が宅建業者の場合を除く)、苦情の解決、研修
任意的業務:一般保証業務、宅建業の健全な発達に必要な業務、
手付金等保管事業、宅建士等に対する研修実施に要する費用の助成
営業保証金と弁済業務保証金の下の比較一覧表も参考にしてください。
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