宅建業法解説:「営業保証金」について解説していきます。誰が、どこに、いくら、供託するのか?営業保証金の還付を受けることができる者とは、宅建業者が営業保証金を取り戻せるケースとは、などなど、正確に覚えておいてください。より詳しい解説はこちら:営業保証金の完全解説
- 営業保証金の宅建解説
営業保証金とは、あらかじめ宅建業者が供託所へ供託しておく保証金を言い、一般消費者が宅建業者との取引で損害を受けた場合に弁済してもらうためのお金です。
供託とは、金銭や有価証券を供託所へ預けておくことを言い、いざというときに債務者(供託した者)に代わって供託所が権利者に財産等(供託された金銭等)を取得させて債務を消滅させる制度です。覚える必要はありませんが、供託所とは法務局やその支局などです。宅建業者は、国土交通大臣または都道府県知事(免許権者)に供託した旨の届出をしないと、すべての事務所で事業を開始することができません。
■営業保証金の供託
1.供託義務者
供託をする者は、宅建業者です。
2.供託場所
供託場所は、主たる事務所の最寄りの供託所です。
3.供託金の額
営業保証金の額は「主たる事務所で1,000万円」「従たる事務所で500万円」です。ここは少し練習してみましょう。A県に本店と、B県およびC県に支店を有する宅建業者は・・A県にある最寄りの供託所に1,000+500×2=2,000万円を供託する、簡単ですね!
4.事務所の新設
宅建業者が事業開始後に事務所を新設した場合、増設した事務所1つにつき500万円ずつ、主たる事務所の最寄りの供託所に供託し、供託した旨を免許権者に届け出ます。弁済業務保証金分担金(増設から2週間以内の納付)と異なり、いついつまでに供託しなければならないという期間制限はありません。供託して届け出なければ新事務所で事業を開始できないだけです。
5.供託方法
営業保証金は「金銭または一定の有価証券」によって供託します。ここで注意していただきたいのは、金銭と国債証券は額面通りで評価されるのですが、地方債証券は額面金額の90%、国土交通省令で定める有価証券は額面金額の80%でしか評価されないということです。
国債証券?国土交通省令で定める有価証券って何?というのはあまり気にしないでください。そのままの形で出題されると思います。また、手形・小切手・株券による供託は認められません。「小切手により供託した」←誤りの肢となります。
6.供託を怠った場合
免許の日から3ヶ月以内に宅建業者より営業保証金を供託した旨の届出がない場合、免許権者は届出をすべき旨の「催告をしなければなりません」。そして催告から1ヶ月以内に再び宅建業者より営業保証金を供託した旨の届出がない場合、免許権者は「免許を取り消すことができます」。催告は義務で、免許の取消しは任意です。
7.保管替え
主たる事務所を移転し、営業保証金の供託先を変えることを保管替えといいます。営業保証金を金銭で供託している場合と、有価証券で供託している場合とで、その方法が異なります(と言いますか、正確には金銭を移転させることを「保管替え」と呼びます)。
現金のみで供託 → 従前の供託所に対して、移転後の主たる事務所の最寄りの供託所への保管替えを請求する。
金銭+有価証券 or 有価証券のみで供託 → 移転後の主たる事務所の最寄りの供託所へ新たに供託する(下で説明しますが、従前の営業保証金は公告なしに取り戻せます)。
金銭+有価証券で供託している場合、現金の分を保管替えし、有価証券の分は新たに供託するというのは不可です。これも覚えておいてください。
■営業保証金の還付
営業保証金から債権の弁済を受けることを「営業保証金の還付」と言います。
1.還付を受けられる者
宅建業者と取引をし、その宅建業に関する「取引」について生じた債権を有する者(宅建業者を除くH29法改正)に限られます。宅地建物購入者や、その媒介・代理の依頼者などですね。ここでは「取引」に当てはまらないケースが重要で、広告業者や内装業者、給料未払いの宅建業者の使用人などは含まれないということを覚えておいてください。
2.還付を受けられる額
還付額は「営業保証金の範囲内」に限られます。例え債権額が2,000万円だとしても、営業保証金の額が1,500万円ならば、残りの500万円は営業保証金からは還付されず、宅建業者の他の財産を探すことになります。
3.供託金の不足
営業保証金が還付され、供託すべき営業保証金額に不足が生じた場合、宅建業者は還付した額に相当する営業保証金を新たに供託しなければなりません。免許権者より不足の通知があった日から2週間以内に供託します。この期限を過ぎても供託しない宅建業者は、業務停止処分を受けることがあります。不足額を供託したら、供託からまた2週間以内に供託した旨を免許権者に届け出ます。
■営業保証金の取戻し
営業保証金を供託しておく必要がなくなった宅建業者は、供託所に対して「営業保証金の取戻し」を請求することができます。
以下、営業保証金の取戻しができるケースです。
・ 免許を取り消された場合
・ 免許を更新せず失効した場合
・ 一部の事務所を廃止した場合
・ 保管替えできずに二重供託となった場合
・ 保証協会の社員となった場合
しかし原則として、上の3つは債権者に対して6ヶ月を下らない期間(=6ヶ月以上)を定めて権利を申し出る旨を公告し、その期間内に申し出がなかった場合でなければ取り戻すことができません。(取戻し事由発生から10年を経過すれば公告不要)
これに対して、下の2つは公告なしに直ちに取り戻すことができます。上の保管替えでも触れましたが、有価証券で供託していたために保管替えではなく新たに供託した場合は、公告不要ですぐに取り戻せます(=二重供託)。保証協会につきましては次ページでお話しますが、この2つはすごく重要です。
以上、営業保証金について説明しました。次ページでは「弁済業務保証金」についてお話します。営業保証金との比較がまた紛らわしくなりますので、ここをしっかりと復習しておいてください。
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