住宅金融支援機構法の買取型、保証型とは?

宅建試験の税その他解説:「独立行政法人住宅金融支援機構法」について解説します。住宅金融公庫法に代わって平成19年より施行された法律です。宅建試験で出題可能性のある住宅金融支援機構の業務内容を見ていきますが、重要知識は出題され尽くされましたので過去問を解いておけば得点できます。得点源ですが、5点免除対象科目ですので登録講習を受講された方は勉強する必要はありません。

住宅金融支援機構法の宅建解説

住宅金融支援機構の目的

独立行政法人住宅金融支援機構の目的は、

1.一般の金融機関による資金融通の支援
2.一般の金融機関による資金融通の補完
3.良質な住宅の建設等を促進するための情報の提供

となっています。
宅建合格!住宅金融支援機構

住宅金融支援機構の主な業務

支援業務と直接融資は別モノですので注意してください(=直接融資を行うケースにおいて、支援業務としてその制度を利用することはできません)。

1.証券化支援業務

証券化支援業務とは、一般金融機関が長期・固定金利の住宅ローンを提供することを機構(住宅金融公庫)が支援する業務です。

一般金融機関の住宅ローンを機構(住宅金融公庫)が買い取った上で証券化を行うことで、一定のリスクを投資家に転嫁します。これにより、従来、住宅金融公庫が直接融資業務によって提供していた長期・固定金利の住宅ローンが、一般金融機関によって提供することが可能となりました。

この証券化支援が機構のメイン業務です。それまでの住宅金融公庫が直接融資業務を中心としてきたのと区別しておいてください。つまり「独立行政法人住宅金融支援機構」とは「証券化支援を主たる業務とする政府全額出資の組織」というわけです。

証券化支援業務を分かりやすくまとめますと、

・一般金融機関が行う住宅の建設や購入に必要な資金の貸付債権の譲受け(買取型)
・上記貸付債権を担保とする債券などに係る債務保証(保証型)

となります。この、住宅ローン利用者や一般金融機関、投資家を取り込んだ住宅金融支援機構の証券化支援業務は「フラット35」と呼ばれおり、一般金融機関と住宅金融公庫が提携して実現した長期固定金利(最長35年)の、安心して借りられる住宅ローンとなっています。宅建試験で出題されるのは圧倒的に「買取型」となります

フラット35(買取型)の流れ
金融機関が債務者(顧客)対して長期・固定金利の住宅ローン(フラット35)を実行する。
→ 金融機関は、住宅ローンを融資すると同時に当該住宅ローン債権を住宅金融支援機構に譲渡する。
→ 住宅金融支援機構は、金融機関から譲渡された住宅ローン債権を、信託銀行等に担保目的で信託する。
→ 住宅金融支援機構は、信託した住宅ローン債権を担保として資産担保証券 (MBS)を発行する
→ 債券市場(投資家)は、MBSを購入して代金を住宅金融支援機構に支払う
→ 住宅金融支援機構は、MBSの発行代金により金融機関に対して住宅ローン債権の買取代金を支払う。
→ 債務者は、金融機関に住宅ローンの元利金の返済する(金融機関は住宅金融支援機構から管理回収業務を受託)
→ 金融機関は、債務者からの返済金を住宅金融支援機構へ引き渡す。
→ 住宅金融支援機構は、債務者からの返済金を元に、発行したMBSについて投資家に対し元利払いを行う。

債権譲受けの対象となる貸付債権
住宅の建設や購入、改良のための貸付け(付随する土地や借地権の取得資金も含む)
申込者本人または親族が居住する住宅
・償還期間が15年以上50年以下(50年=フラット50。最もポピュラーなフラット35は最長35年)
貸付利率が全期間について定まっていること

1つめは改良も含まれる点、付随する土地取得資金も含まれる点、新築と記載がないので中古住宅も含まれる点と全てが重要です。2つめは賃貸住宅の建設や購入は含まれない点、3つめは具体的数字が出題されたことはないので「民間金融機関が貸付ける長期・固定金利の住宅ローン債権を買取りの対象としている」という点だけ覚えておきましょう。4つめですが、貸付利率は金融機関により異なるという点も覚えておいてください。

また住宅金融支援機構は、証券化支援事業(買取型)において、バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性、耐久性・可変性に優れた住宅を取得する場合に、貸付金の利率を一定期間引き下げる制度を実施しています。正しい肢としてこのままの文章で定期的に、数年に一度出題されていますので頭の片隅に入れておきましょう。

2.融資保険業務

住宅金融支援機構が中小金融機関をはじめとする一般住宅ローンについて保険を行うことで、その円滑な供給を促進します。住宅金融支援機構と金融機関との間で保険契約を締結し、債務者の返済が滞った場合に住宅金融支援機構が金融機関に保険金を支払います。

3.住情報提供業務

住宅の建設・購入・移転・改良をしようとする一般消費者または住宅建設等に関する事業者に対して、必要な資金を調達するための情報を提供します。また、良質な住宅の設計やその他建設等に関する情報提供、相談などの援助を行います。

4.直接融資業務

これまで住宅金融公庫が行っていた直接融資業務は、民間だけでは対応が困難な災害関連融資などに限定して実施されます。住宅金融公庫がこれまで融資を行った個人向け住宅ローンなどは、住宅金融支援機構が債券を引き継ぐので、住宅金融公庫から融資を受けた方はこれまでと同様に住宅金融支援機構に返済を続けることができる点には注意です。

以下、住宅金融支援機構が直接融資を行うことができるケースです。

災害で家をなくした人が新しい家を建設、購入する場合
災害で家が壊れた人が家を補修する場合
阪神淡路大震災や東日本大震災などに対処するための法律の規定による貸付
高齢者や子育て家庭に適した良好な住宅性能を有する賃貸住宅を建設する場合
高齢者に適した良好な住宅性能を有する住宅に改良する場合
マンションの共用部分の改良に必要な場合

とりあえずこの6個を覚えておけば大丈夫でしょう。というより、この6個はフンワリとでいいので確実に覚えておいてください。住宅金融支援機構と、前身である住宅金融公庫との一番の違いは「一般の個人に対して直接融資をするかどうか」と言っても過言ではないでしょう。

補足として、住宅金融支援機構は、経済情勢の著しい変動に伴い住宅ローンの元利金の支払いが著しく困難となった場合に、償還期間の延長等の貸付条件の変更や延滞元利金の支払方法の変更を行うことができる(支払いの免除等は不可)という点、高齢者が自ら居住する住宅に対して行うバリアフリー工事または耐震改修工事に係る貸付けについては、毎月の返済は利息のみとし、元金は死亡時に一括返済することも認められる点を覚えておいてください。

後者の高齢者向け返済特例制度は直接融資の場合にのみ適用され、証券化支援事業でこの制度を利用することはできませんのでひっかけ問題に注意してください。

5.団体信用生命保険業務

貸付けを受けた者とあらかじめ契約を締結して、その者が死亡または重度障害となった場合に、生命保険等の保険金を当該貸付けに係る債務の弁済に充当します。


住宅金融支援機構の業務の実施

住宅金融支援機構は、業務の実施にあたり一般金融機関と適切な役割分担を図り、国民が住宅の建設等に必要な長期の資金融通が円滑に行われるよう努めなければなりません。また、住宅の質の向上を図るため、貸付債権の譲受け、債務の保証、資金の貸付条件の適切な設定など、国や地方公共団体が行う施策について協力する必要があります。


住宅金融支援機構の業務の委託

過去の宅建試験から「住宅金融公庫の業務委託」は頻出事項です。よってここは要注意です。住宅金融支援機構は、次の者に対して業務を委託することができます。

・一定の金融機関
・法律に規定する債権回収会社
地方公共団体等の一定の法人

しかし、上記業務の3番「情報の提供・相談」は他に委託することができません。これは特に重要です。


その他

以下、重要度は低いですが、一応出題可能性のあるポイントをまとめておきます。

・長期借入金および住宅金融支援機構債券

住宅金融支援機構は、その業務に必要な費用に充てるため、主務大臣の認可を受けて長期借入を行い、または機構債券を発行することができます。

・貸付債権の信託

住宅金融支援機構は、機構債券に係る債務の担保に供するため、主務大臣の認可を受けて貸付債権の一部を信託会社に信託することができます。

・みなし公務員

住宅金融支援機構の役員および職員は、刑法その他の罰則の適用について、公務に従事する職員とみなされます。

・貸金業の規制等に関する法律

住宅金融支援機構が貸金業の規制等に関する法律に規定する貸金業者から貸付債権を譲り受ける場合、貸金業法の規定は適用されません

・宅建業法との関係

住宅金融公庫が宅建業法の適用から除外されていたのに対し、住宅金融支援機構は宅地建物の取引を内容とする業務を定めていないため、宅建業法を適用除外とする条項はありません。

少し細かくなりますが、下に買取型と保証型の比較もまとめていますので余裕があればご参照ください。


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地価公示法 不当景表法
  買取型 保証型
仕組み 住宅ローン利用者が融資金を受け取った後に、住宅金融支援機構が金融機関からその人の住宅ローンを買い取り、それを担保とする債券を発行し、市場(投資家)から資金を調達する。 金融機関が提供する住宅ローンを債務者が返済できなくなった場合に、住宅金融支援機構が金融機関に対して保険金(ローン残高)を支払い、住宅金融支援機構が債務者の住宅ローン債権を取得する。
融資金額 100万円以上8,000万円以下で、建設費または購入価額(非住宅部分に関するものを除く)の90%以内。 上限8,000万円で、建設費または購入価額の90%または100%まで。
担保 融資対象となる住宅及びその敷地に住宅金融支援機構を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定する。 融資対象となる住宅及びその敷地に金融機関を抵当権者とする第1順位の抵当権を設定する。
保険 原則として、住宅金融支援機構の団信制度に加入し、別に特約料が必要となる。 原則として、金融機関の提供する団信制度に加入し、特約料の取扱いは取扱金融機関によって異なる
【宅建試験問題 平成19年ー問46】平成19年4月1日に住宅金融公庫(以下この問において「公庫」という。)は廃止され、独立行政法人住宅金融支援機構(以下この問において「住宅金融支援機構」という。)が設立された。住宅金融支援機構の業務に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

1.住宅金融支援機構は、住宅の建設、購入、改良若しくは移転(以下この問において「建設等」という。)をしようとする者又は住宅の建設等に関する事業を行う者に対し、必要な資金の調達又は良質な住宅の設計若しくは建設等に関する情報の提供、相談その他の援助を業務として行う。
2.住宅金融支援機構は、子どもを育成する家庭又は高齢者の家庭に適した良好な居住性能及び居住環境を有する賃貸住宅の建設に必要な資金の貸付けを業務として行う。
3.住宅金融支援機構は、事業主又は事業主団体から独立行政法人雇用・能力開発機構の行う転貸貸付に係る住宅資金の貸付けを受けることができない勤労者に対し、財形住宅貸付業務を行う。
4.住宅金融支援機構は、公庫が機構の設立前に受理した申込みに係る資金の貸付けのうち、住宅金融支援機構の設立から半年以内に実行するものに限り、資金の貸付けを業務として行う。
1 正:住宅金融支援機構は、住宅の建設・購入・改良・移転をしようとする者または住宅の建設等に関する事業を行う者に対して、必要な資金の調達、良質な住宅の設計、建設等に関する情報の提供、相談その他の援助を行う
2 正:その通り(上記の直接融資業務を参照)
3 正:細かい知識ですが、その通り
4 誤:住宅金融支援機構は住宅金融公庫が機構の設立前に受理した申込みに係る資金の貸付けを業務として行い、半年以内という制限はない
【宅建試験問題 平成23年ー問46】独立行政法人住宅金融支援機構(以下この問において「住宅金融支援機構」という。)に関する次の記述のうち、誤っているのはどれか。

1.住宅金融支援機構は、バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性、耐久性・可変性に優れた住宅において、優良住宅取得支援制度を設けている。
2.住宅金融支援機構は、証券化支援事業(保証型)において、高齢者が自ら居住する住宅に対してバリアフリー工事又は耐震改修工事を行う場合に、債務者本人の死亡時に一括して借入金の元金を返済する制度を設けている。
3.住宅金融支援機構は、証券化支援事業(買取型)において、民間金融機関が貸付ける長期・固定金利の住宅ローン債権を買取りの対象としている。
4.住宅金融支援機構は、経済情勢の著しい変動に伴い、住宅ローンの元利金の支払いが著しく困難となった場合に、償還期間の延長等の貸付条件の変更を行っている。
1 正:バリアフリー性、省エネルギー性、耐震性、耐久性・可変性に優れた住宅について、優良住宅取得支援制度を設けてフラット35Sなどの名称で運営している
2 誤:高齢者向け返済特例制度として、高齢者が自ら居住する住宅に対して行うバリアフリー工事または耐震改修工事については、毎月の返済は利息のみとし、元金は死亡時に一括返済するという制度が設けられている
3 正:証券化支援事業(買取型)において買取りの対象となるのは、1償還期間が原則として15年以上50年以下であるものであること、2貸付けの時に貸付金の利率が償還期間の全期間について定まっていることであり、つまり長期・固定金利の住宅ローン債権であることが要求される
4 正:経済情勢の著しい変動など、住宅金融支援機構が定める事由により元利金の支払いが著しく困難となった場合、住宅金融支援機構は、貸付条件の変更または延滞元利金の支払方法の変更をすることができる