無権代理と表見代理とは?

宅建試験の民法解説:代理の3回目、「無権代理と表見代理」についてお送りいたします。とても重要ですので、繰り返し何度も読んでみてください。より詳しい解説はこちら→無権代理の難問対策

無権代理と表見代理の宅建解説

代理人と称して行為をした者に、実は代理権がなかった場合
代理人が与えられた代理権の範囲を超えた行為をした場合
以前は代理権があったが、行為時には消滅していた場合

これらは無権代理となります。そして無権代理行為であっても、それがまるで本当に代理権があるように見えるときは、表見代理となります。

宅建合格!表見代理のパターン
では、試験に出そうなポイントを順番に見ていきます。ここは難易度高めですので頑張りましょう。


無権代理の効果

無権代理人が結んだ契約は無効であり、原則として本人に効力は生じない!(代理人にも効力は生じません)


無権代理における本人の追認権

本人が無権代理行為を追認すると、原則として「契約時」に遡って有効な代理行為があったことになる!(遡及しない旨の特約も有効)

本人は、無権代理行為(=契約)を追認して、正当な代理によってなされた場合と同じ効果を生じさせることができます。追認をするのに、無権代理人や相手方の同意は必要なく、また、追認の相手方は、無権代理人でも契約の相手方でも構いません。ただし、無権代理人に対して追認をした場合は、相手方が追認の事実を知らないと、相手方に対しては追認の効果を主張することができません。以前解説した、「黙示の追認」も認められることも覚えておいてください。


無権代理における本人の追認拒絶権

追認権は「権利」であって、「義務」ではない!

無理に追認をする必要もありません。


無権代理における相手方の催告権

相手方は相当の期間を定め、本人に対して追認をするか否か確答すべき旨を催告することができ、確答がなかった場合は、「追認拒絶」があったものとみなされる!

相手方は、契約が有効なのか無効なのか不安定な状態に置かれています。そこで民法は、相手方に「催告権」と「取消権」を与えています。この催告権は、契約当時に、その契約が無権代理であることを知っていた場合にも認められるということも覚えておいてください。


無権代理における相手方の取消権

相手方は、当該契約を取り消すことができる!

これには重要な要件が2つあります。契約時に無権代理であることを知らなかった(過失の有無は問わない)本人がまだ追認をしていない。この2つの要件を満たせば、相手方は契約を取り消すことができます。


無権代理人と相手方の間の効果

相手方が「善意無過失」ならば、無権代理人に対して、契約の履行または損害賠償請求をすることができる!(相手方に過失があっても、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合は責任追及可

履行か損害賠償かは、相手方の選択によります。ただし、無権代理人が制限行為能力者である場合は、これらの請求はできません。


表見代理の効果

代理権授与の表示による表見代理
本人が契約の相手方に対して、ある者に代理権を与えたと表示した
実際には代理権を与えていないのに、口頭や書面等でウソを言った場合です。

権限踰越による表見代理
基本権限はあるが、それが代理権限の範囲を逸脱してなされた
賃貸契約の代理を頼んだのに、それを売却してしまった場合等です。

権限消滅後の表見代理
代理権が消滅して、もはや代理人でない者が代理行為をなした
かつては代理権が存在し、かつて有した代理権の範囲内で代理行為を行った場合です。

これらの表見代理が行われた場合、「善意無過失」の相手方は、次の3つの方法のうち1つを自由に選択して主張することができます。

・表見代理を主張して本人の責任を問う(催告し契約を履行させる)!
・無権代理として無権代理人の責任を問う!
・無権代理行為として取り消して、契約を白紙に戻す!


本人の地位と無権代理人の地位が同一人に帰した場合

本人と無権代理人が親子だった場合などのお話です。

本人が死亡し、無権代理人が本人を相続した場合 、
単独相続=当然に有効となる!
共同相続=相続人全員による追認権の行使により有効となる!

無権代理人は自業自得であり、契約は有効となって、相手方の請求を拒むことができなくなります(追認拒絶不可)。ただし、他にも相続人がいる場合は、他の相続人を保護するために、当然に有効とはなりません。

無権代理人が死亡し、本人が無権代理人を相続した場合 は当然には有効とならず、追認を拒絶することができます。もともと本人は、追認を拒絶できる立場にあったのですから当たり前ですね。

3回に分けてお送りいたしました代理制度はこれで終了です。特にこの無権代理・表見代理はとても重要です。どこが試験に出てもおかしくないので、必ず押さえておいてください!(難易度高めなので、本試験直前に合格レベルに達していない場合は捨ててしまい、もっと覚えやすい所を固めるのもテクニックの一つです)


分かりやすい民法解説一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< >>> 次のページ >>>
自己契約と双方代理 弁済
【宅建試験問題 平成9年ー問1】Aが、Bの代理人としてB所有の土地をCに売却する契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。なお、Bは、Aに代理権を与えたことはなく、かつ、代理権を与えた旨の表示をしたこともないものとする。

1.契約は、B又はCのいずれかが追認したときは、有効となる。
2.Aは、Bの追認のない間は、契約を取り消すことができる。
3.AがBに対し追認をするかどうか確答すべき旨催告し、Bが確答をしないときは、Bは追認を拒絶したものとみなされる。
4.Bが追認を拒絶したときは、Aは自ら契約を履行する責任を負うことがある。
1 誤:追認権は、本人(B)にのみ認められる
2 誤:取消権は、相手方(C)にのみ認められる
3 誤:催告権は、相手方(C)にのみ認められる
4 正:相手方(C)は善意無過失で、無権代理人(A)が制限行為能力者でない場合には、本人(B)の追認がなければ、無権代理人に対して履行または損害賠償請求ができる
【宅建試験問題 平成8年ー問2】Aが、Bの代理人として、Cとの間でB所有の土地の売買契約を締結した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.AがBから土地売買の代理権を与えられていた場合で、所有権移転登記の申請についてCの同意があったとき、Aは、B及びC双方の代理人として登記の申請をすることができる。
2.AがBから抵当権設定の代理権を与えられ、土地の登記済証、実印、印鑑証明書の交付を受けていた場合で、CがBC間の売買契約についてAに代理権ありと過失なく信じたとき、Cは、Bに対して土地の引渡しを求めることができる。
3.Aが、Bから土地売買の代理権を与えられ、CをだましてBC間の売買契約を締結した場合は、Bが詐欺の事実を知っていたと否とにかかわらず、Cは、Bに対して売買契約を取り消すことができる。
4.Aが、Bから土地売買の委任状を受領した後、破産手続開始の決定を受けたのに、Cに当該委任状を示して売買契約を締結した場合、Cは、Aが破産手続開始の決定を受けたことを知っていたときでも、Bに対して土地の引渡しを求めることができる。
1 正:登記申請行為は、双方代理の例外として有効
2 正:相手方に「代理権がある」と信ずべき正当な理由がある場合には、本人が責任を負う
3 正:代理行為の意思表示に不適合があるかどうかは代理人について決するため、本人B=詐欺をした本人とされる
4 誤:破産手続開始により代理権が消滅しても、相手方が善意無過失の場合は表見代理が成立し、有効な代理行為とされるが、本肢のCは悪意のため単なる無権代理となり、CはBに対して土地の引渡しを求めることができない