自己契約と双方代理は認められる?

宅建試験の民法解説:代理の続きとして「自己契約」と「双方代理」をお送りします。

自己契約と双方代理の宅建解説

代理人は、本人を代理して自分自身と契約をすること(自己契約)や、契約当事者双方の代理人となって契約をすること(双方代理)ができません。

これらの契約がなされた場合、「無権代理」として無効(※)になります。また、無権代理であっても、それがまるで正当な代理であるような外観があり、相手方が誤信しても仕方ない場合などは、「表見代理」として有効になります。この無権代理・表見代理はとても重要ですので、次ページで詳しく解説いたします。

(※)正確には絶対的無効ではありません。無権代理で説明します。

では今回は、自己契約・双方代理の要件と、これらが有効となる場合を見ていきます。少し細かい知識になりますが、近年の宅建試験の傾向からして、十分に出題も考えられますので、頭の片隅に入れておいてください。


自己契約・双方代理の禁止

1.趣旨

事実上1人で契約することになり、正常な法律行為を望めないため

2.具体例

自己契約:買主Aと売主Bの売買契約において、BはAの代理人にもなった
双方代理:買主Aの代理人がC、売主Bの代理人もCで、CがAB間の売買契約を締結

自己契約のBは、二束三文の物をAに高額で買わせてしまう可能性があります。双方代理のCは、AまたはBのどちらかに肩入れしてしまう可能性があります。よって、利益保護のために、民法はこれらを原則として禁止しています。

3.例外

法律には例外があることを今までに何度も述べてきました。よって、自己契約・双方代理も、すべて禁止というわけではありません。では、例外を3つ挙げます。

弁済期の到来した債務の弁済
売買に基づく登記申請行為
本人の承諾がある場合

これらは、本人または当事者に不利益を及ぼすおそれがありません。1つ目と3つ目は簡単ですね。そのままです。2つ目は、簡単に言うと、司法書士の仕事です。すでに決まっている契約を登記するだけなので、双方を代理することが可能です。この3つを覚えておきましょう!

4.効力

無権代理行為となる。
しかし、追認によって有効な代理となります(詳しくは次ページで)。

では次ページで、「無権代理と表権代理」をお送りいたします。無権代理の追認など、とても重要ですが少し難しくなります。覚悟しておいてください!


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代理の基本 無権代理と表見代理
【宅建試験問題 平成3年ー問3】AがBから代理権を与えられて、契約を締結し、又は締結しようとする場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.Aが未成年者である場合、Bは、親権者の同意がないことを理由として、Aが締結した契約を取り消すことができる。
2.AがCにだまされて契約を締結した場合においても、Bは、Cの詐欺を知っていたときは、その契約を取り消すことができない。
3.AがBからB所有地の売却の代理権を与えられている場合、Aは、Bの同意がなければ、自ら買主となることができない。
4.AがBからB所有建物の賃貸の代理権を与えられている場合、Aは、B及び賃借人Dの同意があれば、Dの代理人にもなることができる。
1 誤:本人があえて制限行為能力者を代理人に選んだ以上、それを理由に取消しはできない(選任後に代理人が制限行為能力者となった場合と比較)
2 正:代理行為の不適合は原則として代理人を基準とするが、本人がその不適合を知っていたか、知らなかったことに過失がある場合には本人を基準とする
3 正:本人の同意があれば自己契約も有効となる
4 正:本人の同意があれば双方代理も有効となる