他人物売買や瑕疵担保責任の難問対策

宅建試験の民法解説:売主の担保責任」の難問対策。売買の目的物に問題があった場合に備えて、売主には特別の責任が課せられます。他人物売買から瑕疵担保責任までなかなか面倒なところですが、特に難しい言葉もないので覚えにくくはないと思います。8割方出題されますので確実にマスターしておきましょう改正民法により「契約不適合責任」として、全て債務不履行の問題に統一されます

担保責任の難問対策

改正民法売買契約をご参照ください。

他人物売買

売買の目的物である土地や建物の全部が、実は他人の物であった場合です。まず前提として、他人の物を売ってしまう契約も有効だということを覚えておいてください。そして契約を締結したにもかかわらず、売主が目的物を取得して買主に移転できない場合は、善意・悪意を問わず、買主は契約を解除することができます

更に善意の買主に限り、損害賠償の請求もできます。しかしここで注意していただきたいのは、悪意の買主でも、売主に移転不能について責任があるときは、売主の担保責任を追求するのではなく、債務不履行の規定により損害賠償請求ができるということです。絶対に損害賠償請求ができないというわけではありません。引っかけ問題に注意です。

除斥期間(=権利を行使できる期間)
→ 制限なし。善意・悪意を問わず、買主はいつでも売主の責任を追及できます。

善意の買主から悪意の売主=解除○損害賠償請求○
悪意の買主から売主(善悪問わず)=解除○、損害賠償請求×
善意の売主から善意の買主=損害を賠償して解除○、損害賠償請求×
善意の売主から悪意の買主=移転不能通知をして解除○、損害賠償請求×
悪意の売主から買主(善悪問わず)=解除×、損害賠償請求×


一部他人物売買

売買の目的物の一部が、実は他人の物であった場合です。この場合、善意・悪意を問わず、買主は代金の減額請求ができます。更に善意であれば、目的不達成の場合(=残った部分だけでは買わなかったであろう場合)には、契約の解除もできます。また善意であれば、損害賠償請求も可能です

除斥期間
善意の買主 → 知ったときから1年
悪意の買主 → 契約のときから1年


数量指示売買

数量を指示して売買した目的物の数量が、不足していた場合です。善意の買主は、代金の減額請求ができます。更に目的不達成の場合(=数量が足りないことが分かっていれば買わなかったであろう場合)には、契約の解除もできます。そして損害賠償請求も可能です。悪意の買主は何もできません

除斥期間
善意の買主 → 知ったときから1年
悪意の買主 → 関係なし

難問対策としても細かすぎる知識かもしれませんが、土地の分譲にあたり数量指示売買とは各区画の土地を指示して1坪の単価を標準として値段を定めた場合をいいます。つまり、「面積100㎡で代金1000万円」の土地売買など登記簿に従っただけの売買は、実際には表示より小さかろうが数量指示売買とはなりませんので引っかけに注意です。数量指示売買と呼べるには「面積100㎡で代金1㎡あたり10万円、合計1000万円」と単価計算されている必要があります。

また、実際の数量より超過していた場合、売主が代金増額請求をすることはできません


用益的権利による制限

売買の目的物に、地上権等がついていた場合です。用益権とは、地上権、永小作権、地役権、登記した賃借権をいいます。善意の買主は、これらの権利があると契約の目的が達成できない場合、契約を解除することができます。さらに損害賠償の請求もできます。悪意の買主は何もできません

除斥期間
善意の買主 → 知ったときから1年
悪意の買主 → 関係なし


担保的権利による制限

抵当権が設定されているものを売った場合です。善意・悪意を問わず、抵当権の実行により所有権を失った買主は、契約の解除および損害賠償の請求ができます。この担保責任が認められるには、実際に担保権が実行され、買主が所有権を失ったことが必要ですので注意してください。

除斥期間
→ 制限なし。善意・悪意を問わず、買主はいつでも売主の責任を追及できます。


瑕疵担保責任

売買の目的物に隠れた瑕疵(かし=キズ)があった場合です。善意無過失の買主は、目的物の瑕疵により契約の目的が達成できない場合、契約を解除することができます。更に損害賠償の請求もできます。瑕疵担保責任に限り、買主に善意+無過失も要求されますので注意してください。

除斥期間
善意無過失の買主 → 知ったときから1年
悪意の買主 → 関係なし

また、瑕疵担保責任につきましては、新築住宅の特例があります。売買の目的物が新築住宅である場合は、「住宅の構造耐力上主要な部分等の隠れた瑕疵」があったときに特例として、責任の内容に解除、損害賠償+瑕疵修補を要求することも認められます。そして、この場合の責任追及期間は、買主に当該住宅を引き渡してから10年間となります。この期間は特約で20年まで伸長できますが、買主に不利な特約は無効となるということに注意してください。

最後に、売買契約の際に「売主は担保責任を負わない」という特約を結んでおくことも有効だということも覚えておいてください。しかし、その特約があった場合でも、売主が目的物に問題があることを契約前から知っていて、それを買主に告げなかったときは、売主は責任を負うということに注意です。また、売主が目的物の全部または一部を第三者に譲渡したり、目的物の上に権利を設定して買主に完全な権利を取得させなかった場合も特約は無効となり、売主は担保責任を免れなくなります。

売主の担保責任」(通常版)のまとめ表も役に立ちますのでご確認ください。


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連帯保証の難問対策 共有の難問対策
【宅建試験問題 平成元年ー問4】土地の売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.その土地が第三者の所有であって、当該第三者に譲渡の意思がないときは、契約は無効となる。
2.その土地に隠れた瑕疵があって、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、瑕疵の程度に関係なく、契約を解除することができる。
3.その土地に権利を主張する者がいて、買主が買い受けた土地の所有権の一部を失うおそれがあるときは、買主は、売主が相当の担保を提供しない限り、その危険の限度に応じて代金の一部の支払いを拒むことができる。
4.その土地に抵当権が設定されていて、買主がそのことを知らなかったときは、買主は、その事実を知ったとき、抵当権行使の有無に関係なく、契約を解除することができる。
1 誤:目的物の所有者に譲渡の意思がなかったとしても、当事者間においては他人物売買も有効
2 誤:瑕疵担保責任で契約解除ができるのは、買主が瑕疵の存在を知らず、かつ、そのために目的を達成できないとき 債務不履行がその契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であるときを除き解除可能
3 正:売買の目的について権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利を失うおそれがある場合、買主は、その危険の限度に応じて、代金の全部または一部の支払を拒むことができる(売主が相当の担保を供したときを除く)
4 誤:抵当権の行使により売買の目的物である不動産の所有権を失った場合、買主は、善意悪意を問わず契約解除をすることができる