宅建試験の民法解説:「売主の担保責任」の難問対策。売買の目的物に問題があった場合に備えて、売主には特別の責任が課せられます。他人物売買から瑕疵担保責任までなかなか面倒なところですが、特に難しい言葉もないので覚えにくくはないと思います。8割方出題されますので確実にマスターしておきましょう。改正民法により「契約不適合責任」として、全て債務不履行の問題に統一されます。
- 担保責任の難問対策
改正民法により大きく変わっています。ここでは要点のみ記載しておきますので、より詳細は改正民法「売買契約」をご参照ください。表なども使い分かりやすくまとめています。重要です。必読です!
従来の他人物売買や数量指示売買など「売主の担保責任」として個別の規定はなくなりましたが、売主の責任として「担保責任」という言葉は残り、売主の責任を総称して「契約不適合責任」となっています。
■権利移転における売主の義務
売主は、買主に対して、登記や登録その他の売買の目的である権利の移転について、対抗要件を備えさせる義務を負います。
これは地味に重要です。他のところで絡んできます。とりあえず「売主は買主に対抗要件となる登記等を移転する義務がある」ということを覚えておいてください。
■他人物売買における売主の義務
従来の民法では、「売主の担保責任」として他人物売買や数量指示売買などそれぞれのケースにおいて売主や買主が善意や悪意の場合など個々の規定を定めていました。それが改正民法では債務不履行としてまとめられています。他人物であることについて善意である売主は契約を解除できるなど、細かい規定はなくなりました。
他人の権利(一部他人物を含む)を売買の目的とした場合、売主は、その権利を取得して買主に移転する義務を負います。これだけです。買主の善意悪意も関係ありません。移転が無理なら以下の債務不履行責任の問題となってきます。
■買主の追完請求権
引き渡された目的物が種類、品質、数量に関して契約内容に適合しないものである場合、買主は、売主に対して、
1.目的物の修補
2.代替物の引渡しまたは不足分の引渡し
による履行追完請求をすることができます。上でも触れましたが、従来の数量指示売買等が債務不履行としてまとめられた形です。そしてこの場合、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法で履行の追完をすることもできます。
他人物売買や一部他人物売買において売主が権利を取得して移転できない場合は、買主は善意悪意に関係なく責任を追及できますが(=移転できなければ契約不適合と言える)、数量不足などを知って契約をした買主は責任を追及することができません。数量不足について悪意である場合、不足を知っていて契約したのですから、契約内容に不適合があるとは言えないということです。
また、買主の帰責事由により生じた不適合については、買主は追完請求ができないということも覚えておいてください。
■買主の代金減額請求権
上記の追完請求ができるケースにおいて、買主が相当期間を定めて履行追完の催告をし、その期間内に履行の追完がない場合、買主は、その不都合の程度に応じて代金減額請求をすることができます。
追完請求を行い、行動してくれなければ催告し、それでもダメなら代金減額請求と、債務不履行があったときの買主の権利が段階的となっていますので、ここまで整理しておいてください。
そして、催告不要=無催告で代金減額請求ができる場合も重要です。
1.履行の追完が不能であるとき
2.売主が履行追完を拒絶する意思を明確に示したとき
3.特定日時や一定期間に履行をしなければ契約の目的を達することができず、売主が履行を追完せずその時期を経過したとき
4.上記3つ以外で、買主が催告をしても履行追完の見込みがないことが明らかなとき
この4つは覚えておきましょう。
そして追完請求と同じく、買主の帰責事由により生じた不適合については、買主は代金減額請求をすることはできません。
■買主の損害賠償請求権と解除権
追完請求権や代金減額請求権を行使しても、それとは別に損害賠償請求や解除を行うことができます。
損害賠償請求につきましては改正民法「債務不履行」をご参照いただき、ここでは従来の売主の担保責任に関連する次の1つだけ覚えておいてください。
従来の売主の担保責任において、損害賠償請求は買主が善意または隠れたる瑕疵であれば善意無過失の場合などに認められるとされていましたが、前述の通り、売主の担保責任は債務不履行責任としてまとめられていますので、債務者の帰責事由の有無次第で損害賠償請求ができるかどうかが決まることとなります。
買主の善意悪意ではなく、売主の帰責事由が基準ということですね。
解除につきましても詳細は改正民法「契約の成立から解除」をご参照いただくとして、ここでは「契約の目的を達することができないとき」云々といった概念がなくなり、契約内容や目的物に「不適合があるか」で判断されることになったという点を覚えておいてください。
ここでは「従来の売主の担保責任」と「改正民法の契約解除」を織り交ぜた素敵な問題を作ることもできますね。
「催告による解除は、債務不履行が軽微な場合は解除することができない」ということはお伝え済みですが、裏を返すと「売主は、債務不履行が軽微な場合は催告による解除を拒絶することができる」と言えます。
売主が目的の達成が可能であると主張しても → 軽微な不適合でなければ解除される
買主が目的を達成できないと主張しても → 軽微な不適合であれば解除できない
となります。出題しやすいところだと思います。
■担保責任の期間
従来の担保責任の追及は「買主が瑕疵の存在を知ったときから1年以内に行使する」とされていましたが、何をどこまで請求するのが「行使する」の内容なのか曖昧でした。
そこで改正民法では「買主が不適合を知ったときから1年以内に売主に通知する」ことで売主に責任追及ができることとなりました。
不適合の内容を調べて損害額を算定する必要はありません。不適合がある旨を1年以内に通知さえすれば、追完請求、代金減額請求、損害賠償請求、契約解除を行うことができます。
ただし、引渡しのときに売主が不適合を知り、または重過失により知らなかったときは、1年の期間制限なく責任を追及することができます。ここも重要です。担保責任を負わない旨の特約が有効な点は変わっておらず、知りながら告げなかった事実については責任を免れない点も従来通りです。
また、1年以内に通知を行った後は消滅時効の一般原則に従うこととなり、引渡しから10年、不適合を知ったときから5年が責任追及可能期間となります。
また当規定は目的物の種類または品質に関して契約不適合があった場合における規定です。数量不足については「1年以内に通知」ではなく消滅時効の一般原則に従うこととなります。「何が種類または品質に関する不適合なのか」はケースバイケースとなりますので深くは出題されないはずですが、数量不足だけは確実に期間制限が適用されない点は押さえ、ひっかけ問題に注意してください。
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