宅建試験の民法解説:「詐欺と強迫」。重要ですが簡単ですので、ササッとマスターしてしまってください。少し難しいのは詐欺による取消における「善意無過失の第三者」の概念のみです。ちなみに「強迫」は、刑法では「脅迫」と書きます。では、詐欺と強迫の比較を見ていきましょう。より詳しい解説はこちら→詐欺と強迫の難問対策
- 詐欺と強迫の宅建解説
■詐欺とは
他人をだまして錯誤に陥らせ、それに基づいて意思表示をさせること。
■強迫とは
他人に恐怖を与え、その恐怖によって意思を決定、表示させること。
■AがBに詐欺または強迫を行った場合
詐欺:Bは常にその意思表示を取り消すことができる。
強迫:Bは常にその意思表示を取り消すことができる。
■第三者Cによる詐欺または強迫(買主A、詐欺または強迫を受けた売主B)
詐欺:Aがその事実を知り、または知ることができたときに、Bはその意思表示を取り消すことができる。
強迫:Aの知・不知に関わらず、Bは常にその意思表示を取り消すことができる。
詐欺の場合、上記の悪意に加えてAが善意でも過失があれば取り消すことができるという点に注意が必要です(=第三者が売主をだました場合、買主が悪意または善意有過失のときに売主は取消可能。買主が善意無過失なら取消不可)。上記の当事者が2人である場合は被詐欺者に過失の有無は問わないという点、心裡留保や虚偽表示の第三者は過失があっても保護される点と区別しておいてください。
■詐欺・強迫による取消と第三者保護
1.詐欺
ここです。少しだけ難しいです。少し詳しくいきます。取消による効果をもって、善意無過失の第三者に対抗することはできません。難しいのは善意の第三者とは誰を指すのか?ということです。この場合の第三者とは、取消し前に利害関係を持った者のことです。取消し後に利害関係を持った第三者については、普通に登記の先後の問題となります。
例えば、売主であるBさんをだましてBさんの不動産を買ったCから、Aさんが事情を知らないでさらにその不動産を買ったとします。この場合のAさんは善意の第三者に該当します。つまりBさんは、BC間の売買契約を取り消して無効になったことをAさんに対抗することができません。
これではBさんがかわいそうではないでしょうか?しかし理由があります。民法はだまされたBさんよりも、何も知らないAさんを保護するのです。だまされたBさんにも少しは落ち度があって、何も知らないAさんより不利益を受けても仕方ないというわけです。
では、善意無過失かの判断基準となる第三者に該当しない第三者とはどういった者でしょうか?例を2つ挙げます。1.1番抵当権が詐欺によって放棄された場合の2番抵当権者。2.連帯債務者の1人が詐欺によって代物弁済した場合の他の連帯債務者。これらの者は善意無過失の第三者には該当しません。
これらの者は善意無過失かを検討するまでもなく第三者には該当しません。つまり「善意無過失の第三者」とは、「何も知らずに、詐欺による意思表示に基づいて取得された権利について新たな利害関係に入った者」をいいます。少し難しいですが、上記のCさんは新たに不動産を買って利害関係が生まれてますね?
一方、2番抵当権者は何もしていません。1番抵当権者がだまされて、自動的に繰り上がっただけです。他の連帯債務者というのも同じです。単に反射的に利益を得たに過ぎません。
2.強迫
取消による効果をもって、善意の第三者にも対抗することができる。詐欺の場合と異なって、第三者よりも表意者が保護されます。強迫されていたのだから仕方なく、だまされるよりも帰責性が低いというわけです。
つまり今回の要点をまとめますと、詐欺の場合は、第三者が詐欺を行った場合や善意無過失の第三者に対して制限がありますが、強迫の場合は何でもアリで、誰にでも取消を対抗できる!ということです。
詐欺による取消の第三者の概念が少し難しいですが、これは事例で覚えてしまったほうがいいかもしれません。この場合は第三者に該当する、この場合は第三者に該当しない、と、問題を見ながらそのまま覚えてしまってください。
補足として、詐欺とは他人にだまされ錯誤に陥ってなした意思表示ですから、その錯誤が重要な錯誤にあたるときは、「詐欺による取消」または「錯誤による取消」のどちらを選択して主張することもできるということも覚えておいてください。
また「無効と取消の総まとめ」のページに比較表を作ってありますのでそちらも参考にしてください。
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