弁済の民法大改正

弁済の改正

今回は『弁済』の改正民法についてお送りします。

とても簡単で、権利関係の得点源ですね。
改正点も簡単です。

出題された場合は絶対に落とせない弁済の改正点を見ていきましょう!


第三者の弁済

従来は「利害関係を有しない第三者は債務者の意思に反して弁済ができない」と されていましたが、弁済について正当利益を有しない第三者は、債務者および債権者の意思に反して弁済をすることはできないとされました。そして「第三者」の定義もより明確となっています。

利害関係ではなく正当利益さえあれば弁済が可能となります。友人や親族が勝手に弁済できない点は変わっていませんが、保証人や物上保証人、借地上の建物賃借人等は、正当な利益を有する第三者として弁済が可能となります。

従来の利害関係人も正当利益を有する第三者に該当することがあります。「正当利益を有する第三者は債務者の意思に反して弁済できる」ということだけ覚えておけば十分で、「利害関係人」と「正当利益を有する者」の違いを細かく覚える必要はありませんが、

利害関係人      =他人の債務を弁済する者
正当利益を有する第三者=自らの債務を負担する者も含む

という形となります。何を言っているのか分からないかもしれませんので例を挙げますと、次のようになります。

利害関係人    =物上保証人、担保不動産の第三取得者や賃借人、後順位抵当権者など
正当利益を有する者=物上保証人、担保不動産の第三取得者や賃借人、後順位抵当権者、
          保証人連帯保証人連帯債務者など

ここでは次の3点を覚えておきましょう。

・債務者の意思に反する弁済であることを債権者が知らなかった場合、その弁済は有効となる

・債務者の意思に反する弁済であることを債権者が知っていた場合、債権者はその弁済の受領を拒否することができる

・正当利益を有しない第三者からの弁済であっても、その弁済が債務者の委託による場合で、それを債権者が知っていたのであれば拒絶権は認められない
改正前 改正後
利害関係を有しない者は、債務者の意思に反して第三者弁済をすることができない 正当な利益を有しない第三者は、債務者および債権者の意思に反して弁済することができないと変更
(債務者の意思に反することを債権者が知らなかったときは有効な弁済となる)
制限行為能力者がした弁済を取り消しても、有効な弁済がなければ弁済した物を取り戻すことはできない 左記の規定を削除(=有効な弁済がなくても制限行為能力者が弁済した物を取り戻すことができる)


受領権者としての外観を有する者

受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に対しての弁済は、弁済者が善意無過失のときに限り効力を有します

従来の規定=「善意無過失でした準占有者(=受取証書の持参人など)に対する弁済は有効となる」の「準占有者」は分かりにくいということで、「準占有者」→「受領権者以外の者であって取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」と明確(?)な名称に改正されました。

むしろ分かりにくいような・・
優しい日本語にしようとして複雑になる、民法の悪い癖です。
「受領権者の外観を有する者」と略して浸透していくと思われます。

改正前は受取証書の持参人=準占有者でしたが、単に受取証書の持参人というだけでは受領権者としての外観を有する者には該当せず、取引上の社会通念に照らして~という要件が加わり、少し慎重になっています。

そこそこ頻出分野でしたので注意。
改正前 改正後
受領権限のない債権の準占有者への弁済は、債務者が善意無過失であれば有効 左記の規定は変わらず、「準占有者」が「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に変更
受取証書の持参人は、弁済の受領権限があるものとみなす 左記の規定を削除(単に受取証書の持参人というだけでは受領権者としての外観を有する者に該当しない)


代物弁済

弁済をすることができる者(=弁済者)が、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、弁済者が他の給付をしたときは、その給付は弁済と同一の効力を有します。

従来の民法における代物弁済は、「債務者」が「他の給付をする」ことで成立する要物契約でした。しかし改正民法では第三者も代物弁済ができるとして、「債務者」を「弁済をすることができる者(=弁済者)」に置き換え、当事者の合意で成立する諾成契約とすることになりました。

代物弁済自体は合意により成立しますが、代物弁済の効果は実際に給付をしたときに生ず点に注意しておいてください。


特定物の引渡し

債権の目的が特定物の引渡しである場合において、契約その他の債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして引渡しをすべきときの品質を定めることができないときは、弁済者は、その引渡しをすべきときの現状で引き渡せば足ります

従来の特定物の引渡しは、「引渡しをすべきときの現状で引渡しをすれば足りる」とされていましたが、それでは瑕疵(不適合)が見つかったときに買主等が可哀想です。

そこで改正民法では「現状」に条件を付け、現状引渡しで足りるのは「契約その他の債権発生原因及び取引上の社会通念に照らして引渡しをすべきときの品質を定めることができないとき」のみとなりました。


弁済の時間

法令または慣習により取引時間の定めがあるときは、その取引時間内に限り、弁済または弁済の請求をすることができます

従来の民法では「弁済の場所」だけを定め、弁済をする時間についての規定がありませんでしたが、「法令または慣習により定めがあるとき」は、その時間内に限り取引きができる旨が新設されました。

ちなみに弁済場所は、特定物の引渡しについては債権発生時にその物が存在した場所、その他の弁済は債権者の現在の住所でしたね。
改正前 改正後
規定なし 法令・慣習により取引時間の定めがある場合、その取引時間内に限り弁済または弁済の請求ができる
規定なし 預金・貯金口座への払込みによる弁済の効力は、債権者が払い戻せるときに発生する


弁済による代位

債務者のために弁済をした者は、債権者に代位します。第三者Cが債務者Bに代わって債権者Aに弁済すれば、CはAが有していた担保権等をAに代わって行使できるということです。

従来の「任意代位」「法定代位」という概念はなくなり、弁済をした者は代位が可能となります。

債権者は正当利益を有しない第三者からの弁済を拒否することができますので、第三者が債権者に代位しても、債権者が不測の損害を被ることはありません。代位を認めたくなければ事前に弁済を拒否すれば済む話です。よって、従来の債権者の承諾云々といった任意代位・法定代位の要件はなくなりました(従来の要件詳細は割愛します)。

弁済による代位の効果として、厳選して次の3つだけ余裕があれば押さえておいてください(難問対策)。

1.債務者から担保の目的となっている財産を譲り受けた者=第三取得者は、保証人および物上保証人に対して債権者に代位しない
2.第三取得者の一人は、各財産の価格に応じて他の第三取得者に対して債権者に代位する。
3.物上保証人の一人は、各財産の価格に応じて他の物上保証人に対して債権者に代位する。

また、債権の一部について代位弁済があった場合、代位者は、債権者の同意を得て、弁済した価額に応じて債権者と共にその権利を行使することができます

ほんの少しでも弁済されたことによって代位者が好き勝手に権利行使できるとなると、法の抜け道として悪用され、債権者の権利が害される可能性が出てきます。

そこで一部弁済をした者より債権者を保護するため、債権者の権利を優先させるため、一部弁済による代位者の権利行使には、債権者の同意が必要となりました。ここは出題可能性ありですね。
改正前 改正後
債務者のために弁済をした者は、弁済と同時に債権者の同意を得て債権者に代位できる 任意代位とされていたものも債権者の承諾が不要となった(=弁済をすれば代位可能)
規定なし 保証人の1人が他の保証人に対して債権者に代位する場合、自らの求償権の範囲内で権利を行使できる
保証人は、あらかじめ抵当権等の登記に代位を付記しなければ、担保権の目的不動産の第三取得者に対して代位できない 左記の規定を削除(頭の片隅に)


以上、弁済に関する改正点でした。

ちょっと量は多いですが、難しいところはないと思います。
しっかりと押さえておきましょう!


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