- 宅建改正民法!無効と取消し
宅建試験に出る『無効と取消し』の改正民法解説
様々な規定に関わる前提知識とも言えるところですね。
基本の基本として確実に押さえておきましょう。
■取消権者の明文化
・行為能力の制限により取り消すことができる行為は、制限行為能力者(他の制限行為能力者の法定代理人としてした行為にあっては、当該他の制限行為能力者を含む)、その代理人または承継人もしくは同意することができる者に限り取り消すことができる。
改正された箇所は( )内のみです。「法定代理人が制限行為能力者」であるときに「本人である制限行為能力者」を保護するためですね。ちょっと分かりにくいですが、代理でもお伝えした通り、法定代理人として制限行為能力者がした行為は本人(=他の制限行為能力者)も取り消すことができるということです。
・錯誤、詐欺、強迫により取り消すことができる行為は、表意者、その代理人または承継人に限り取り消すことができる。
無効から取消事由となった「錯誤」が加わっただけです。制限行為能力者がした行為の取消権者と比較しておきましょう。
■取り消された行為は初めから無効
取消しの効果=「初めから無効」として「原状回復義務」が発生します。
従来は制限行為能力者の原状回復義務について、現に利益を受けている限度で返還義務が生じるとされていました。改正民法では制限行為能力者に加えて意思無能力者も同様としています。制限行為能力者と行為時に病気等で意思能力を有しなかった者の返還義務は、現存利益で足りる!覚えておきましょう。
また、ここは新規定だけで少し難問のひっかけ問題が作れます。
贈与など無償行為で給付を受けた者は、給付時にその行為が無効であること(取り消すことができるものであること)を知らなかった場合のみ、現存利益で返還義務を負います。
これに対して保護の必要性が高い制限行為能力者と意思無能力者は、行為時にその行為が無効であると知っていても現存利益の返還で足ります。この比較は余裕があれば頭の片隅に入れておいてください。また、法の抜け穴として悪用はやめましょう。
■取消権の存在を知っていることが追認の要件
追認とは、法律行為を有効なものとして固める行為です。そこで従来の追認は、「取消原因となっていた状況が消滅した後にしなければ効力を生じない」とされていました。これが改正民法では、取り消すことができる行為の追認は「取消原因となっていた状況が消滅し、かつ、取消権を有することを知った後にしなければ効力を生じない」としています。
追認は、取消権があることを知った上で行う必要があります。重要です。そして例外として、次の者は取消権があることを知ってさえいれば、取消原因消滅後でなくても追認が可能となります。
1.法定代理人、保佐人、補助人が行う追認
2.成年被後見人を除く制限行為能力者が法定代理人や保佐人、補助人の同意を得て行う追認
私がこの新規定を絡めて問題を作るとしたら、法定追認とのひっかけですかね・・。
全部または一部の履行、履行の請求など、法定追認は取消権があることを知らなくても従来通りに成立します。
以上、今回は「取消権者」「制限行為能力者と意思無能力者の原状回復義務は現存利益で足りる」「追認は取消権の存在を知っていることが前提となった」この3点はしっかり押さえておきましょう。
改正民法一覧ページに戻る