代理権の濫用や復代理の改正

宅建改正民法!代理

宅建試験に出る『代理』の改正民法解説

ちょっと量は多いですが、難しくはないと思います。
出題可能性が高いところなので、確実に押さえておいてください!


代理人が相手方に対してした意思表示に問題があった場合、その事実の有無は代理人について決する。

意思表示の効力が「意思の不存在」「錯誤」「詐欺」「強迫」「ある事情を知っていたことまたは知らなかったことにつき過失があったこと」により影響を受ける場合、その事実の有無は代理人について決するものとされます。長々と書きましたが、無効から取消事由となった「錯誤」が従来の規定に加わっただけです。


相手方が代理人に対してした意思表示に問題があった場合、その事実の有無は代理人について決する。

意思表示の効力が「意思表示を受けた者がある事情を知っていたことまたは知らなかったことにつき過失があったこと」により影響を受ける場合、その事実の有無は代理人について決するものとされます。「意思表示を受けた者」=「代理人」です。相手方の意思表示を主観的に判断するのは代理人ということです。ここは地味に重要です。


特定の法律行為をすることを委託された代理人の行為において、本人は、自ら知っていた事情について代理人が知らなかったことを主張することができない。本人が過失により知らなかった事情も同様とする。

従来の規定から「本人の指図に従って」が削除されました。
特定の法律行為を委託=本人の指図と捉えていいのでは?ということです。
特定の法律行為の委託さえあれば、指図不要で本人の責任は重くなるので注意。


復代理人を選任した任意代理人の責任は、債務不履行の原則に委ねられる。

従来は、任意代理人が本人の許諾を得て復代理人を選任した場合、任意代理人は選任と監督についてのみ責任を負い、本人の指名に従って復代理人を選任したときは責任を負わないとされていました。しかし、実際に債務不履行があったときに代理人が何も責任を負わないのはおかしいのではないか?ということで、本人の許諾があった場合も指名があった場合も、どちらも同じく債務不履行責任の一般原則に委ねられることとなりました。
改正前 改正後
代理行為につき本人が悪意または過失により知らなかった事情は、代理人が善意であることを主張できない 左記のまま変更はないが、「本人の指図に従って」という文言が削除された
制限行為能力者でも代理人となることができる 左記のまま変更はないが、制限行為能力者が制限行為能力者の法定代理人となる場合は取消しが可能となった
任意代理人の復代理人への責任は、選任・監督についてのみ負う 任意代理人は、適切に復代理人を選任・監督しても責任は免れず、債務の本旨に従っているかが基準となる


代理権の濫用が明文化された。

代理人が、自己または第三者の利益を図る目的で「代理権の範囲内」の行為をしたケースに関する新規定です。権限がない代理を行う無権代理や表見代理と異なり、あくまでも代理権の範囲内の行動を行ったが、しかしそれが本人のためではなく自己や第三者のためだったという話です。

この場合、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理とみなされます。代理人が無権代理人として責任(相手方の選択により履行や損害賠償)を負い、本人に効果は及ばないということです。


他人の代理人として契約した者は、自分に代理権があることや本人の追認があることを立証できなければ無権代理人としての責任を負う。

従来は、自己の代理権を証明できず、かつ、本人の追認を得ることができなかったときに無権代理人の責任を負いましたが、言い回しが少し変わりました。立証責任=代理人にあことが明確にされた形ですね。「代理人が立証する」覚えておきましょう。ただし、次の場合は例外となります。

・他人の代理人として契約した者が制限行為能力者であるとき
・他人の代理人として契約した者が代理権を有しないことを相手方が知っていたとき
・他人の代理人として契約した者が代理権を有しないことを相手方が過失により知らなかったとき(他人の代理人として契約した者が自己に代理権がないことを知っていた場合を除く

実質的な改正点は3つめの( )内のみです。相手方が過失により気づかなくても、無権代理人自身が自分に代理権がないことを知っていれば責任を免れさせる必要はありません。
改正前 改正後
自己契約と双方代理は原則禁止(判例で無権代理) 自己契約と双方代理は、原則として無権代理行為とみなされる
規定なし 利益相反行為は、本人があらかじめ許諾したもの以外は無権代理行為とみなされる
無権代理人の責任が認められるためには、相手方の善意無過失が必要 左記+相手方に過失があっても、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合、無権代理人は責任を負う


以上、他にもいくつか新設規定はありますが、
判例の明文化などばかりで実質的な変更はありません。

では、今回は「錯誤の有無は代理人で判断」「相手方の意思表示に問題があるかどうかは代理人で判断」「特定行為の委託は指図がなくても本人の責任は重い」「復代理人の債務不履行責任は任意代理人にも及ぶ」「代理人が代理権を濫用した場合、相手方がその目的を知り、または知ることができたときは、無権代理とみなさる」「無権代理人自身が自分に代理権がないことを知っていれば、相手方に過失があっても責任を免れない」ことを押さえておきましょう!


改正民法一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< >>> 次のページ >>>
意思表示の改正民法 無効と取消の改正民法