宅建試験の民法解説:代理の3回目、「無権代理と表見代理」についてお送りいたします。とても重要ですので、繰り返し何度も読んでみてください。より詳しい解説はこちら→無権代理の難問対策
- 無権代理と表見代理の宅建解説
・代理人と称して行為をした者に、実は代理権がなかった場合
・代理人が与えられた代理権の範囲を超えた行為をした場合
・以前は代理権があったが、行為時には消滅していた場合
これらは無権代理となります。そして無権代理行為であっても、それがまるで本当に代理権があるように見えるときは、表見代理となります。
では、試験に出そうなポイントを順番に見ていきます。ここは難易度高めですので頑張りましょう。
■無権代理の効果
無権代理人が結んだ契約は無効であり、原則として本人に効力は生じない!(代理人にも効力は生じません)
■無権代理における本人の追認権
本人が無権代理行為を追認すると、原則として「契約時」に遡って有効な代理行為があったことになる!(遡及しない旨の特約も有効)
本人は、無権代理行為(=契約)を追認して、正当な代理によってなされた場合と同じ効果を生じさせることができます。追認をするのに、無権代理人や相手方の同意は必要なく、また、追認の相手方は、無権代理人でも契約の相手方でも構いません。ただし、無権代理人に対して追認をした場合は、相手方が追認の事実を知らないと、相手方に対しては追認の効果を主張することができません。以前解説した、「黙示の追認」も認められることも覚えておいてください。
■無権代理における本人の追認拒絶権
追認権は「権利」であって、「義務」ではない!
無理に追認をする必要もありません。
■無権代理における相手方の催告権
相手方は相当の期間を定め、本人に対して追認をするか否か確答すべき旨を催告することができ、確答がなかった場合は、「追認拒絶」があったものとみなされる!
相手方は、契約が有効なのか無効なのか不安定な状態に置かれています。そこで民法は、相手方に「催告権」と「取消権」を与えています。この催告権は、契約当時に、その契約が無権代理であることを知っていた場合にも認められるということも覚えておいてください。
■無権代理における相手方の取消権
相手方は、当該契約を取り消すことができる!
これには重要な要件が2つあります。契約時に無権代理であることを知らなかった(過失の有無は問わない)+本人がまだ追認をしていない。この2つの要件を満たせば、相手方は契約を取り消すことができます。
■無権代理人と相手方の間の効果
相手方が「善意無過失」ならば、無権代理人に対して、契約の履行または損害賠償請求をすることができる!(相手方に過失があっても、無権代理人が自己に代理権がないことを知っていた場合は責任追及可)
履行か損害賠償かは、相手方の選択によります。ただし、無権代理人が制限行為能力者である場合は、これらの請求はできません。
■表見代理の効果
代理権授与の表示による表見代理
=本人が契約の相手方に対して、ある者に代理権を与えたと表示した
実際には代理権を与えていないのに、口頭や書面等でウソを言った場合です。
権限踰越による表見代理
=基本権限はあるが、それが代理権限の範囲を逸脱してなされた
賃貸契約の代理を頼んだのに、それを売却してしまった場合等です。
権限消滅後の表見代理
=代理権が消滅して、もはや代理人でない者が代理行為をなした
かつては代理権が存在し、かつて有した代理権の範囲内で代理行為を行った場合です。
これらの表見代理が行われた場合、「善意無過失」の相手方は、次の3つの方法のうち1つを自由に選択して主張することができます。
・表見代理を主張して本人の責任を問う(催告し契約を履行させる)!
・無権代理として無権代理人の責任を問う!
・無権代理行為として取り消して、契約を白紙に戻す!
■本人の地位と無権代理人の地位が同一人に帰した場合
本人と無権代理人が親子だった場合などのお話です。
本人が死亡し、無権代理人が本人を相続した場合 、
単独相続=当然に有効となる!
共同相続=相続人全員による追認権の行使により有効となる!
無権代理人は自業自得であり、契約は有効となって、相手方の請求を拒むことができなくなります(追認拒絶不可)。ただし、他にも相続人がいる場合は、他の相続人を保護するために、当然に有効とはなりません。
無権代理人が死亡し、本人が無権代理人を相続した場合 は当然には有効とならず、追認を拒絶することができます。もともと本人は、追認を拒絶できる立場にあったのですから当たり前ですね。
3回に分けてお送りいたしました代理制度はこれで終了です。特にこの無権代理・表見代理はとても重要です。どこが試験に出てもおかしくないので、必ず押さえておいてください!(難易度高めなので、本試験直前に合格レベルに達していない場合は捨ててしまい、もっと覚えやすい所を固めるのもテクニックの一つです)
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