得点源となる【共有】のポイント

宅建試験の民法解説:「共有」とは、数人の者がそれぞれ共同で持分を有して、一つの物を所有することをいいます。共有は2~3年に1回の割合で出題されています。とても簡単な上に今後も出題可能性が高いので、しっかりマスターしておいてください!より詳しい解説はこちら→共有の難問対策

共有の宅建解説

共有とは

複数人の所有者が各自の所有権を持ち、その総和が1個の所有権の内容と等しくなっている状態です。ちょっと難しい言い方ですね。

たとえば、ABCの3人が1,000万円ずつ出し合って3,000万円の建物を購入したとします。この場合、この建物は誰のものになるのでしょうか?もちろんABC3人のものです。3人でお金を出し合ったのですから当然ですね。このように、1つの物を何人かの人で共同して所有することを、共有といいます。


共有者の持分

では、この建物を誰がどのように使用できるのでしょうか?ABCは同じ額のお金を出したのですから、同じ割合でこの建物を所有しています。このような所有権の割合を「持分」といいます。ここで宅建試験に出る可能性のあるポイントは2つです。

・各共有者は共有物全体について、各自の持分に応じた使用をすることができる!

・各共有者の持分は、特約がなければ等しいものと推定される

各共有者は、別段の合意がある場合を除き、善管注意義務をもって共有物の使用をしなければならない点も頭の片隅に入れておきましょう。


共有物の使用

そして各共有者は、各自の持分に応じて共有物を使用することができます。この「使用」とは、3つの種類に分類されます。

1.「保存行為」=共有物の現状を維持する行為
例:共有物の修繕不法占拠者への返還請求、盗まれたので取り返す etc

2.「管理行為」=共有物を利用・改良する行為
例:共有物の賃貸借賃貸借契約の解除、共有宅地の地ならし etc

3.「変更行為」=共有物を物理的に変化させる行為
例:共有物の売却・建替え・増改築、抵当権設定、田を畑にする etc

保存行為は、各共有者が単独ですることができます。
管理行為は、各共有者の持分価格の過半数の賛成で行います(特別の影響を及ぼす共有者の承諾必要)。
変更行為は、共有者全員の同意が必要です(軽微変更は過半数の同意でOK)。

ここはものすごく大事です。問題が出題された場合、それはどの行為に該当し、つまり単独でできるのか、過半数か、全員の同意が必要なのか、必ず分かるようにしておいてください。

そして、ひっかけ問題用の注意点があります。上記の使用行為は、あくまでも「共有物全体」についてのお話です。各共有者が、自分の持分のみについては売却しようが抵当権を設定しようが、それは自由です。それは単独でできるということに注意しておいてください。

更に共有分の持分について、宅建試験に出そうな補足が3つあります。

・共有者の1人が持分を放棄した場合、その持分は他の共有者のものになる!

・共有者の1人が相続人なく死亡した場合(財産分与もない)、その持分は他の共有者のものになる!

・共有者の1人が1年以内に負担義務(※)を履行しないときは、他の共有者は相当の償金を払って、その持分を取得することができる!

(※)各共有者は、その持分に応じて管理費用を払う義務を負っています


共有物の分割

最後に、共有物の分割について説明しておきます。ここも割と出題されますので押さえておいてください。「共有は争いの母である」という諺があります。どんなに仲が良くても、共有に争いは付き物です。

共有にトラブルは生じやすいということで、民法は、原則として各共有者はいつでも自由に共有物の分割を請求できるとしています。しかし、ポンポンと自由に分割されては困る共有者もいるでしょう。そこで、共有者同士で「共有物を分割しない」という特約を結ぶことも許されます。これを「共有物不分割特約」といいます。以下、分割および共有物不分割特約のポイントです。

・分割について共有者間の協議がまとまらない場合、裁判所に分割を請求することができる!

・共有物につき権利(地上権、賃借権、抵当権等)を有する者は、自己の費用で分割協議に参加することができる!

・共有物不分割特約の期間は、5年を超えることはできない!

・共有物不分割特約は更新することができるが、その期間は更新のときより5年を超えることはできない!


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贈与契約 不動産管理制度
【宅建試験問題 昭和60年ー問7】共有に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、誤っているものはどれか。

1.各共有者は、その持分に応じて共有物の管理の費用を負担しなければならないが、ある共有者がこの負担義務を1年以内に履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその共有者の持分を取得することができる。
2.共有者の1人が相続人なくして死亡したときは、その持分は、国庫に帰属する。
3.共有物の分割に際し、各共有者の協議が調わないときは、裁判所に分割を請求することができる。この場合において、現物を分割することができない場合又は分割により著しく価格が低下するおそれがある場合は、裁判所はその競売を命ずることができる。
4.共有物の分割に際しては、共有物につき権利を有する者及び各共有者の債権者は、分割に参加することができる。この場合において、参加の請求があったにもかかわらず、その参加を待たずに分割をしたときは、分割の効力は参加を請求した者に対抗できない。
1 正:共有者の一人が管理負担義務を1年以内に履行しないとき場合、他の共有者は、相当の償金を支払ってその共有者の持分を取得することができる
2 誤:共有者の一人が相続人なくして死亡した場合、特別縁故者 → 他の共有者の順に帰属する
3 正:現物を分割することができない場合、分割により著しく価格が低下するおそれがある場合、裁判所は共有物の競売を命ずることができる
4 正:共有者の債権者は、自己の費用で分割協議に参加でき、分割について意見を述べることができる(参加請求を無視した場合、分割の効力は参加を請求した者に対抗できない)
【宅建試験問題 平成6年ー問3】A・B・Cが別荘を持分均一で共有し、特約がない場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.管理費は、A・B・Cがその利用の程度に応じて負担しなければならない。
2.別荘の改築は、A・B・C全員の合意で行うことを要し、Aが単独で行うことはできない。
3.Aは、不法占拠者Dに対して単独で明渡請求を行うことができるが、損害賠償の請求については、持分の割合を超えて請求することはできない。
4.分割の請求については、Aは、いつでもすることができ、B・Cとの協議がととのわないときは、裁判所に請求することができる。
1 誤:持分に応じて負担する
2 正:別荘の改築は共有物の変更行為であり、共有者全員の同意が必要
3 正:共有物の明渡請求は保存行為であり単独でできるが、損害賠償請求は持分についてのみ
4 正:共有物の分割は各共有者がいつでも請求でき、協議がととのわなければ裁判所に請求できる