【宅建民法解説】贈与契約って何?

宅建試験の民法解説:「贈与」とは、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える契約です。出題頻度は低めですが、簡単なので軽く押さえておきましょう。

贈与の宅建解説

相続税を安くしたい、生きているうちに財産を引き渡したい、というときに「生前贈与」という言葉をよく耳にすると思います。

贈与とは、当事者の一方(贈与者)が自己の財産を無償で相手方(受贈者)に与えることをいいます(改正民法により他人の財産を贈与することもできると明文化されました)。有償・双務契約の典型が売買であるのに対し、無償・片務契約の典型が贈与となります。片務契約なので、同時履行の抗弁権や危険負担は問題となりません。

以下、宅建試験での出題可能性は低めですが、改正民法で贈与の対象、解除できるケース、贈与者の引渡義務について変更がありましたので、そこを中心に押さえておきましょう(遺贈につきましては相続で詳しくお送りしますので、まずは贈与一般について見ておきます)。


贈与の対象

贈与は、当事者の一方が「ある財産」を無償で相手方に与える意思表示をし、相手方が受諾することで効力を生ずる。

「 」部分が改正されました。改正前は「自己の財産」となっていましたが、改正民法により他人物の贈与も認められました(以前から判例では認められていましたが)。


贈与の解除

書面によらない贈与は、各当事者が解除することができます履行の終わった部分を除きます)。

従来は「撤回」することができるとされていましたが、「解除」に変わりました。

撤回 = 意思表示の効力を消滅させる行為
解除 = 契約の効力を消滅させる行為

違いについて特に深く考える必要はありません。書面によらない贈与は「解除」することができるとだけ覚えておいてください。

そして裏読みで「書面による贈与は自由に解除できない」ということも覚えておけば十分でしょう。ちなみに解除できる場合とは、法定取消事由に該当する場合(詐欺・強迫・錯誤・未成年者の契約など)や法定解除事由に該当する場合(履行遅滞や履行不能など)、そして当事者の合意があった場合となります。

尚、死因贈与については遺贈の規定が準用されます。
いつでも撤回できる複数の死因贈与が抵触する場合は後の贈与で前の贈与を撤回したものとみなされる。遺贈の規定なのでここは条文が「撤回」のままとなっていますが、あまり気にする必要はないでしょう。
  書面による贈与 書面によらない贈与
未履行部分 解除不可 解除可
履行済部分 解除不可 解除不可


贈与者の引渡義務

贈与者は、贈与の目的である物または権利を、贈与の目的として特定したときの状態で引渡し、または移転すればよい。

ここは重要です。

従来は、「贈与者は目的物の瑕疵について責任を負わない。ただし、瑕疵を知りながら受贈者に告げなかったときは責任を負う」とされていました。

この瑕疵云々という概念がなくなり「特定したときの状態で渡せばよい」ということになりました。

ただし、負担付贈与の場合は従来通り担保責任を負います。負担付贈与とは、「財産をあげるから債務も一緒に引き継いでね」という贈与ですが、深追いは不要でしょう。

通常の(無償)贈与にのみ上記規定が適用されるということを覚えておいてください。

尚、贈与者は、特定物の引渡しの場合は引渡時まで善管注意義務を負います。受贈者は、不動産の贈与を受けた場合は登記をしないと所有権の承継を第三者に対抗できません。

ちょっとやらしい問題を一つ。

(例題)AのBに対する土地の贈与(何らの負担もないものとする)が書面によるか否かを問わず、その土地に欠陥があっても、その欠陥が贈与契約締結以前から存在するものであったときは、Aは、Bに対してその欠陥を担保する責任を負わない。
→ 贈与者は、負担のない贈与について原則として契約不適合担保責任を負いますが、贈与の目的である物や権利は贈与の目的として特定したときの状態で引き渡せば足ります。よって欠陥を担保する必要はなく、正しい肢となります。


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売主の担保責任 共有の難問対策
【宅建試験問題 平成3年ー問10】AのBに対する土地の贈与(何らの負担もないものとする。)に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.その贈与が書面によらないものであっても、Bにその土地の所有権移転登記がなされたときは、Aは、その贈与を撤回することができない。
2.その贈与が書面によるか否かを問わず、その土地に欠陥があっても、その欠陥が贈与契約締結以前から存在するものであったときは、Aは、Bに対してその欠陥を担保する責任を負わない。
3.その贈与が書面による死因贈与であっても、Aは、後にその土地を第三者に遺贈することができる。
4.その贈与が書面による死因贈与であったときは、Aは、後に遺言によりその贈与を撤回することができない。
1 正:書面によらない贈与は各当事者が解除することができるが、履行の終わった部分は不可。
2 正:特定したときの状態で引き渡せばよく、欠陥を担保する必要はない。
3 正:死因贈与は遺贈に関する規定が準用され、前の遺言が後の遺言と抵触するときは後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなされる。
4 誤:死因贈与は遺贈に関する規定が準用され、遺言はいつでも撤回することができる。