かんたん宅建業法(完全版):宅建業の事務所

かんたん宅建業法(完全版)の4回目、宅建業を行うための「事務所」について解説します。

宅建業の事務所

得点源である宅建業法の中でも特に得点源です。定番の出題ポイントと引っかけパターンを押さえておけば間違える要素がありません。

では、サクサクッと押さえて1点を確保しておきましょう!


事務所とは?

事務所とは、

1.本店(主たる事務所)
2.支店(従たる事務所)
3.宅建業務を継続的に行うことができる施設を有する場所で、宅建業に係る契約締結権限を有する使用人を置いているところ

を言います。3番が条文そのままで分かりにくいですね。これはつまり、営業所などしっかり固定された場所で、営業所長など偉い人がいるところということです。新入社員が1人で留守番しているテント張りの案内所など、すぐに移動できる簡易な施設は事務所とは呼べません。事務所と案内所の違いについては次ページで詳しくお伝えします。

また、次の1文は重要です。「支店で宅建業を営んでいれば、宅建業を営んでいない本店も事務所となる」これは絶対に覚えておいてください。例えば2つの支店ABを持つ会社(本店)があったとします。支店Aだけが宅建業を営み、本店と支店Bは宅建業とは関係ありません。この場合に事務所と呼ばれるのは・・本店と支店Aですね!宅建業を営んでいない支店Bは事務所ではありませんので、ここも注意です。

少し練習しておきましょう。

1.宅建業者の本店で、本店では宅建業を行わない場合、当該本店は事務所ではない。
→ 宅建業を営むかどうかに関係なく、本店は事務所となります。誤りです。

2.宅建業者の支店で、支店長を置き宅建業を行う場合、当該支店は事務所である。
→ 宅建業を営めば、支店は事務所となります。

3.宅建業者の本店支店以外で、継続的に業務を行うモデルルームで宅建業に係る契約を締結する権限を有する使用人を置く場合、当該モデルルームは事務所である。
→ しっかりとした建物で、宅建業に係る契約締結権限を有する使用人を置けば、事務所として扱われます。

4.宅建業の本店支店以外で、分譲マンションを販売するための現地案内所で専任取引士を置く場合、当該案内所は事務所である。
→ 土地に定着して継続的に業務を行う施設でなければ案内所です。当該案内所で契約の申込みや締結を行う場合は専任取引士を1名以上設置する必要がありますが、専任取引士の設置義務があっても案内所は案内所です。誤りです。


事務所に必要なもの

宅建業を営む事務所には、次の5つのものが必要です。

1.標識

正式には「宅地建物取引業者票」といいます。正式名を覚える必要はありません。本当に宅建業者であるか判断するためのものです。

2.報酬額の掲示

宅建業者が受け取る報酬がいくらなのか、あらかじめ明記しておきます。お客さんが安心して取引できるようにするためです。

3.帳簿

宅建業の取引があった場合、その年月日、宅地建物の所在・面積等を記載する台帳です。宅建業の適正な運営と取引の公正を確保するためのものです。この帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖して、閉鎖後5年間保存する必要があります。また、宅建業者が自ら売主となる新築住宅にかかる帳簿は10年間保存を要する点にもご注意ください。

4.従業者名簿

宅建業者は、アルバイト等も含む全ての従業者に「従業者証明書」を携帯させる必要があり、従業者は、取引関係者から請求があった場合は、従業者証明書を提示する義務があります(請求がなくても提示する重要事項説明時の取引士証と区別)。従業者証明書をまとめた台帳を「従業者名簿」といい、取引関係者の請求があった場合は、この従業者名簿も閲覧させる義務があります。従業者名簿は、最終の記載をした日から10年間保存する要があり、従業者名簿には、従業者の氏名、生年月日、主たる職務内容、取引士であるか否かの別などを記載します。平成29年度法改正により住所の記載が除かれましたので注意してください。

ちょっと細かいですが、帳簿の備付義務違反は指示処分と50万円以下の罰金、従業者名簿の備付義務違反は指示処分または業務停止処分と50万円以下の罰金の対象となることも覚えておいて損はないかもしれません。

5.成年者である専任の取引士

宅建業に関する法律の専門家を置き、業務の適正な運営を図ります。
・事務所については業務に従事する者5名に1名以上の割合
・取引士の設置義務のある案内所等については少なくとも1名
宅建業者は成年者である専任の取引士を、上記の通り置かなければなりません。

この人数が不足した場合、宅建業者は2週間以内に新しい取引士を補充するなどの措置を取らなければなりません。そして設置から30日以内に免許権者に届け出ます。2週間以内に設置して届け出ると出題されたら誤りです。もちろん初めから所定の人数が不足する場合は、事務所等を開設することができません。業務に従事する者とは、営業や一般管理はもちろん、補助的な事務に従事する者も含まれます。

成年者である専任の取引士とは、20歳以上で、その事務所に常勤する取引士を言います。ここは1つ注意点があります。未成年者であっても、その者自身が宅建業者である場合、または業者が法人でその役員である場合は、未成年者でも専任の取引士となることができます(その者が主として従事する事務所等に限る)。「役員」ですのでご注意ください。未成年者の政令で定める使用人が取引士となっても、成年者である専任の取引士とはみなされません。

最後に補足として、この専任の取引士設置要件を欠いた場合は、100万円以下の罰金の他に、業務停止処分を受けることがあるということも頭の片隅に入れておいてください。


出題ポイントと引っかけパターンをまとめて

押さえるべき箇所を覚えやすいようコンパクトにまとめておきます。

1.標識は、事務所と案内所に掲示することを要する!

全ての案内所にも掲示し、事務所と案内所の標識が同一である必要はありませんので注意です。

2.報酬額は、事務所にのみ掲示することを要する!

案内所に報酬額を掲示する必要はありませんので注意です。

3.帳簿は、各事業年度の末日に閉鎖して、閉鎖後5年間の保存を要する!

従業者名簿10年との引っかけに注意です。

4.宅建業者自ら売主となる新築住宅に係る帳簿は、閉鎖後10年間の保存を要する!

「自ら売主となる新築住宅」が10年で、単に新築住宅の媒介などは5年となりますので注意です。

5.帳簿は、取引があったつど記載することを要する!

事業年度末にまとめて記載と出題されたら誤りなので注意です。記載は取引士が行う必要はなく、取引士の記名押印も不要です。

6.取引関係者の請求があった場合、従業者証明書を提示させなければならない!

これに違反しても罰則なし重要事項説明時の取引士証は請求がなくても提示する必要があり、これに違反すると罰則がある点に注意です。

7.取引関係者の請求があった場合、従業者名簿を閲覧させなければならない!

帳簿には閲覧義務はありませんので注意です。

8.従業者名簿は、最終の記載をした日から10年間の保存を要する!

帳簿5年との引っかけに注意です。

9.帳簿や従業者名簿は、事務所ごとに備えることを要する!

本店に一括して備えなければならないと出題されたら誤りなので注意です。案内所に帳簿や従業者名簿は不要です。

10.事務所については、5名に1名以上の割合で専任取引士を置く!
11.取引士設置義務のある案内所等については、少なくとも1名の専任取引士を置く!
12.専任取引士が不足した場合、2週間以内に補充する!

この辺の引っかけ対策は後ほど「取引士」の説明で見ていきます。


では最後に、最新の本試験問題をチェックして知識を仕上げておきましょう。


最新の宅建本試験問題

宅地建物取引業者Aが行う業務に関する次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定に違反しないものはいくつあるか(2017-28

ア.Aは、法第49条に規定されている業務に関する帳簿について、業務上知り得た秘密が含まれているため、当該帳簿の閉鎖後、遅滞なく、専門業者に委託して廃棄した。
→ 秘密が含まれていたからと例外はなく、閉鎖後5年間の保存を要します。


次の記述のうち、宅地建物取引業法(以下この問において「法」という。)の規定によれば、正しいものはどれか(2017-35

1.宅地建物取引業者は、自ら貸主として締結した建物の賃貸借契約について、法第49条に規定されている業務に関する帳簿に、法及び国土交通省令で定められた事項を記載しなければならない。

2.宅地建物取引業者は、その業務に関する帳簿を、一括して主たる事務所に備えれば、従たる事務所に備えておく必要はない。

3.宅地建物取引業者は、その業務に関する帳簿に報酬の額を記載することが義務付けられており、違反した場合は指示処分の対象となる。

4.宅地建物取引業者は、その業務に従事する者であっても、一時的に事務の補助のために雇用した者については、従業者名簿に記載する必要がない。

まず「自ら貸主」という言葉にピーンと来るクセをつけてください。1番は宅建業に該当しないため、帳簿の記載も不要となります。帳簿は事務所ごとに備える必要があるため2番も誤り。一時的に補助するアルバイトでも非常勤の役員でも従業者であれば証明書を発行し、従業者名簿に記載するので4番も誤り。よって正解は、帳簿の記載内容や罰則を問う少し細かい肢の3番となります。


宅建業法では、細かい肢があっても残りの3肢は簡単です。やや難しめの問題も大抵は消去法で対応できます。まれに細かい肢が混ざっている意地悪な個数問題も出題されますが、正解率の低い問題が多ければ合格ラインは下がります。

要所要所をきちんと勉強しておけば、宅建業法で2肢も3肢も分からない問題はほぼないはずです。押さえるべき箇所を確実に押さえて効率良く宅建合格を勝ち取りましょう!


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