宅建業法の完全解説:宅建業を行うための「事務所以外の場所(案内所等)」に必要な届出や標識、宅建士の設置義務等について解説します。
- 案内所等の完全解説
宅建業は事務所だけでなく、モデルルームなどでも行われます。しかし、好き勝手にモデルルームなどの催し場を設けて営業活動ができるわけではありません。ここではそれら「事務所以外の場所」の規制について解説していきます。
重要となってくるのは、前ページ「事務所」との比較です。事務所と同じ点、異なる点に注意しながら見ていきましょう。全てが重要で、全ての分野から万遍なく出題される宅建業法ですが、ここは少し出題可能性が低めとなります。しかし、少し低いだけで重要なことに変わりありません。しっかり押さえておきましょう!
■標識の掲示義務
どこの宅建業者が、そこでどういった営業を行っているのかを明示します。標識の掲示義務のある「事務所以外の場所」とは、以下の5ヶ所です。
1.事務所以外の、継続的に業務を行うことができる施設を有する場所
2.一団の宅地建物の分譲を行う案内所
3.「他の宅建業者が行う一団の宅地建物の分譲」の代理・媒介を行う案内所
4.宅建業務に関する展示会などの催しを実施する場所
5.一団の宅地建物の分譲をする際に、その宅地建物が所在する場所
この5つは軽くふんわり頭に入れておいてください。ここで細かいひっかけは出題されませんので、一つ一つ正確に覚える必要はありません。出題されるのは、ここから派生する知識です。
2番はいわゆる現地案内所で、「一団」とは10区画以上の宅地または10戸以上の建物をいいます。3番も現地案内所ですが、自社物件ではなく他社物件の代理・媒介を行うケースで、標識に他社(売主)の商号または名称、免許証番号を記載します。
4番は住宅フェアや相談会、5番はそのまま宅地建物の所在地ですね。案内所には案内所を設置した宅建業者の標識を掲示しますが、5番の宅地建物所在地には、「売主」の標識を掲示する必要があります。
売主である宅建業者Aが宅建業者Bに宅地の売買の媒介・代理を依頼し、Bが当該宅地とは別の場所に案内所を設置した場合、Bが設置した案内所にはBの標識を(Aの標識は不要)、分譲対象となる物件がある現地にはAの標識を掲示する必要があります(Bの標識は不要)。複数の宅建業者が共同で宅建業務に関する展示会等を実施する場合、当該実施場所にそれぞれ自己の標識を掲示する必要があります。この辺は注意ですね。
このように事務所以外の場所でも標識を掲示する必要がありますが、事務所に必要だった報酬額・帳簿・従業者名簿は、事務所以外の場所には不要となります。また、事務所と事務所以外の場所で、標識の掲示内容が同一である必要はありません。
標識の掲示義務に違反した場合、監督処分として指示処分の対象となり、50万円以下の罰金に処せられることもあります。
■成年者である専任宅建士の設置義務
上記1~4番(5番含まない)の場所で契約の申込みを受ける場合、または契約を締結する場合は、少なくとも1名の成年者である専任宅建士を置く必要があります。
そしてその場合、その場所で業務を開始する日の10日前までに、専任宅建士の氏名などを届け出なければなりません。契約の申込みや締結を行わない場合、届出は不要です。
届出先は、免許権者および案内所等の所在地を管轄する都道府県知事の「2ヶ所」です。同一の場合はもちろん1ヶ所だけで構いません。免許権者が国土交通大臣である場合は、案内所等の所在地を管轄する都道府県知事を経由して届け出ます。
専任宅建士等の届出を怠った場合や虚偽の届出をした場合は、50万円以下の罰金に処せられることがあります。
では、ちょっと紛らわしい箇所の練習問題を解いておきましょう。
1.甲県知事免許を受けた宅建業者Aが、乙県内において一団のマンション分譲を案内所(契約の申込みを受けるもの)を設置して行う場合、Aは業務開始10日前までに一定事項を甲県知事および乙県知事に届け出なければならない。
→ 業務を開始する10日前までに、案内所の所在地、業務内容、専任宅建士の氏名などを、免許権者と案内所所在地を管轄する都道府県知事の両方に届け出ます。正しい肢です。
2.国土交通大臣免許を受けた宅建業者Aが、甲県内において一団のマンション分譲を案内所(契約の申込みを受けるもの)を設置して行う場合、Aは業務開始10日前までに一定事項を甲県知事を経由して国土交通大臣に届け出なければならない。
→ 免許権者である国土交通大臣と案内所所在地を管轄する甲県知事の両方に届け出る必要があり、国土交通大臣への届出は、甲県知事を経由して行います。正しい肢です。
3.甲県知事免許を受けた宅建業者Aが、乙県知事免許を受けた宅建業者Bに販売を代理して、Bが乙県内において一団のマンション分譲を案内所(契約の申込みを受けるもの)を設置して行う場合、Aは一定事項を甲県知事および乙県知事に届け出なければならない。
→ 案内所の届出義務者は、当該案内所を設置した宅建業者Bのみで、誤りとなります。
宅建士を置かなければならない案内所等の届出
届出期間 事業開始の10日前 届出事項 専任宅建士の氏名、所在地、業務内容、業務を行う期間 届出先 免許権者+案内所の所在地を管轄する都道府県知事
■事務所と事務所以外の場所の比較まとめ
事務所に必要なもの:標識、帳簿、従業者名簿、専任宅建士、報酬額
取引を行う案内所に必要なもの:標識、専任宅建士、案内所の届出
取引を行わない案内所に必要なもの:標識のみ
事務所 契約や申込みをする案内所等 契約や申込みをしない案内所等 専任宅建士 〇
(従業者5人に1人以上)〇
(1人以上)× 標識 〇 〇 〇 帳簿 〇 × × 従業者名簿 〇 × × 報酬額 〇 × × 免許証 × × ×
■近年の宅建本試験問題(皆さん直近の過去問は解く機会が多いと思いますので、古すぎず新しすぎない練習問題を少々。言い回しなど、雰囲気をチェックしておきましょう)
・宅建業者B(甲県知事免許)が、乙県に所在する1棟のマンション(150戸)を分譲するため、現地に案内所を設置し契約の申込みを受けるときは、甲県知事及び乙県知事に、その業務を開始する日の10日前までに、宅建業法第50条第2項の規定に基づく届出をしなければならない(2017年 問30-2)
→ 業務開始の10日前までに、免許権者と案内所所在地の知事に対して届け出ます。(正)
・宅建業者Aは、マンションを分譲するに際して案内所を設置したが、売買契約の締結をせず、かつ、契約の申込みの受付も行わない案内所であったので、当該案内所に宅建業法第50条第1項に規定する標識を掲示しなかった(2016年 問29-1)
→ 取引の有無に関わらず、案内所には標識を掲示する必要があります。(違反する)
・宅建業者Aが宅建業者Bに販売の代理を依頼し、Bが乙県内に案内所を設置する場合、Aは、その案内所に宅建業法第50条第1項の規定に基づく標識を掲げなければならない(2015年 問44-1)
→ 案内所を設置した宅建業者Bが標識を掲示します。(誤)3問とも簡単ですね!
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