かんたん宅建業法(完全版):宅地建物取引士

かんたん宅建業法(完全版)の6回目、皆様が目指す「宅地建物取引士」について解説します。

宅地建物取引士

丸々1問の他に、肢の1つ2つとしてあちこちに絡んできます。どうすれば宅地建物取引士になれるのか?宅地建物取引士の仕事とは?宅地建物取引士の登録基準は?などなど、覚えることはすごく多いですが、ゆっくりマスターしていきましょう。尚、テキストによって表記は様々ですが、「宅地建物取引士」「宅建士」「取引士」同じ意味です。


宅地建物取引士資格試験

まずは宅建試験に合格しないと話になりません。ここで覚えていただきたいのは以下の2点だけです。

・ 不正手段によって試験を受けた者は、合格を取り消されることがある!
・ 不正手段によって試験を受けようとした者に対し、都道府県知事は、3年以内の期間を定めて受験を禁止することができる!

すぐ下で説明する登録基準につきましては「5年」がキーワードとなってきますが、不正受験による再受験禁止期間は最長「3年」となります。頑張って細かい所まで覚えたのに、こういった単純な知識を意外とド忘れしてしまいますのでご注意ください

尚、複数の都道府県で合格したことがある場合、いずれか1つの都道府県知事を選択して取引士登録の申請を行うことになります。


宅地建物取引士資格登録

宅建試験に合格し、登録の基準を満たす者は、宅建試験に合格した場所の都道府県知事対して取引士登録の申請を行います。合格した場所の知事なので注意。東京寄りの埼玉県に住んでいて、東京都で宅建試験を受けて合格した場合、登録申請は住所地である埼玉県知事ではなく、東京都知事に対して行うことになります。

この取引士登録にも条件があります。

1.2年以上の実務経験を有している
2.国土交通大臣が指定する実務講習を受講し修了している

このどちらかを満たしていないと取引士登録はできません。2番ですが、「登録を受けようとする者が合格した場所の都道府県知事が指定する講習」という引っかけ問題がよく出題されますが、国土交通大臣が指定する講習ですのでご注意ください。

そして都道府県知事が、一定事項を「宅地建物取引士資格登録簿」に登載することにより、取引士登録が行われます。取引士登録の効力は全国に及び、取引士証の返納などを行っても、登録の消除を受けない限り一生有効となります。


宅地建物取引士の登録基準

次の10項目に該当する者は、宅建試験に合格しても取引士登録を受けることができません。宅建業者の免許基準と似ていますが、免許基準にはない登録基準特有の基準は重要です。7.8.9.10番は必ず押さえておいてください。1~6番は免許基準と同じです。

1.成年被後見人、被保佐人、復権を得ていない破産者

破産者は、復権を得れば5年を待たずただちに登録を受けることができます。

2.禁錮以上の刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者

3.一定の罰金刑に処せられ、その刑の執行が終わって5年、または時効の完成などにより刑の執行を受けることがなくなった日から5年を経過しない者(一定の罰金刑=宅建業法違反、暴行罪、脅迫罪、傷害罪、背任罪、暴力団員による不当な行為の防止に関する法律違反など)

4.不正手段による免許取得、業務停止処分に違反するとして免許を取り消され、取消しの日から5年を経過していない者(法人の場合、免許取消処分の聴聞の公示日前60日以内にその法人の役員であった者)

5.上記4番に該当するとして免許取消処分の聴聞の公示がなされ、公示の日から処分決定までの間に廃業の届出をし、その届出から5年を経過していない者

6.上記5番の期間内に合併により消滅した法人、または解散・廃業の届出をした法人の、聴聞の公示日前60日以内に役員であった者で、その消滅または届出から5年を経過していない者

7.宅建業の営業に関し、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者

免許基準の場合は、成年者と同一の行為能力を有しない未成年者であっても、法定代理人が欠格事由に該当していなければOKだった点と比較。成年者と同一の行為能力を有しない未成年者は、法定代理人の欠格事由の有無を問わず、登録を受けることができません

法定代理人から営業許可を受け、成年者と同一の行為能力を有する未成年者として取引士登録を受けることができたとしても、原則として未成年者は成年者である専任取引士とはなれません。しかし、未成年者である取引士自身が個人の宅建業者である場合、法人宅建業者の役員である場合は、当該事務所においては成年者である専任取引士とみなされます

8.不正登録等の理由で登録の消除処分を受け、その処分から5年を経過していない者

9.不正登録等に該当するとして登録の消除処分の聴聞の公示がなされ、公示の日から処分決定までの間に登録消除の申請をし、その登録消除から5年を経過していない者

10.事務禁止処分を受け、その禁止期間中に本人の申請により登録の消除がなされ、まだ禁止期間が満了していない者

8~10番の違いですが、事務禁止処分を受け、自ら申請して登録を消除した場合は事務禁止期間中のみダメ、それがバレて登録消除処分を受けた場合は、処分から5年もダメ、というわけです。また、9番の登録消除申請について相当の理由がある者は除かれます。


宅地建物取引士登録の移転

取引士登録を受けている者が、登録先以外の都道府県にある宅建業者に従事しようとする場合は、登録の移転を行うことができます。「できる」のであって強制ではありません。「登録の移転を行わなければならない」という引っかけ問題に注意です。また、取引士が他の都道府県に住所を移転した場合(単に引っ越した場合)に登録の移転はできませんで注意してください。登録の移転ができるのは、他の都道府県で従事する場合です。

この登録の移転は、現に登録を受けている都道府県知事を経由して移転先の都道府県知事へ行います。また、事務禁止処分を受けている取引士は、その禁止期間が満了するまで登録の移転ができないという点も重要です。


宅地建物取引士資格登録簿の変更の登録

登録を受けている取引士は、宅地建物取引士資格登録簿の記載事項のうち、

1.氏名
2.本籍・住所
3.勤務先の宅建業者の商号・名称
4.勤務先の宅建業者の免許証番号

に変更があった場合、遅滞なく変更の登録を申請しなければなりません。登録の移転と違い、こちらは義務です。つまり、登録を受けている取引士が引越しをした場合、登録の移転は必要ありませんが、変更の登録は必要ということです。しつこいですが、登録の移転ができるのは「勤務先」が変わった場合のみです。甲県で登録を受けている甲県に住む者が乙県に引っ越した場合、変更の登録は甲県知事に対して申請します。登録の移転は、甲県知事を経由して移転先の知事に対して申請する点と区別しておいてください。

また、取引士が専任取引士となった場合、専任かどうかはこの宅地建物取引士資格登録簿の記載事項ではありませんので、取引士は「変更の登録」をする必要がありません。しかし、専任取引士の氏名は宅地建物取引業者名簿の登載事項なので、宅建業者は30日以内に「変更の届出」を行う必要があります。

免許の「免許換え」=取引士の「登録の移転」、免許の「変更の届出」=取引士の「変更の登録」に対応しています。下記「死亡等の届出」や「取引士証の書換え」と合わせ、35条等と並んで宅建業法のヤマ場の一つですね。面倒です。ここは無理やり詰め込むよりも、パターン慣れする方が楽だと思います

インプリをお持ちの方は大丈夫かと思いますので、インプリ問題集や絶対役立つ宅建業法と並行して出題パターンに慣れてください。一般的な参考書で勉強されている方は、とにかく多くの過去問をこなすことをおすすめします


死亡等の届出

登録を受けている取引士が死亡した場合や、登録基準でお話した10項目に該当してしまった場合は、登録を消除するための届出をしなければなりません。ここで注意していただきたいのは、誰がその届出をするのかということです。

死亡 → 相続人
成年被後見人となった → 成年後見人
被保佐人となった → 保佐人
その他(破産など)→ 本人

この届出は、登録消除理由に該当した日から「30日以内」に行う必要があります。しかし、死亡の場合だけは相続人が死亡を知った日から30日以内となります。変更の登録が「遅滞なく」だった点と比較。また、これらの届出がないときでも、本人から登録消除の申請があった場合や、本人の死亡が判明した場合などは、都道府県知事は自ら登録の消除をしなければなりません。

取引士の破産は取引士本人が届け出ますが、宅建業者の破産は破産管財人が届け出るという点も間違えやすいのでご注意ください。


宅地建物取引士証

取引士登録を受けている者は、その登録している都道府県知事に対して取引士証の交付を申請することができます。取引士証とは、自分が取引士であることを証明する身分証明書であり、取引士として仕事をするときは常に携帯しておく必要があります。取引士の仕事とは、以下の3つです。

1.重要事項の説明
2.重要事項の説明書面(35条書面)への記名押印
3.37条書面への記名押印

取引関係者から請求があったときは取引士証を必ず提示し、また、重要事項の説明の際には請求がなくても提示しておく必要があります。従業者証明書の提示に替えて取引士証を提示することはできず、標識の掲示に替えて取引士証を掲示しておくこともできません。

取引士証を交付してもらうには、申請前6ヶ月以内に「登録をしている都道府県知事が指定する講習」(法定講習)を受講する必要があります(取引士証の更新も同様)。しかし、次の場合にはこの講習が免除されます。

1.宅建試験合格から1年以内
2.登録の移転での交付(前の取引士証と引換え)

これで晴れて取引士となります。取引士証の有効期間は5年です。取引士資格登録は国土交通大臣が指定する講習(実務講習)だったこと、効果は一生有効であった点としっかり区別しておいてください。また、登録の移転で交付された新たな取引士証の有効期間は、交付から新たに5年ではなく、従前の取引士証の残りの期間となる点にも注意です。

取引士は、宅建業務に必要な知識および能力の維持向上に努めなければなりません。
取引士は、宅建業務に関わらず、信用または品位を害する行為をしてはなりません。
取引士は、公正かつ誠実に宅建業務を行い宅建業務に従事する者との連携に努めなければなりません。

↓ 念のため「宅建業者」の似た義務規定を一つ。
宅建業者は、従業者に対して業務を適正に実施させるため、必要な教育をするよう努めなければなりません。


宅地建物取引士証の返納・提出・書換え・引換え

1.返納

取引士は、登録を消除された場合、取引士証が効力を失った場合(失くしたと思って再交付を受けた後に見つかった前の取引士証など)は、その交付を受けた都道府県知事に取引士証を「返納」しなければなりません。更新をせず有効期間満了が満了した場合、取引士証は返納することを要し、免許証は返納する必要がないという点にも少し注意です。

2.提出

取引士は、事務禁止処分を受けた場合、その交付を受けた都道府県知事に取引士証を「提出」しなければなりません。事務禁止期間が満了すれば、返還請求をすることにより返還されます。

3.書換え

取引士は、氏名または住所に変更があった場合、「変更の登録」の申請とともに取引士証の「書換え交付」を申請しなければなりません。かなり細かいですが、変更が住所のみだった場合、現に所持している取引士証の裏面に変更後の住所を記載することで、新たな取引士証への書換えが不要となるということは覚えておいて損はないかもしれません。

4.引換え

取引士は、登録先以外の都道府県で従事するため「登録の移転」の申請を行った場合、取引士証の「引換え交付」を申請しなければなりません。また、取引士証が汚損・破損した場合も、引換えで新しい取引士証の再交付を受けることができます。

引換えで新たな取引士証を交付してもらう場合、繰り返しになりますが、法定講習を受ける必要がない点、新しい取引士証の有効期間は従前の取引士証の有効期間の残りの期間である点にもご注意ください。また、登録の移転と取引士証の引換えは別物で、登録の移転申請時に取引士証を添付する必要などはありません


以上、長々とお疲れさまでした。万遍なく出題されますので、今回は最新過去問はパスしておきましょう。宅建業法の中で12を争う大変なところなので、これで宅建業法を嫌いにならないでください。逆に12でもこの程度と思ってください。下のまとめ表も参考にしていただければと思います。


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  宅建業者 宅地建物取引士  
免許権者 2以上の都道府県→国土交通大臣
1つの都道府県→都道府県知事
合格した場所の都道府県知事 登録権者
免許の効力 全国に及び、有効期間は5年 全国に及び、消除されないかぎり一生有効取引士証は5年 登録の効力
免許換え 2県→1県:残存する県の知事免許
1県→2県:国土交通大臣免許
廃止→新たに設置:新設置県の知事免許

国土交通大臣→主たる事務所の知事経由
知事免許→新知事に直接申請

新免許の有効期間は5年
登録先の都道府県以外で業務に従事しようとする場合に申請すること可

現に登録を受けている知事経由

前の取引士証と引換えで新取引士証の交付を受け、前の取引士証は効力を失う

新取引士証の有効期間は旧取引士証の残りの期間
登録の移転
変更の届出 宅建業者が、免許権者へ、 変更後30日以内に届け出る

1.商号・名称
2.事務所の名称・所在地
3.役員および政令の使用人の氏名(法人)
4.業者および政令の使用人の氏名(個人)
5.専任の取引士の氏名
取引士が、登録権者へ、 変更後遅滞なく登録する

1.氏名
2.本籍
3.住所
4.宅建業者の商号・名称
5.宅建業者の免許証番号
変更の登録
廃業等の届出 次の者が、免許権者へ、その事実から30日以内に届け出る(死亡の場合は相続人が知った日から30日

1.死亡→相続人
2.合併→消滅会社の代表役員
3.破産→破産管財人
4.解散→清算人
5.廃業→業者(個人)、代表役員(法人)
次の者が、登録権者へ、その事実から30日以内に届け出る(死亡の場合は相続人が知った日から30日

1.死亡→相続人
2.成年被後見人→成年後見人
3.被保佐人→保佐人
4.その他(破産や処罰など)→本人
死亡等の届出