- 宅建改正民法!委任と寄託
宅建試験に出る「委任と寄託」の改正民法解説
委任は10年に1~2回の出題ですが、簡単なので出題されたら確実に取っておきたいところです。
寄託は更に出題可能性が低いですが、委任以上に大きく改正されています。
念のためポイントだけ押さえておきましょう。
では、委任をメインにサラッと見ていきましょう!
■復受任者の選任
復代理の規定が類推適用されていた「復委任」が明文化されました。
委任者の許諾を得たとき、またはやむを得ない事由があるときに復受任者を選任でき、代理権を付与する委任において受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は「委任者に対して」権限範囲内で受任者と同一の権利を有し、義務を負います。
復代理は「本人及び第三者」に対して、代理人と同一の権利義務を負う点と区別しておいてください。
■受任者の報酬
委任は無償が原則で、特約がない限り報酬が発生しない点は従来通りです。そして従来は「受任者の責任でなく委任契約が中途で終了した場合、受任者は、既にした履行の割合に応じて報酬を請求することができる」と定められていました。
では受任者の責任で委任が中途で終わってしまった場合、受任者は一切の報酬を請求することができないのでしょうか・・これが今回の改正点です。
改正民法では、次の場合に報酬を請求できるとしています。
1.委任者の責任ではなく委任事務の履行をすることができなくなったとき
2.委任が履行の中途で終了したとき
委任が中途で終了した場合、委任者の責任でなければ(=受任者の責任でも)、既にした履行の割合に応じた報酬の請求が認められています(委任者の責任で委任が終了した場合は、受任者は全額の報酬を請求できます)。
2つめの「委任が履行の中途で終了したとき」とは、当事者の死亡など委任の終了事由に該当した場合です。この場合も履行割合に応じた報酬請求が認められました。
■成果完成型の委任報酬
従来の委任報酬は、報酬を支払う特約があるときに履行をした割合に応じて支払われる「履行割合型」でしたが、事務処理の成果に対して報酬が支払われる「成果完成型」に関する規定が改正民法により新設されています。
成果完成型報酬の出題ポイントは以下の2点です。
1.成果が引渡しを要する場合、報酬は成果の引渡しと同時に支払われる
2.成果が完成していない段階で委任事務を継続できなくなった場合、委任者が受ける利益の割合に応じた報酬が支払われる
出題されるとしたら1つめですかね。成果が完成したら報酬を支払わなければならない=誤り(引渡しも必要)という易しめの問題になるかと思います。もちろん引渡しが不要な場合は、成果の完成で報酬請求ができる点にも注意です。
2つめは請負の「注文者が受ける利益の割合に応じた報酬」の準用です。
■寄託が諾成契約になったことによる解除権
寄託とは、誰かにある物を預けて保管してもらうことです。貸倉庫などですね。ホテルやレストランでコートを預ける行為も寄託契約の一種です。
従来は実際に物を預けることで成立する要物契約でしたが、改正民法では「諾成契約」に変更されています。寄託者が保管を委託し、受寄者が承諾するだけで効力が生ずることとなりました。荷物を持ってくるのは後からでいいよ、ということですね。
上記文章でお察しかと思いますが、預ける人=寄託者、預かる人=受寄者となります。
寄託が諾成契約となったことで、「寄託物の受取り前」においてこれまでになかった新たな解除権が生じることとなります。以下、寄託物受取前の解除におけるポイントです。
・寄託者は、受寄者が寄託物を受け取るまで契約を解除することができる(解除により損害を受けた場合、受寄者は賠償請求が可能)。
・無報酬の受寄者は、寄託物を受け取るまで契約を解除することができる(書面による寄託契約を除く)。
・有償の受寄者または書面による無償の受寄者は、寄託者が寄託物を引き渡さない場合、相当期間を定めて催告し、その期間内に引渡しがないときに契約を解除することができる。
寄託者 |
受寄者が寄託物を受け取るまで解除可 |
有償の受寄者 |
催告し、相当期間内に引渡しがないときに解除可 |
書面による無償の受寄者 |
催告し、相当期間内に引渡しがないときに解除可 |
口頭による無償の受寄者 |
受寄者が寄託物を受け取るまで解除可 |
■寄託の重要改正をまとめて
宅建試験で出題されてもおかしくない個所をインプリ風にまとめておきますが、出題可能性は低めです。
・受寄者は、寄託者の承諾を得たとき、または「やむを得ない事由があるとき」は、寄託物を第三者に保管させることができる!(従来は承諾を得たときのみ)
・寄託物が一部滅失または損傷したことによる寄託者の損害賠償請求と、受寄者の費用償還請求は、返還から1年以内に請求しなければならない!(返還から1年間は時効も完成しません。全部滅失の場合は消滅時効の原則に従います)
・複数の者が寄託した物の種類及び品質が同一である場合、受寄者は、各寄託者の承諾を得たときに限り、これらを混合して保管することができる!(=新設規定の混合寄託)
→ 各寄託者は、他の寄託者に関係なく自分の都合で返還請求ができます
以上、今回は「委任が中途で終了した場合でも、委任者の責任でなければ既にした履行の割合に応じた報酬の請求が認められる」「成果完成型の委任報酬は引渡しと同時に支払われる」辺りを押さえておけば大丈夫かと思います。余裕があれば「寄託物受取り前の解除権」も整理して頭に入れておきましょう。
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