- 宅建改正民法!併存的債務引受と免責的債務引受
宅建試験に出る『債務引受』の改正民法解説
実務では活用されていましたが、民法上にその規定はありませんでした。そして今回の改正民法により、ドカンと新設されています。
宅建試験での出題は2回だけ、平成27年と28年の試験において「次の記述のうち、民法の条文に規定されているものはどれか」という問いで、
「免責的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨」
「併存的債務引受は、債権者と引受人となる者との契約によってすることができる旨」
という同じような問題が1回ずつ出題されたのみとなります。
出題当時は規定されていませんでしたので誤りですね。
新たに規定されたこと、そして数年前の二度の出題を今後の布石と考えると、他の新設規定と比べて債務引受の出題可能性は高くなると思われます。
併存的債務引受と免責的債務引受に分かれていて、宅建試験の大好物である「比較」問題が出せます。今後の宅建試験の頻出分野となってもおかしくありません。数年内、早めに出題される可能性も十分にあると見ています。
では、債務引受の重要ポイントをまとめて見ていきましょう!
■債務引受とは
前ページでお伝えした「債権譲渡」=債権者が交代するのに対し、「債務引受」=債務者の交代(または追加)となります。債務引受には「併存的(重畳的)債務引受」と「免責的債務引受」の2種類があります。
・併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担します。=従来と債務者と新しい債務者が一緒に債務者となる
・免責的債務引受の引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れます。=新しい債務者が生まれて従来の債務者は無関係になる
文字通り「引受人」とは債務を引き受けた者です。新たな債務者ですね。
■併存的債務引受の成立要件
「併存的債務引受は、債権者と引受人または債務者と引受人との契約により成立する」
併存的債務引受は、債権者と債務者のどちらでも、引受人との契約によってすることができます。
債権者と引受人が併存的債務引受を行うのに債務者の同意は不要で、債務者と引受人が併存的債務引受を行うのにも債権者の同意は不要ですが、後者は債権者が引受人に対して承諾をしたときにその効力が生じる点に注意してください。
■併存的債務引受における引受人の抗弁
併存的債務引受の引受人は、併存的債務引受によって負担した自己の債務について、その効力が生じたときに債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができます。
債務者が債権者に対して取消権または解除権を有する場合、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができます。
■免責的債務引受の成立要件
「免責的債務引受は、債権者と引受人または債務者と引受人との契約により成立する」
併存的債務引受と同じく、免責的債務引受も債権者と債務者のどちらでも、引受人との契約によってすることができます。
ただし、債権者と引受人との契約によってした場合、債権者が債務者に契約をした旨の通知をしたときに効力が生じます。債務者と引受人がとの契約によってした場合は、併存的債務引受と同様に債権者が引受人に対して承諾をしたときにその効力が生じます。
ちょっと複雑なので要注意ですね。
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債権者と引受人 |
債務者と引受人 |
併存的債務引受 |
契約で効力発生 |
契約+債権者の承諾で効力発生 |
免責的債務引受 |
契約+債権者の通知で効力発生 |
契約+債権者の承諾で効力発生 |
■債務引受における引受人の求償権
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません。
免責的債務引受=債務が債務者から引受人に完全に移行するため、もはや旧債務者は「無関係」な立場となります。よって、免責的債務引受の引受人が債務を弁済しても、それは自身の負担する債務を弁済したに過ぎない・・ということですね。
併存的債務引受の場合は改正民法でも明確な規定がなく、「求償権がない」と規定する免責的債務引受の反対解釈から、債務者と引受人が連帯して債務を負担する併存的債務引受の引受人は求償権を有するものと解されます。
■免責的債務引受における担保の移転
ここが一番熱いかもしれません。宅建試験が好きそうなところです。
免責的債務引受が行われた場合でも債務の内容は変わりませんので、債権者は担保権をそのまま移転できるのか・・?答えはNoです。
免責的債務引受が行われた場合、引受人以外の者が設定した担保権は、設定者の承諾がなければ移転しません。担保権設定者が引受人本人でない限り、担保権を移転させるには設定者の承諾を要します。
担保権の移転は、引受人に対する意思表示により免責的債務引受と同時またはあらかじめ行う必要がある点にも注意。
そして、免責的債務引受により債務を免れる債務者の保証人にも上記規定が準用され(=設定者の部分が保証人)、保証人が承諾を行うには書面でする必要がある(電磁的記録も可能)点にも注意しておいてください。
以上、宅建試験で出題されるかもしれない債務引受の重要ポイントでした。未知数の今は重要度★3程度ですが、今後★4★5となるかもしれないところです。ここはなるべく力を入れておきましょう!
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