留置権や先取特権などをまとめて

宅建試験の民法解説:出題可能性の低い留置権や先取特権といった「その他の物権を」一気に見ていきます!もしも出題されても要点だけでしょう。簡単ですので、出たらラッキーといった感じで必ず覚えておいてください。

留置権などその他の物権の宅建解説

物を使用・収益・処分できる権利を「所有権」と呼ぶのは皆さんご存知の通りです。所有権は、その有する機能の一部を他人に与えることができます。そしてその機能を与えられた者は、その機能だけしか有せず、これを「制限物権」といいます。

さらに、制限物権は「用益物権」と「担保物権」に分けられます。

用益物権(物を使用・収益するための権利)
→ 地上権、永小作権、地役権、入会権

担保物権(物を処分するための権利)
→ 留置権、先取特権、質権、抵当権

これが民法で認められている物権の種類です。はっきり言いましてこの呼び方はどうでもよいのですが、担保物権ってなんですか?といった質問もよくいただきますので、参考程度に触れておきました。ではこの中から、地上権、永小作権、留置権、先取特権を少しずつ一気にいきます!


地上権

地上権とは、工作物または竹木所有を目的として、他人の土地を利用する権利をいいます。土地そのものを目的としている点で、賃借権とは異なります。以下、ポイントです。

・地上権は、土地所有者との設定契約によって成立するほか、譲渡・相続・取得時効によって取得することがある!

・1筆の土地の一部に対しても地上権の成立を認めることができる!

・地下や空間も、地上権の目的とすることができる!(=区分地上権という)
 例:地下 → 地下鉄など 空間 → モノレールなど

・地上権を抵当権の目的とすることができる!

・地代は地上権の成立要素ではないが、定期的に支払う約定をしていた場合に、2年以上地代の支払いを怠ったときは、土地所有者は地上権の消滅を請求できる!

・存続期間に制限がなく、永久地上権の設定も可能である!


永小作権

永小作権とは、耕作または牧畜をすることを目的として、他人の土地を利用する権利をいいます。地上権と比較しておいてください。以下、ポイントです。

・地代が要素であり、土地利用者は、小作料を支払う必要がある!

・存続期間(※)の定めがあり、永久設定をすることはできない!(更新は可能)

※ 存続期間の詳細は宅建試験で出ないと思いますので省略いたします。


留置権

留置権とは、他人の物の占有者が、その物に関して生じた債権を持つ場合に、その債権の弁済を受けるまでその物を留置することができる権利をいいます。物上代位性はありません。簡単に言うと、腕時計を修理した時計屋さんは、修理代金を払ってもらうまで、その腕時計を持っていられるということです。同時履行の抗弁権と似ていますが、留置権は、物権として正当に占有を主張できます。当事者の意思に関係なく発生する法定担保物権です。以下、ポイントです。

・留置権が成立するには、債権が弁済期にあることを要する!

・留置権者は、目的物の占有にあったて、善管注意義務を負う

・留置権を行使しても、債権の消滅時効の進行は妨げられない!

・留置物につき必要費を支出した場合、留置権者は所有者に対して全額償還請求をすることができる!


先取特権

先取特権とは、法律で定められた一定の債権を有する者が、債務者の財産について、他の債権者に優先して自己の債権の弁済に充てることができる権利をいいます。○○という債権が発生したら××という先取特権が発生する…。留置権と同じく、当事者の意思に関係なく発生する法定担保物権です。そして、留置権以上に出題可能性は低いです。

先取特権には、一般の先取特権(雇人の給料や日用品の供給等)、動産先取特権(不動産賃貸や動産売買等)、不動産先取特権(不動産の保存・工事・売買)があります。特にポイントはないのですが・・強いて挙げるなら以下の点でしょうか。

・一般の先取特権は、登記をしなくても、特別に担保を有しない一般債権者に対抗することができる!(登記をした担保権者、第三取得者には対抗できない)

・不動産保存の先取特権(建物の修繕等)は、保存行為完了後直ちに登記をすることによって、第三者に対抗することができる!

・不動産工事の先取特権(建物の増築等)は、工事開始前に登記をすることによって、第三者に対抗することができる!

・不動産売買の先取特権は、売買契約と同時に登記をすることによって、第三者に対抗することができる!


【担保物権まとめ】
  留置権 先取特権 質権 抵当権
附従性
随伴性
不可分性
物上代位性 ×
留置的効力 × ※1 ×
収益的効力 × × ※2 ×
優先弁済 ×
※1=動産質・不動産質は〇、権利質は×
※2=不動産質は〇、動産質・権利質は×


以上、宅建試験での出題可能性は低いですが、もしかしたら・・というポイントでした。留置権は、少しだけ注意しておいたほうがよいかもしれません!


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法定地上権や根抵当権 不法行為
【宅建試験問題 平成25年ー問4】留置権に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.建物の賃借人が賃貸人の承諾を得て建物に付加した造作の買取請求をした場合、賃借人は、造作買取代金の支払を受けるまで、当該建物を留置することができる。
2.不動産が二重に売買され、第2の買主が先に所有権移転登記を備えたため、第1の買主が所有権を取得できなくなった場合、第1の買主は、損害賠償を受けるまで当該不動産を留置することができる。
3.建物の賃貸借契約が賃借人の債務不履行により解除された後に、賃借人が建物に関して有益費を支出した場合、賃借人は、有益費の償還を受けるまで当該建物を留置することができる。
4.建物の賃借人が建物に関して必要費を支出した場合、賃借人は、建物所有者ではない第三者が所有する敷地を留置することはできない。
1 誤:造作買取請求権は造作について生じた債権に過ぎず、建物に関して生じたものではないので、賃借人に建物への留置権は認められない
2 誤:不動産を留置しても、債務者に債務の履行を強制する関係になっていなければ留置権は成立しない
3 誤:不法行為によって占有が始まった場合に留置権は成立しない
4 正:必要費は建物について生じた債権に過ぎず、敷地に関して生じたものではないので、賃借人に敷地への留置権は認められない
【宅建試験問題 平成21年ー問5】担保物権に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.抵当権者も先取特権者も、その目的物が火災により焼失して債務者が火災保険金請求権を取得した場合には、その火災保険金請求権に物上代位することができる。
2.先取特権も質権も、債権者と債務者との間の契約により成立する。
3.留置権は動産についても不動産についても成立するのに対し、先取特権は動産については成立するが不動産については成立しない。
4.留置権者は、善良な管理者の注意をもって、留置物を占有する必要があるのに対し、質権者は、自己の財産に対するのと同一の注意をもって、質物を占有する必要がある。
1 正:留置権を除く担保物権には物上代位が認められる
2 誤:留置権や先取特権は、法律上当然に与えられる法定担保物権
3 誤:留置権も先取特権も、動産についても不動産についても成立する
4 誤:留置権者も質権者も、善管注意義務が必要