宅建試験の民法解説:難しいと言われる権利関係も地道に覚えていけば得点源にできます。分かりやすく解説していきますので少しずつ覚えていってください。宅建試験で「制限行為能力者」といえば未成年者に関する出題ばかりだったのですが、最近の難化傾向から他の制限行為能力者についての出題も増えそうな予感です。未成年者以外の制限行為能力者についても触れておきます。単純暗記で済み、権利関係の中ではシンプルで覚えやすいところなので、ここで1点を確保しておきましょう。未成年者について重複しますが、まとめて見ていきましょう!
- 制限行為能力者の宅建解説
■制限行為能力者の種類
制限行為能力者とは、文字通り行為能力が制限された者、判断能力が不十分な者を指します。未成年者 満18歳未満の者 成年被後見人 精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状況にあると審判を受けた者 被保佐人 精神上の障害により事理を弁識する能力が著しく不十分と審判を受けた者 被補助人 精神上の障害により事理を弁識する能力が不十分と審判を受けた者
未成年者の定義は重要です。未成年者でも婚姻をすれば民法上は成年者となります(成年擬制←なくなりました)。成年擬制の効果は未成年のうちに離婚をしても解消されません。これも重要です。(2021年の宅建試験まで)
障害の度合いが重くなるに連れて被補助人→被保佐人→成年被後見人となるわけですが、ここで出題されてもおかしくないポイントといえば、被補助人の補助開始の審判をするにあたり、本人以外の請求によって審判をする場合は本人の同意が必要ということでしょうか。
逆に、他の2つは本人の同意なしに審判をすることができるということになりますので、本人の同意なしに後見開始や保佐開始の審判はできないと出題されたら誤りとなりますね。後見開始の審判は本人や配偶者、四親等内の親族らの請求によって開始されるのですが、検察官も請求できるということは覚えておいて損はないかもしれません。
出題可能性は極めて低いですが、すぐに覚えられる難問対策マメ知識
・ 未成年者でも法定代理人の同意不要で嫡出でない子の認知をすることができる
・ 未成年者は遺言の証人または立会人となることができない
・ 成年被後見人は株式会社の取締役または監査役に就任することはできない
■制限行為能力者の保護者
判断力の低い人たちが自由に法律行為を行えるとなると相手方は不安です。悪い人たちに狙われて本人のためにもなりません。そこで制限行為能力者には保護者がつけられます。家庭裁判所の審判により後見人、保佐人、補助人が決定し後見が開始されます。
未成年者の保護者 :法定代理人(親権者または未成年後見人)
成年被後見人の保護者:成年後見人
被保佐人の保護者 :保佐人
被補助人の保護者 :補助人
保護者は、同意権・追認権・取消権・代理権を持っているのですが、ここで重要なのは、成年後見人には「同意権がない」ということです。成年被後見人は重度の障害者ですので、成年後見人の同意を得た契約だとしても、そしてそれが利益しかない契約だとしても取消しの対象となってしまいます
1人と定められていた未成年後見人が、近年の法改正で複数でもよくなり、また、法人でも後見可能となった点にも注意です。成年後見人も複数、法人後見が可能です。保護する者 同意権 代理権 取消権 追認権 法定代理人 未成年者 ○ ○ ○ ○ 成年後見人 成年被後見人 × ○ ○ ○ 保佐人 被保佐人 ○ 家裁の審判 ○ ○ 補助人 補補助人 家裁の審判 家裁の審判 家裁の審判 家裁の審判
■制限行為能力者のした契約
制限行為能力者が単独でした行為は取り消すことができます。取消しをする際に、判断力の有無を証明する必要もありません。しかし、取り消すことができない契約もあり、それがとても重要です。出題ポイントを個別に見ていきましょう。
未成年者:単独でした契約は、原則として「取り消すことができる」。例外として取り消すことができない次の3つを必ず覚えておいてください。1.法定代理人から許可された営業に関する行為、2.処分を許された財産の処分をする行為(お小遣いなど)、3.単に権利を得または義務を免れる行為(債務の免除など)。難問対策を一つ、未成年者が単に賃金を領収する行為は単独で可能か?→ 労働の対価である金銭を受け取ることができる債権が消滅するため法定代理人の同意が必要です。
成年被後見人:単独でした契約は、原則として「取り消すことができる」。例外として、日用品の購入その他日常生活に関する行為だけは取り消すことができません。スーパーでの日常の買い物などです。この1つを必ず覚えておいてください。
被保佐人:単独でした契約は、原則として「取り消すことができない」。軽度の障害ということで、単独でした契約も原則として有効となります。しかし、あまりに重要な行為を単独で行った場合は取り消すことができます。1.不動産や重要な財産の売買、2.5年を超える土地賃貸借、3.3年を超える建物賃貸借、4.建物の新築・改築・増築・大修繕を頼むこと。例外として取り消すことができる1~3番は必ず覚えておいてください。また、改正民法により、これらの行為を制限行為能力者の法定代理人としてする場合も保佐人の同意が必要となりましたので注意です。
被補助人:出題されないと思いますが・・下の表だけチェックしておいてください。
また、全ての共通事項として、制限行為能力者が自分は行為能力者であると偽って契約をした場合、制限行為能力者であることを理由に当該契約を取り消すことはできなくなります。これも覚えておいてください。制限行為能力者が詐欺をしたらどうなるのか、相手方が嘘だと知っていたら、などなどより深い出題ポイントはありますが、今後順次説明していきますので、とりあえず今回はこれだけ覚えておいてください。ちなみに制限行為能力者であることを黙秘していただけの場合は詐術にはあたりません。
契約が取り消された場合の返還義務や損害賠償などについても後のページで解説します。
■制限行為能力者がした契約の相手方
制限行為能力者と契約をした相手方は、いつ契約が取り消されるのかヒヤヒヤです。そこで、そんな相手方を保護するため「催告権」というものが用意されています。1ヵ月以上の期間を定めて契約を認める(追認)のか取り消すのかハッキリしろ!という権利です。誰に催告するのか?返事がなかったら?少し面倒ですが、頑張って覚えましょう。催告先 確答ないとき 未成年者 法定代理人 追認とみなされる 成年被後見人 成年後見人 追認とみなされる 被保佐人 保佐人
本人追認とみなされる
取消しとみなされる被補助人 補助人
本人追認とみなされる
取消しとみなされる
催告は原則として保護者に対して行いますが、被保佐人および被補助人に対しては直接本人に催告することもできます(=未成年者と成年被後見人には意思表示の受領能力がない※)。確答ないときの結果が異なってくるので注意です。また、未成年者が成年になった場合など、制限行為能力者が行為能力者となったときは本人に対して催告し、確答ないときは追認とみなされます。もう制限行為能力者ではないので過保護にする必要はありませんね。
※未成年者や成年被後見人であるAに対してしたBの意思表示は効力を生じません。更に改正民法で、「意思無能力者」についても同様の保護が認められました。病気などで意思能力を失い、後見開始の審判を受けていないAに対してしたBの意思表示も効力が認められません(Aの意思能力が回復してその意思表示を知った場合、Bは意思表示の効力を主張することができます)。
以上、制限行為能力者とは何かをお話してみました。今回の内容を基に派生してしていく知識もありますので、しっかりと覚えておいてください!
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