宅建試験の民法解説:改正民法による新規定「債務引受」について見ていきます。
- 債務引受の宅建解説
改正民法で大きく変わった債務引受について見ていきます。
併存的債務引受と免責的債務引受の違いなど、宅建試験で出題しやすい改正民法だと思います。
より詳しい解説は改正民法一覧の『債務引受』にまとめてありますので、余裕がございましたらそちらもご参照ください。
■債務引受とは
前ページでお伝えした「債権譲渡」=債権者が交代するのに対し、「債務引受」=債務者の交代(または追加)となります。債務引受には「併存的(重畳的)債務引受」と「免責的債務引受」の2種類があります。
・併存的債務引受の引受人は、債務者と連帯して、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担します。=従来と債務者と新しい債務者が一緒に債務者となる
・免責的債務引受の引受人は、債務者が債権者に対して負担する債務と同一内容の債務を負担し、債務者は自己の債務を免れます。=新しい債務者が生まれて従来の債務者は無関係になる
文字通り「引受人」とは債務を引き受けた者です。新たな債務者ですね。
■併存的債務引受の成立要件
「併存的債務引受は、債権者と引受人または債務者と引受人との契約により成立する」
併存的債務引受は、債権者と債務者のどちらでも、引受人との契約によってすることができます。
債権者と引受人が併存的債務引受を行うのに債務者の同意は不要で、債務者と引受人が併存的債務引受を行うのにも債権者の同意は不要ですが、後者は債権者が引受人に対して承諾をしたときにその効力が生じる点に注意してください。
■併存的債務引受における引受人の抗弁
併存的債務引受の引受人は、併存的債務引受によって負担した自己の債務について、その効力が生じたときに債務者が主張することができた抗弁をもって債権者に対抗することができます。
債務者が債権者に対して取消権または解除権を有する場合、引受人は、これらの権利の行使によって債務者がその債務を免れるべき限度において、債権者に対して債務の履行を拒むことができます。
■免責的債務引受の成立要件
「免責的債務引受は、債権者と引受人または債務者と引受人との契約により成立する」
併存的債務引受と同じく、免責的債務引受も債権者と債務者のどちらでも、引受人との契約によってすることができます。
ただし、債権者と引受人との契約によってした場合、債権者が債務者に契約をした旨の通知をしたときに効力が生じます。債務者と引受人がとの契約によってした場合は、併存的債務引受と同様に債権者が引受人に対して承諾をしたときにその効力が生じます。
■債務引受における引受人の求償権
免責的債務引受の引受人は、債務者に対して求償権を取得しません。
併存的債務引受の場合は改正民法でも明確な規定がなく、「求償権がない」と規定する免責的債務引受の反対解釈から、債務者と引受人が連帯して債務を負担する併存的債務引受の引受人は求償権を有するものと解されます。
■免責的債務引受における担保の移転
ここが一番熱いかもしれません。宅建試験が好きそうなところです。
免責的債務引受が行われた場合、引受人以外の者が設定した担保権は、設定者の承諾がなければ移転しません。担保権設定者が引受人本人でない限り、担保権を移転させるには設定者の承諾を要します。
担保権の移転は、引受人に対する意思表示により免責的債務引受と同時またはあらかじめ行う必要がある点にも注意してください。
そして、免責的債務引受により債務を免れる債務者の保証人にも上記規定が準用され(=設定者の部分が保証人)、保証人が承諾を行うには書面でする必要がある(電磁的記録も可能)点も要注意です。
分かりやすい民法解説一覧ページに戻る
<<< 前のページ <<< | >>> 次のページ >>> |
---|---|
債権譲渡 | 売主の担保責任 |