【宅建民法解説】債権譲渡って何?

宅建試験の民法解説:改正民法により大きく変わる「債権譲渡」について見ていきます。

債権譲渡の宅建解説

出題された場合は難問扱いとなる、宅建試験のマイナー分野です。ここも本試験直前に合格レベルに達していない場合はスルーで大丈夫です。

より詳しい解説は改正民法一覧の『債権譲渡』にまとめてありますので、余裕がございましたらそちらもご参照ください。


債権譲渡とは

債権譲渡とは文字通り債権(将来発生する債権を含む)を譲渡することで、債権の内容はそのままに、第三者に債権を移転させる手続をいいます。

AがBに100万円を貸していましたが、急遽100万円が必要となったAは、Bに対する100万円の債権をCに譲渡し、Cから100万円を得た・・これが債権譲渡です。

CはBに対して直接100万円の弁済を受けることができます。

A=譲渡人、C=譲受人、B=第三債務者という呼び名は覚えておきましょう。


債権譲渡の対抗要件

上記の例で、新たな第三者Dが登場したときにCが第三債務者Bに対する権利を主張するために必要となる要件が「対抗要件」です。

通知や承諾、確定日付のある証書による通知、確定日付のある証書による承諾、これらの代わりとなる債権譲渡登記などが行われることで「対抗要件を具備」した形となります。

・債務者への対抗要件:AがBに通知 or BがAまたはCに承諾をすることで、Bが弁済すべき相手はCであることが確定します。
・第三者への対抗要件:AがBに確定日付ある証書による通知 or Bが確定日付ある証書による承諾をすることで、Cが債権の譲受人であることが確定します。

債権が二重に譲渡された場合、譲受人相互間の優劣は、確定日付ある債権譲渡通知が債務者に到達した日時、または、確定日付ある債務者の承諾日時の先後によって決定されます。

通知は譲渡人しかできない」「承諾は譲渡人または譲受人のどちらに対してでもよい」「第三者への対抗要件は確定日付ある証書が必要」の3点は押さえておきましょう。

一方だけ確定日付あり 確定日付ある通知ある譲渡が優先
確定日付ある通知の一方が先に到達 先に到達した譲渡が優先
確定日付ある通知が同時に到達 各譲渡人は債権全額の請求ができ、債務者はどちらかの譲受人に弁済すればよい


債権の譲渡性

当事者が債権の譲渡を禁止し、または譲渡制限の意思表示をしても、債権の譲渡はその効力を妨げられません。

従来は譲渡禁止特約をした場合は譲渡ができず、ただし善意の第三者には対抗できないとするものでした。これが改正民法では、譲渡禁止特約をしても債権を譲渡できるのが原則となり、例外として、悪意または重過失により知らなかった第三者には対抗できることとなりました。

債権者Aの債務者Bに対する譲渡禁止特約のある債権を、AがCに譲渡し、Cは譲渡禁止特約について悪意だったとします。この場合、BはCの履行請求に応じる必要はなく、Aに弁済すれば足ります。

CがBに対して相当期間内に弁済するよう催告してもBが弁済しない場合、CはBに対して弁済の請求をすることができる点にも注意しておいてください。

宅建合格!債権譲渡

譲渡制限特約のある債権の供託

譲渡制限特約がされた金銭債権の債務者は、その債権が譲渡された場合に供託することができます。

上記の通り、改正民法により譲渡制限特約がされた債権も譲渡が可能となり、譲受人が悪意または重過失の場合は譲渡制限特約を譲受人に対抗できることとされました。しかし、譲受人が悪意か、重過失があるかどうかは債務者に分からない可能性もあります。

そこで、譲渡制限特約がされた金銭債権の債務者は、債権が譲渡された場合は供託ができることとされました。出題ポイントは次の2つです。

・供託をした債務者は、遅滞なく譲渡人と譲受人の双方に通知しなければならない!
・供託をした金銭の還付請求ができるのは、新債権者となる譲受人に限られる!


債権譲渡における相殺権

債務者は、対抗要件を具備するより前に取得した譲渡人に対する債権による相殺をもって譲受人に対抗することができます。ちょっと分かりにくいので事例で見ていきます。

債権者A、債務者Bといて、AのBに対する債権がCに譲渡された場合、対抗要件具備時(AからBへの通知またはBの承諾)より前に取得したBのAに対する債権による相殺をもって、BはCに対抗することができるということです。

そして重要なのは例外です。
譲渡人への債権を対抗要件具備時より後に取得した債権でも、

1.対抗要件具備時より前の原因に基づいて生じた債権
2.譲受人の取得した債権の発生原因である契約に基づいて生じた債権

については、債務者は相殺をすることができます。例外はこれだけで、この2つ以外は対抗要件具備時より後に他人の債権を取得しても相殺権を行使することはできません。


以上、債権譲渡についてお伝えしましたが、やっぱりちょっとややこしいですね。2つめの■(確定日付)だけでも確実に押さえておくと良いことがあるかもしれません。


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連帯債権 債務引受
【宅建試験問題 平成28年ー問5】Aが、Bに対する債権をCに譲渡した場合に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.AのBに対する債権に譲渡制限の意思表示があり、Cがその意思表示の存在を知りながら債権の譲渡を受けていれば、Cからさらに債権の譲渡を受けた転得者Dがその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がない場合でも、BはDに対して債務の弁済を拒否することができる。
2.AがBに債権譲渡の通知を発送し、その通知がBに到達していなかった場合には、Bが異議をとどめない承諾をしても、BはCに対して当該債権に係る債務の弁済を拒否することができる。
3.AのBに対する債権がCに譲渡された時点ではまだ発生していない将来の取引に関する債権であった場合であっても、AからCへの債権譲渡は有効である。
4.Aに対し弁済期が到来した貸金債権を有していたBは、Aから債権譲渡の通知を受けるまでに、相殺の意思表示をしていなかった。その後、Bは、Cから支払請求を受けた際に、Aに対する貸金債権との相殺の意思表示をしたとしても、Cに対抗することはできない。
1 誤:債権の譲受人が、譲渡制限の意思表示の存在を知っていた(悪意)か、重大な過失によって知らなかった(重過失)場合、債務者は譲受人に対する債務の履行を拒むことができるが、更に転得者がいる場合は転得者を基準に判断する
2 誤:譲渡人から債務者への通知 or 債務者による承諾のどちらかがあれば、債権の譲受人は債権譲渡を債務者に対抗することができる
3 正:将来の債権であっても債権譲渡の対象とすること可
4 誤:対抗要件具備時までに譲渡人に対して生じた事由について対抗すること可
【宅建試験問題 平成30年ー問7】債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、誤っているものはどれか。

1.譲渡禁止特約のある債権の譲渡を受けた第三者は、その特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失があっても、当該債権を取得することができる。
2.債権の譲受人が譲渡禁止特約の存在を知っていれば、さらにその債権を譲り受けた転得者がその特約の存在を知らなかったことにつき重大な過失がなかったとしても、債務者はその転得者に対して、その債務の履行を拒むことができる。
3.債権譲渡の意思表示の時には発生していない債権であっても、債権譲渡の対象とすることができ、この場合、譲受人は、債権が発生した時点で、当該債権を当然に取得する。
4.譲渡禁止特約のある債権をもって質権の目的とした場合において、質権者がその特約の存在について悪意であっても、当該質権設定は有効となる。
1 正:譲受人に悪意や重過失があっても、債務者が譲受人に対し債務の履行を拒むことができるだけで、ひとまず譲渡禁止特約のある債権でも譲受人が悪意でも重過失でも債権譲渡は有効となる
2 誤:転得者を基準に判断し、債務者は、転得者に対する債務の履行を拒むことはできない
3 正:将来債権を債権譲渡の対象にすることも可能
4 正:難問なのでスルー
【宅建試験問題 平成19年ー問9】債権譲渡に関する次の記述のうち、民法の規定及び判例によれば、正しいものはどれか。

1.指名債権が二重に譲渡され、確定日付のある各債権譲渡通知が同時に債務者に到達したときは、各債権譲受人は、債務者に対し、債権金額基準で按分した金額の弁済請求しかできない。
2.指名債権の性質を持つ預託金会員制ゴルフクラブの会員権の譲渡については、ゴルフ場経営会社が定める規定に従い会員名義書換えの手続を完了していれば、確定日付のある債権譲渡通知又は確定日付のある承諾のいずれもない場合でも、ゴルフ場経営会社以外の第三者に対抗できる。
3.契約時点ではまだ発生していない将来債権でも、発生原因や金額などで目的債権を具体的に特定することができれば、譲渡することができ、譲渡時点でその債権発生の可能性が低かったことは譲渡の効力を直ちに否定するものではない。
4.指名債権譲渡の予約契約を締結し、この予約契約締結の事実を確定日付のある証書により債務者に通知していれば、予約の完結によりなされる債権譲渡の効力を債務者以外の第三者に対抗することができる。
1 誤:各債権譲受人は債権全額の弁済を請求することができる(対抗要件が完全に互角なので早い者勝ち)
2 誤:会員名義書換えはゴルフ場経営会社に対する対抗要件に過ぎず、第三者に対する債権譲渡の対抗要件とはならない
3 正:発生可能性が低い将来債権でも、債権譲渡の効力は左右されない
4 誤:予約についての通知・承諾があっても、予約完結による債権譲渡の効力を第三者に対抗することはできない